ぶらっと東京日和

タイムスリップ気分になる!? 【厳選】江戸風情のお店2軒 14代続く蕎麦の老舗と100年以上前の建物を受け継ぐ居酒屋

『根津の甚八』(手前から)うるめいわし600円、鶏肉の紅茶煮(煮卵付き)800円、日本酒 太平山(大)950円 苦みを感じつつ「うるめいわし」を噛みしめる。光が周り過ぎない空間が江戸の夜を想起させる

時代小説を見て想像を膨らませては「あぁ、こういう店で一杯やりたいなぁ」と思ったことが一度はあるはず。そこで江戸風情を感じられる店を都内で調査。いるだけで気分に浸れる趣ある店、料理を食すことで世界に入り込める店。気分は鬼平か梅安か。ちびちびと日本酒を飲んで、江戸に思いを馳せたくなる店を紹介。

画像ギャラリー

時代小説を見て想像を膨らませては「あぁ、こういう店で一杯やりたいなぁ」と思ったことが一度はあるはず。そこで江戸風情を感じられる店を都内で調査。いるだけで気分に浸れる趣ある店、料理を食すことで世界に入り込める店。気分は鬼平か梅安か。ちびちびと日本酒を飲んで、江戸に思いを馳せたくなる店を紹介。

江戸からの美学を蕎麦前と味わう『砂場総本家』@三ノ輪

千本格子の窓や傾斜のある船底天井、風格のある建物は昭和29年、先々代が腕のいい宮大工に頼んだものだという。

現当主の長岡孝嗣(たかし)さんは14代目。江戸から続く蕎麦屋の老舗『砂場』の総本家だ。

「海苔しかり板わさしかり、蕎麦屋にある種物の具材が酒のつまみになるのが江戸らしい美学ですね」とはご主人の言。

天ぬき1280円、板わさ650円、焼きのり970円、お酒(一合)630円

『砂場総本家』(手前右から時計回りに)天ぬき1280円、板わさ650円、焼きのり970円、お酒(一合)630円 「板わさ」は分厚く切られもちもちとした食感。「焼きのり」には本山葵を擦っていただく。「天ぬき」のプリプリしたエビ入りのかき揚げもなんとも旨い。

こちらではカリッと揚がってゴマ油が香る天ぷらも人気で、一杯やるなら天ぬきを楽しんで、仕舞いにもり蕎麦というのもいい。水にこだわり、毎日素材の声を聞きながら謙虚に打つという蕎麦。

本枯れ節が効きながらカドのないツユでささっと手繰りたい。

『砂場総本家』店主の長岡孝嗣さん、純子さん

店主の長岡孝嗣さん、純子さん「天然のものを使ってそれを活かすように心がけています」

『砂場総本家』昔ながらの風情が懐かしい店内

[住所]東京都荒川区南千住1-27-6
[電話]03-3891-5408
[営業時間]11時〜17時(夜要予約〜21時)
[休日]水・木
[交通]都電荒川線三ノ輪橋駅から徒歩2分、地下鉄日比谷線三ノ輪駅3番出口から徒歩6分

揺らぐ時間軸陰影礼賛の空間で飲る『根津の甚八』@根津

不忍通りから一本入った細い路地に、店先の樹木に隠れるようにしてある小さな一軒

家。千鳥格子の障子戸からほのかに灯りが漏れている。

女将さんの名上ケエ子さんが店を始めたのは26年前。実はその前も“根津の甚八”という屋号の居酒屋だったそう。

不動産屋の「建物を直さず、屋号もそのままで」という条件で借り、奇しくもその名を引き継いだということだ。

築およそ115年で建てられた当時のままという空間。

うるめいわし600円、鶏肉の紅茶煮(煮卵付き)800円、日本酒 太平山(大)950円

『根津の甚八』(手前から)うるめいわし600円、鶏肉の紅茶煮(煮卵付き)800円、日本酒 太平山(大)950円 苦みを感じつつ「うるめいわし」を噛みしめる。光が周り過ぎない空間が江戸の夜を想起させる

ここに来たらまずそこにじっと身を馴染ませ、その雰囲気を味わうことから始めたい。

つまみは焼き目の入った「うるめいわし」もいいし、女将特製の「鶏肉の紅茶煮」もいい。しっとりした鶏ムネ肉はほんわりと香りもよく。噛み締めると旨い。傍に活けられた野草もなんとも合っている。

『根津の甚八』店主の名上ケエ子さん

店主の名上ケエ子さん「楽しみに足を運んでくださる方に背中を押されてやっています。」

『根津の甚八』カウンターに腰を下ろすと低めのアングル。それも落ち着く

[住所]東京都文京区根津2-26-4
[電話]03-5685-1381
[営業時間]17時〜22時
[休日]木・日
[交通]地下鉄千代田線根津駅1番出口から徒歩4分

