口コミの旅行サイトで旅行先を決める訪日外国人客
外国語が特別に堪能だったわけではなく、むしろ、苦手。「最初は中学校レベルの英語で、片言に近かった」(二宮さん)が、海外からのお客様が増えてくるに従って、英語もレベルアップした。
「メールで毎日、やり取りをしていたら、どんどん上達していきました」
あるとき、イタリアからのお客さんに「何を見て、旅行先を決めるんですか?」と聞いたら、口コミ情報などもわかる旅行サイト「TripAdvisor(トリップアドバイザー)」だという。「口コミ」や「ブログでの拡散」などネットの威力を肌で感じ始めていた時期だったから、宿の規模は関係なく、口コミが良ければ、小さな宿でも上位に来ることを知って可能性を感じた。
そんなことで、まだ「インバウンド(訪日外国人客)」という言葉も一般的でなかった時代から、外国人客受け入れに取り組んだのが、山城屋がインバウンドに強くなった一因。「中途半端ではなく、やるならとことん」が二宮さんのモットーだ。
「言葉が通じない、知らない土地は不安」だから説明は親切に
筆者は、観光地でひたすら歩いている外国人を見かけると、「外国の人は、どんなに辺鄙な場所でも、情報を調べて、行きたいところにズンズン行くんだな」という印象をもっていた。
しかし、二宮さんによると、「知らない土地で不安に思っているのは、日本人も外国人も同じ」という。このため、客まかせにせず、山城屋では宿のホームページで、最寄り駅からのアクセスなどを事細かに紹介している。とくに、湯平駅は無人駅。2両編成の電車は降車時に前方の扉しか開かない。さらに乗車時にクレジットカードは使えても、IC乗車券の「Suica(スイカ)」は使えない。
日本人でもうまく降車できずに、次の駅まで行ってしまって涙声で電話をかけてくる人が多いので、言葉のわからない外国人であればなおさら。こういった困りごとを先回りして、動画を作って紹介する。「当たり前の親切」は、どこの国の人でも嬉しいもの。この「親切心」が外国のお客さんから支持されているポイントの1つ目だろう。
「困っているなと感じたら、お声がけをしています。相手の立場に立って考えるのは、万国共通で大切なことではないでしょうか」(二宮さん)