牡蠣三昧の定食が絶品、まさに「海のミルク」
さて、もう一つ、秋冬の宮城県の味覚と言えば、三陸から松島にかけた「牡蠣」が有名です。当地も大震災では甚大な被害を受けましたが、生産者の皆さま、関係の皆さまの尽力で、今でも広島県につぐ全国第2位の生産量を維持しています。
仙台で仕事をしていた2000年代は、松島の牡蠣を取扱う飲食店に訪問したことも数知れず。震災後は会社のボランティアに応募し、松島の牡蠣漁師のお手伝もしました。日本三景で有名な松島。今日は牡蠣が売りの2店をご紹介します。
最初のお店は『焼がきハウス』です。JR松島海岸駅から徒歩約10分。『松島さかな市場』の隣にお店があります。最初に券売所でチケットを買います。
筆者が選んだのは「松島焼きがきセット」。焼き牡蠣が5個、ご飯にも牡蠣が3~5個、お味噌汁にも3~5個というまさに牡蠣三昧の定食です。焼きがきはどこまでもクリーミーで、口の中に甘さが広がります。まさに「海のミルク」ですね。
牡蠣と言えば白ワインですが、一緒にいただいた缶チューハイがまるで高級シャンパンになったような錯覚に陥ります(笑)。産地は石巻を中心とした南三陸の牡蠣を使っているそうです。ちなみにエリア別では石巻界隈の牡蠣が宮城県内シェア40%程度と一番高いとか。
近くには『かき小屋』という松島観光協会の直営店もあります。さぞかし繁盛しているかと思いきや、今シーズンはまだ開店していないそうな。当店は松島産の牡蠣だけを提供するようで、この数年収穫の時期が年々遅れているそう。気候変動による海水温暖化の影響もあるのかもしれません。一日も早い営業開始を期待しています。
海を食べているようなみずみずしい牡蠣、芭蕉も眺めた松島海岸の絶景
もう1店、松島海岸駅からすぐにある『たからや食堂』をご紹介します。当店の牡蠣も南三陸産だそうです。注文したのは「牡蠣の蒸し焼き(4個)」です。
ご覧の通り、立派な貝に美味しそうな牡蠣が鎮座しています。店主からは「さっきまで海にいたので、何もつけないで食べてください」と言われました。たしかに海を食べているような感覚に襲われるみずみずしさでした。
当店は牡蠣料理の他にも「いくら丼」、「てんこ盛りしらす丼」、ご当地感満載の「笹かまフライ定食」などなど、メニューが豊富です。目の前は松島海岸。松尾芭蕉(1644~94年)も唸った絶景を見たあとは、是非当店にお運びください。
今日は仙台(宮城)シリーズ最終回として、これから旬を迎える「はらこ飯」と「牡蠣」を取り上げました。来年2026年で東日本大震災から15年になりますが、久しぶりに訪問した亘理も松島も活気にあふれ、大いに賑わっていました。筆者にできるお手伝いは限られていますが、今後も全国の被災地に足を運び、美味しいご当地グルメを紹介していきたいと思います。
文・写真/十朱伸吾
おとなの週末Web専属ライター。全国のご当地グルメを求めて40年余。2013年には、“47都道府県食べ歩き”を達成した。訪れた飲食店は1万軒をゆうに超える。旅と食とお酒をこよなく愛するオプチミスト。特にビールには一家言あり。競馬と写真とゴルフも趣味。週1の自転車ツーリングとサウナでダイエットにも成功した。好きな言葉は「発想力は移動時間に比例する」。