粋な昼酒か、宵闇を愛でて飲むか……

かの池波正太郎は「飲まぬくらいなら、蕎麦屋へは入らぬ」と言ったとか。江戸っ子だね。

実際、江戸時代末には江戸市中の蕎麦屋は3700を超えたって話だから、江戸の暮らしと蕎麦は切っても切れない間柄ってわけだ。

そこで最初に向かったのは三ノ輪の蕎麦屋『砂場総本家』だ。

もちろん目的は蕎麦屋で昼酒。由緒正しく江戸期から続くお店で一献やろうって次第だ。

『砂場』って屋号は豊臣秀吉の大阪城築城時、資材の砂置き場に蕎麦屋を開店したことに由来するとか。その後江戸に下って三大江戸蕎麦のひとつとなったという話だ。

蕎麦前と言えばまずはこれ、板わさと焼き海苔を頼む。合わせるのは冷やの酒。ほどよく熟成感のある剣菱がいい。

『砂場総本家』昔から使われてきた酒器などもいい

焼き海苔はちゃんと木箱に入って出てくる。木箱には炭火が入っていて、蓋を開けてはパリリとした海苔をつまむ。ふわりといい香りがする。

そしてお品書きにはないが注文OKなのが天ぬき。天ぷら蕎麦から蕎麦を抜くから天“ぬき”。

温かい蕎麦ツユの中に浮かんだ、カリッと揚がったかき揚げ。こいつをつまみにやるのがいい塩梅なんだな。

次に足を向けたのは谷根千。宵闇が近づく時間帯、小さな提灯に引き込まれるようにして訪ねたのが居酒屋『根津の甚八』だ。

住宅街にひっそり佇む姿がすでに趣深いのだが、中に入ればさらに驚く。時を重ねた木造りの障子戸に、土間に設えられ、使い込まれた小さなカウンター。一つ上がった奥には小さな座敷がある。

およそ築115年の古民家というが、昔ながらの風情だ。

『根津の甚八』ふっと立ち寄りたくなる何とも味のある外観だ

そして何より陰影礼賛、仄暗い明かりと静かさが時を飛び越えたような気分にさせる。

うるめいわしにお銚子をつけてしみじみ。奥で飲んでいるのが鬼平であったとしても別段驚きはしないだろう。

東京の魅力発信プロジェクトとは

雑誌『おとなの週末』ムック「ぶらっと東京日和」は令和6年度「東京の魅力発信プロジェクト」※に採択されています。

東京都は、国内外へ東京の都市としての魅力を発信し、「東京ブランド」の確立に向けた取り組みを推進しています。その一環である「東京の魅力発信プロジェクト」※に、雑誌『おとなの週末』ムック「ぶらっと東京日和」が採択されました。

※「東京の魅力発信プロジェクト」は、江戸時代から続く伝統と最先端の文化が共存する、東京の魅力を表現した東京ブランドアイコン「Tokyo Tokyo Old meets New」を効果的に活用しながら、東京都と民間事業者が連携し、東京の魅力の発信等を行う事業です。

「Tokyo Tokyo」とは

「Tokyo Tokyo」は、東京の魅力を国内外にPRするアイコンです。旅行地としての東京を強く印象づける「東京ブランド」の確立に向けた東京都の取組の中で誕生しました。
筆文字のTokyoとゴシック体のTokyoは、江戸から続く伝統と最先端の文化が共存する東京の特色を表現しています。

『ぶらっと東京日和-自分だけの東京を見つける小さな旅-』

※2022年10月号発売時点の情報です。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

つづく…『東京日和』では、世界の観光スポット「築地」の魅力も紹介しています。

画像ギャラリー

この記事のライター

関連記事

魅惑のサウナ付き日帰り温泉3選【東京近郊編】 サウナ好きライター厳選、2025年に行くべき!

石神井川沿いの知られざる魅力をご紹介! 魅惑のお散歩スポット6選 食べて歩いて見て歩く満腹コース

江戸時代創業、東京を代表する老舗4選!200年以上愛される“どぜう”は人生で一度は味わいたい旨さ

家光公の城を支えた天守台が壮観だ! 皇居の歴史に思いを馳せるスポット5選【皇居東御苑散策ガイド】

おすすめ記事

魅惑のサウナ付き日帰り温泉3選【東京近郊編】 サウナ好きライター厳選、2025年に行くべき!

本場韓国の味わいにどこまで迫ったか ピリッと旨い本格ビビンバが『ほっともっと』から新登場! 決め手は5種の具材とコク深い旨辛ダレ

【衝撃!!】キミは京都の「酒粕ラーメン」を知っているか? 激戦区開催の『伏見ラーメンラリー2025』なら「激ウマ」が堪能できるぞ

立ち飲みなのに長居したくなる!大井町で出合った“ちょいひねり”の個性派おつまみが旨い

【愛されて55年】『アヲハタ 55』ジャムの「55」って何か知ってる? パンの最高の「相棒」がリニューアル!!

【難読漢字】地名当て 神社が名前の由来です

最新刊

「おとなの週末」2025年3月号は2月14日発売!大特集は「喫茶店」

琥珀色のコーヒー、落ち着いた雰囲気、マスターの笑顔……喫茶店に足を運びたくなる理由はひとつではない。…