古井由吉の名作「中山坂」と、きぬかつぎ
さて、12月6日(土)からスタートした中山競馬場に先日ふらり訪問してきました。立ち寄ったのはJR総武線「下総中山(しもうさなかやま)駅」から徒歩数分、競馬場にもほど近い法華経寺(ほけきょうじ、市川市)です。芥川賞作家でドイツ文学者の古井由吉さんに、「中山坂」という短編小説があります。同寺を経由して毎週のように競馬場に通う老人と、たまたま下総中山駅で下車した若い女性が交錯する物語で、競馬ファンとしては一度行ってみたいと思っていました。小説では法華経寺の境内に老人が出入りする茶屋が登場しますが、それにも似た休憩所『額堂』が五重塔の近くにありました。
お店に入るとまさに「中山坂」を彷彿とさせる落ち着いた雰囲気。甘味類や軽食が食べられるようです。せっかくなので、小説にも出てくる「きぬかつぎ(里芋の小芋を皮付きのまま茹でたり蒸したりしたもの)」を食べました。するっと皮がむけ、塩をつけて食べるとこれがなかなか奥深い味です。老人と女性も食べたのかと思うと、物語に自分が同化し何とも不思議な気分になりました。
法華経寺は池上本門寺(いけがみほんもんじ、東京都大田区)などと並び、日蓮宗の五大本山の一つと言われる名刹です。有馬記念が当たるように、あわせて「午年(うまどし)」の2026年、人馬(じんば)ともに無事に過ごす一年になりますように、とお祈りし帰路につきました。今年もお付き合いただき有難うございました。皆さまもよい新年をお迎えください。
文・写真/十朱伸吾
おとなの週末Web専属ライター。全国のご当地グルメを求めて40年余。2013年には、“47都道府県食べ歩き”を達成した。訪れた飲食店は1万軒をゆうに超える。旅と食とお酒をこよなく愛するオプチミスト。特にビールには一家言あり。競馬と写真とゴルフも趣味。週1の自転車ツーリングとサウナでダイエットにも成功した。好きな言葉は「発想力は移動時間に比例する」。



