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粋な昼酒か、宵闇を愛でて飲むか……

かの池波正太郎は「飲まぬくらいなら、蕎麦屋へは入らぬ」と言ったとか。江戸っ子だね。

実際、江戸時代末には江戸市中の蕎麦屋は3700を超えたって話だから、江戸の暮らしと蕎麦は切っても切れない間柄ってわけだ。

そこで最初に向かったのは三ノ輪の蕎麦屋『砂場総本家』だ。

もちろん目的は蕎麦屋で昼酒。由緒正しく江戸期から続くお店で一献やろうって次第だ。

『砂場』って屋号は豊臣秀吉の大阪城築城時、資材の砂置き場に蕎麦屋を開店したことに由来するとか。その後江戸に下って三大江戸蕎麦のひとつとなったという話だ。

蕎麦前と言えばまずはこれ、板わさと焼き海苔を頼む。合わせるのは冷やの酒。ほどよく熟成感のある剣菱がいい。

『砂場総本家』昔から使われてきた酒器などもいい

焼き海苔はちゃんと木箱に入って出てくる。木箱には炭火が入っていて、蓋を開けてはパリリとした海苔をつまむ。ふわりといい香りがする。

そしてお品書きにはないが注文OKなのが天ぬき。天ぷら蕎麦から蕎麦を抜くから天“ぬき”。

温かい蕎麦ツユの中に浮かんだ、カリッと揚がったかき揚げ。こいつをつまみにやるのがいい塩梅なんだな。

次に足を向けたのは谷根千。宵闇が近づく時間帯、小さな提灯に引き込まれるようにして訪ねたのが居酒屋『根津の甚八』だ。

住宅街にひっそり佇む姿がすでに趣深いのだが、中に入ればさらに驚く。時を重ねた木造りの障子戸に、土間に設えられ、使い込まれた小さなカウンター。一つ上がった奥には小さな座敷がある。

およそ築115年の古民家というが、昔ながらの風情だ。

『根津の甚八』ふっと立ち寄りたくなる何とも味のある外観だ

そして何より陰影礼賛、仄暗い明かりと静かさが時を飛び越えたような気分にさせる。

うるめいわしにお銚子をつけてしみじみ。奥で飲んでいるのが鬼平であったとしても別段驚きはしないだろう。

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おとなの週末Web編集部
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