2024年12月号『おとなの週末』で町中華特集を担当したライター・肥田木&菜々山、編集・武内&戎が、約1ヶ月に及ぶ調査・取材の日々で、町中華の魔力に取り憑かれた様子。1名テンション低めですが……。
画像ギャラリー2024年12月号『おとなの週末』で町中華特集を担当したライター・肥田木&菜々山、編集・武内&戎が、約1ヶ月に及ぶ調査・取材の日々で、町中華の魔力に取り憑かれた様子。1名テンション低めですが……。
取材拒否連発、それも町中華の魅力?
菜「今回は過去イチ、盛り上がる座談会になりそう(笑)。さあて、取材拒否連発されたのは、どこのどいつだぁい?」
武「ボクですね。14軒とか15軒とか。多すぎて忘れた」
肥「え〜!!ウケる!!」
戎「一昨年のうなぎ特集で、取材拒否12軒ってのがあったけど、最多レコードを叩き出しましたね」
武「取材で食べ、リサーチで食べ、断られてまた食べ、取材で食べ……の繰り返しで、もう疲れた。編集の仕事辞めて、佐渡島に砂金掘りの出稼ぎに行こうと思う」
菜「元気を出して、そして今はそんなに砂金取れないよ!(笑)でも今月とある飲食チェーンの広報さんと話したんだけど、世間の人って取材拒否の店があるなんて、思ってもいないみたい。味がいいのに紹介できない悔しさったら!特に町中華は取材拒否が多いジャンルだから大変だよね。BSで『町中華で飲ろうぜ』って番組があるでしょ。あのスタッフさんは、日々店探しにとんでもない苦労をされていると思う。飲み会でもして語り合いたいくらいだよ」
武「そうなんです。年配の夫婦や家族でやってる店も多いから、これ以上忙しくなると困るって理由が大半ですね」
戎「こちらも2軒取材拒否でしたが、かわいいもんです」
武「いろんな店を食べまくって、やはり町中華の魅力はメニューの多さ、リーズナブルな価格、あと安心感ではないかという考えに至りました」
菜「ほほう、なるほど」
武「メニュー数の多い町中華では、スープはいろんな料理用に、ご飯も定食などにも使うことから、専門店よりも汎用性の高いもの(言い換えれば、個性の弱いもの)にならざるを得ず。でいながら、専門店よりもお客を集めるのはすごいなあと思うように。特にラーメンは子供の頃に食べた懐かしさも相まってだとは思うけれど、優しい味わいというか、穏やかなおいしさながら、トッピングなどにパンチがあって、最終的には大満足なものが多かったです」
肥「ほんと、町中華ってみなさんすごい努力をしてらっしゃるな、と肌で感じた。それを長年積み重ねてきたのが、レジェンド店として紹介した5軒だね」
菜「どの店もすごいストーリーがあったんだって?」
肥「そうそう、歴史ある店や行列店って想像の上をいくドラマがあるんだよ。いつものお店記事より、大きなスペースで紹介できたけど、それでも文字数が足りないくらい」
戎「へぇ、特に印象深かったお店はどこですか?」
肥「『餃子の王さま』は、ずいぶん前から行きつけの店。ここの餃子は唯一無二だよね。ほぼキャベツの繊細な餡だけど全く物足りなさを感じさせない。いや逆に私は肉たっぷりの餃子よりダンゼンこっちが好き。パリパリの皮と餡の食感のコントラストも楽しくて、いくつでも食べられる軽やかさ」
『餃子の王さま』王さまの餃子(1人前)490円
戎「他にもありますか?」
憧れだった「玉子チャーハン」
肥「ご存じ、玉子LOVERなので。憧れだった『兆徳』の『玉子チャーハン』の取材もテンション上がった。これシンプルの極み!作り方を見ていたけど、焦げ目ひとつなく美しい黄金色のパラパラに仕上げる炒め方や絶妙な塩加減はさすがの技だった。具が玉子と少々の長ねぎだけという潔さにも惚れた」
菜「いい取材になったんだね。こちらは町中華の中でも回鍋肉、酢豚、レバニラなんかの一品料理を担当してたんだ。んまあ、大変だったこと。ぶっちゃけクックドゥのタレ使って自分ちで作ってもそんなに変わらなくない?ってイマイチな店も多かったしね」
戎「ほんと、食べても食べてもキラリと光るいい店が見つからない。さすがに“もういいぜ”(cvサンドイッチマン伊達さん)という気分に」
菜「それに、今回クローズアップした単品だけがおいしくても、他がダメなら本誌『おとなの週末』を読んで行ってくれた読者が残念な気分になっちゃうでしょ。料理全体のレベルが高くて、さらに町中華っぽい風情も楽しめつつ、取材も受けてくれるとなると、それこそ砂金レベルだよ」
