丼ぶり一面を覆う “まっ黒スープ”の秘密
「名人の味 らーめん爐」のラーメンを初めて見た人は、「これは、イカ墨?」と、思う方もいらっしゃいますが、イカ墨はまったく使用されておりません。「名人の味 らーめん爐」には、「らーめん」と、「スペシャルらーめん」が存在します。どちらのラーメンとも、特製の“焦がしラード”が入るのですが、これがまっ黒な見た目の秘密でした。前者は野菜の旨みを凝縮したもの、そしてスペシャルらーめんには野菜+魚介類の旨みがたっぷり含まれています。
この特製の“焦がしラード”は、自家製ラードから作っていきます。市販の精製ラードでは「爐」の味が出ないとのことです。そこに、野菜やツブ貝、ホタテ貝、アサリ、イカなどを加え、強火で焼きます。強火で焼く理由は、せっかくの濃厚スープなのに、野菜や魚介類の水分によって薄まってしまうのを防ぐためです。こうして培われてきた技術こそ、屋号の前に関した「名人の味」の所以(ゆえん)なのです。
「爐」のラーメンと特製の焦がしラード
ラーメンのスープも、中華鍋を使って作り上げていきます。特製の“焦がしラード”ができ上がったら、豚骨を強火で炊いた白湯スープを加え、タレを入れスープが完成します。麺は札幌ラーメンの歴史を変えた製麺所である西山製麺の多加水熟成ちぢれ麺。力強いスープに負けない弾力とコシを兼ね備えています。
具材は「らーめん」にはチャーシュー、モヤシ、メンマ、そして「スペシャルらーめん」にはひき肉、魚介類(ツブ貝、ホタテ貝、アサリ、イカなど)と、ボリュームたっぷりです。
もちろん「らーめん」にも野菜の旨みが詰まった特製“焦がしラード”が入り、独特な味わいでクセになります。「スペシャルらーめん」の色みが黒なのに対して、「らーめん」は焦げ茶色で、スペシャルらーめんと比べ、ややあっさりとした味わいに仕上がっております。
幻の味になった「爐」のラーメン
2024年4月、店主の大関徹史さんより、「体調がすぐれないため、お店を廃業する……」というご連絡をいただきました。その後、訃報が届いたのは3カ月後の7月でした。奥さまによると、廃業を決めた1カ月後に逝去されたとのことでした。70年以上続いた、唯一無二のラーメンが、途絶えてしまったことは残念でなりませんが、私たちにできることは、未来永劫、「爐」に感謝し、その歴史とすごさを伝え続けることだと思っております。ご冥福をお祈り申し上げます。