香港の雑誌に宿の「台所」が載った
山城屋が外国人客に受けている2つ目のポイントは、高級ホテルではなく、「リアルな日本」を垣間見られること。香港の雑誌に「台所」の写真が載り、リアルな日本を感じたくて、「みんな台所で撮りたがる」のだそうである。
海外からのお客さんを積極的に受け入れてきた影響で、二宮家の3人の子どものうち、二女と三女は10代で中国の大学に留学した。
わずか6室、館内の風呂はすべて「貸し切り風呂」という贅沢
ポイントの3つ目は「貸し切り風呂」だ。露天風呂2つ、内湯が1つ、陶器風呂が1つ。合計4つの風呂が、すべて貸し切り風呂として鍵をかけて入るスタイル。全6室にしては温泉の数が多いので、「貸し切り風呂が満員で入れない」ということはまずない。
「泊まる」だけでなく「モノを売る」おばあちゃんの「田楽味噌」
コロナ禍で、お客さんが来なくなった時に、「旅館が旅館業だけしていたらダメだ。何かモノを売らないといけない」と気づいた二宮さん。「そうだ、味噌があった」とおばあちゃんが作っていた味噌を売り出すことに決めた。こんにゃくや大根、焼き茄子につける「田楽味噌」である。
白味噌にみりん、酒、砂糖を入れて練り上げる田楽味噌は、日本の郷土料理。これを「大女将の秘伝の味噌」と銘打って、コロナ禍のときに商品化した。おばあちゃんは2023年に亡くなったので、「いまではレシピを残しておいて良かった」と思っている。
さらに、甘くした「黒田楽味噌」は焼き肉やスイーツとも好相性。訪れてくれた外国人客のリクエストに答えて、海外輸出も計画する。