肥「ここで紹介したのは都内でも珠玉の店ってわけだね」
菜「それは自信を持って言える。あんだけ食べ歩いたんだから」
戎「なかでも、ボクが特に気に入ったのが『秀永』です。青椒肉絲のピーマンがみずみずしくてシャキシャキ。中華の“炒めの技”ってこういうことか、と思わず膝を打ちました。あと『白果鶏飯』も絶品。ああ、もういいぜって思っていたのに、話してたらまた食べたくなってきた」
『中華料理 秀永(しゅうえい)』青椒肉絲1050円
菜「私も語らせて!まずは『栄光軒』のくるくる酢豚ね」
肥「なにそれ?」
菜「酢豚ってロースとかのブロック肉を使うでしょ?だけどここは、薄切りの豚バラをくるっと丸めたのを使うの。ジューシーだし、ヒダに甘酢がたっぷり絡んでこっちの方がおいしいって思った」
ネオ町中華に見えた輝かしい未来
肥「いいアイデアだわ〜。他には?他には?」
菜「『龍華』は、エビチリはもちろん、どの料理も品のある味。ここは町中華では珍しく地酒も揃えていてね。レバーの竜田揚げに淡麗系の純米酒を合わせたら、最高だったなあ」
武「中華×日本酒って、これから流行るかも」
菜「あと、『岳陽』も同じく味わいがどこか上品なんだよね。町中華というより、それなりにお高い店で食べてる感覚。店構えはめちゃくちゃ庶民的だけどね。そのギャップに萌えた」
『中華料理 岳陽(がくよう)』肉ダンゴ1350円
戎「あと『龍朋』の回鍋肉ですよ!チャーハンに負けず劣らずあんなに旨かったとは」
菜「でしょう?いろんな店の回鍋肉を食べまくったけど、あれほど白飯に合う回鍋肉はないと確信した。取材した時に聞いたんだけど、午前5時半から仕込みを始めるんだって。町中華はどの店も膨大な仕事量をこなしながら営業していらっしゃる。確かに“これ以上忙しくなると困る”っていうのもわかるよね」
武「“大変だから息子には継がせたくない”っておっしゃるご主人もいますよね。後継者不足から惜しまれつつ閉店する店も増えていますが、この業界に活気が戻ってくれたら。というわけで期待したいのが、ネオ町中華です」
菜「ネオってどういう店?」
武「ワインと合わせたり、ひとつの料理に特化したりとか。さらに若者だけでなくボクら大人世代でも楽しめる店を選びました」
肥「特におすすめは『トミーズキッチン』。名店出身の店主が夫妻で切り盛りする店で料理は本格派。おしゃれカフェみたいなカジュアルさと気軽さがネオ的な要素かな。ここマジでおいしいよ。調味料もできるだけ自家製。素材を生かした味は油控えめで体にもやさしい。ご夫妻のお人柄も素敵で仲良しの感じがいいし、通っちゃう!」
『中華美食 トミーズキッチン』特製白湯鶏煮込みそば1300円
武「ネオは台湾料理が多く用意されている印象です。今までとは違う中華をと思うなら、ネオ系にいくのも大いにアリかと思います」
ネオマイ中華が増えそう
肥「ありそうでなかったチャーシューを主役にした『福籠叉焼』なんかの個性派をはじめ、後継者不足などで減少しつつある昭和の町中華を継承しようというテーマの店や動きもあって、今後もトレンドとしてネオ町中華は増えそうな感じ」
『福籠叉焼(フーロンチャーシュー)』叉焼四種盛り800円※トッピングはマキシマム濃い煮玉子180円+味付メンマ80円、焼売(4コ)720円
菜「へえ、昔ながらの町中華へのリスペクトが根底にあるんだね。それを知れば取材した店のご主人たちもうれしいだろうな」
戎「本当は紹介したい店が他にも多々ありましたが、お店の事情も理解できるし、そっとしておいてあげたい気持ちもあります。それでも本誌はこれからもずっと町中華を応援していきましょう。良い店が長く続いて欲しいですもんね」
文/菜々山いく子、撮影/浅沼ノア(餃子の王さま)、小島昇(秀永、岳陽)、西崎進也(トミーズキッチン、福籠叉焼)
■おとなの週末2025年2月号は「醤油ラーメン」
※2024年12月号発売時点の情報です。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
…つづく「【厳選2軒】神楽坂エリアで絶品の町中華と“町イタ”を発見! 名店仕込みの味が楽しめる」では、日本の料理だけではなく、他の国の料理にもフォーカスを当て、ひっそり構える店を覆面調査でレポートしています。
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