道を歩いている人に、なんという木か聞いてみました。すると、「ロブレ」という答えがかえってきました。これがロブレだったのです。冬になると葉はぜんぶ落ちると言うのです。落葉広葉樹のナラの種類なのです。
「この先を四キロメートルほどいくと、ロブレの森が続いている」
と教えてくれました。
やがて、黒々とした森が見えてきました。みごとな広葉樹林です。ロブレにまじって、カスターニャもそびえています。ものすごい木です。これが、昔のガリシアの森の姿なのです。今でさえ、あんなに豊かな海なのに、こんな木々におおわれていた昔の海はどんなにすごかったか、想像しただけで気が遠くなるようです。
ようやくウリァ川の上流にたどりつきました。この川をくだっていくと、ガリシアの西岸でもっとも大きなアロウサ湾に出るのです。地図を見ると、さっきのロブレの森も、ウリァ川上流の森であることがわかりました。川沿いの道は、のどかな農村風景がつづいています。大きな茶色の牛が、干し草を山のように積んだ車をひいています。
ガリシアは雨が多く牧草がよく育ち、スペインでもっともおいしい肉牛の産地であることも知りました。畑の野菜もみごとに育っています。土地が肥えているのです。それは、この農地もロブレの葉が落ちてできた、腐葉土だからです。
アロウサ湾のコキーユ=サンジャック(聖ヤコブのホタテ貝)
広大なポプラの森を通りぬけると、ウリァ川の川幅が急に広くなりました。どこからか潮のかおりがただよってきます。そして、大きな橋をわたると海が見えたのです。リア・デ・アロウサ(アロウサ湾)です。ウリァ川がけずった谷が沈降してできた周囲100キロメートルもある巨大な湾です。
じつはここが、サンティアゴ(聖ヤコブ)がキリスト教の教えを伝えるため、はじめてこの国を訪れたとき上陸したといわれる地です。また殉教後、その遺体を乗せた小舟が地中海を通って流れ着いたという伝説の地でもあるのです。さっそくその地パドロンに行ってみました。