クルマの範疇に留まらないことで得られる、ミニバン+PHEVの魅力
ヴェルファイアPHEVは最上級グレードだけあって、車両だけでも税込1085万円に達する。その内装たるやホテルのラウンジさながらのゴージャスさだ。エントリーグレードでは8人乗り(2+3+3人)の車内空間を6人乗り(2+2+2人)として、空間も贅沢に用いている。
バッテリーとモーターのみを使用して走る、EV走行での走行可能距離は73kmに達し、街なかの買い物程度なら純電気自動車として使うことができる。長距離走行時にはエンジンを併用して16.7km/Lの燃費で走り続けることができる。
エンジンとモーターを合算した駆動系システムの最大出力は225kW(306PS)にも達する。この大馬力を、前輪をモーター+エンジン、後輪をモーターで駆動するE-Fourという4WDシステムで路面に伝えることができる。
リチウムイオンバッテリーはシャシーの中央、最も低い位置に張り巡らされ、低重心化と乗り心地の向上に役立っている。これは運転したとき、上質感に相当有利に作用するはずだ。重心は35mmも低くなったのだという。
……とまぁ、いちおう自動車としての特長を述べてみたのだが、やはりこの方向性ではこのクルマの魅力を述べている気にはなれない。アルファード/ヴェルファイアPHEVのプレミアム性は、通常のクルマの範疇を踏み越えた領域にあるように感じられる。
アルファードとヴェルファイアを合わせた月販基準台数は8600台。そのうちPHEVは200台と控えめな数字が挙げられている。やはりPHEVは、ひときわ災害につよい住宅環境を求める層、あるいはアルファード/ヴェルファイアを完璧なパーソナルスペースとして購入したいという、限られた層がターゲットなのだ。
単に豪華なミニバンでは飽き足りない顧客層のために、アルファード/ヴェルファイアPHEVという選択肢は用意されている。1000万円を超える価格も、こうした特別な魅力を求めるハイエンド層には大きな障害にはならないのだろう。
文・写真/深澤紳一(ふかさわ しんいち):PCゲーム雑誌から文芸誌、サブカルチャー誌まで幅広い寄稿歴をもつライター。レーシングスクールインストラクターなども務めつつ、飼犬のために日々働く愛犬家。