豆大福に紅大福、作りたてだからこその柔らかさ
京都の和菓子屋で「ふたば」といえば名代豆餅の「出町ふたば」が有名ですが、京都には「七条ふたば」「稲荷ふたば」など「地名+ふたば」の屋号の和菓子屋が数多くあります。その歴史を紐解くと、四条堀川にあった「ふたば総本舗」がふたばの始まりで、ここで修業された方々が、ふたばの名をもらって、地域名をつけた屋号で開業されたそうです。
「うちの初代の山本金八も、ふたば総本舗で働いていました。兄弟子が独立して出町ふたばを始めるときに、一緒に手伝いに入ってしばらく修業していたそうで、豆大福(名代豆餅)は出町ふたばで教わったと聞いています」と山本諭さん。
ふたばは、店ごとに系譜が異なり、豆餅や豆大福も改良や工夫を重ねて、それぞれが美味しいと思うものを手作りされているとか。そのなかでも「稲荷ふたば」でおすすめしたいのが、三代目が考案した「紅大福(べにだいふく)」です。
姿形は豆大福と変わりませんが、薄化粧したかのように、ほんのりと朱色に見えます。伏見稲荷大社の門前町に店を構えているので、お稲荷さんの鳥居にあやかった大福を作りたいと食材を探したところ、山形県東置賜郡川西町で栽培されている希少な紅大豆(べにだいず)に出合うことができて、この紅大福が完成したそうです。夏の暑さで形が崩れやすいため、7月、8月は作るのをお休みされるので、食べたい方はお早めに。
朝生はひとつずつ袋に入っていて、1個1本ずつ買えるので、食べ歩きにも最適です。三代目女将の山本夕実子さんが接客を担当され、とても気さくな方で、地元のお馴染みさんと夕実子さんのおしゃべりに花が咲くこともしばしばとか。和菓子のことはもちろん、観光についても、分かることは教えてもらえるそうなので、気軽に声をかけてみては。
店頭の壁面には、生菓子の名前を書いた短冊が飾られていて、これらすべて諭さんの手書きです。外国人観光客から売って欲しいと懇願されたこともあるとか。贈答や土産ののし紙に、表書きと名前を手書きできるように、子どもの頃から習字を続けてきたそうで、準八段の腕前。2023年に新調されたお店の看板の文字も諭さんの作品だそうです。
お餅やお団子は、時間が経つと固くなるのは自然なこと。美味しく食べてほしいからと、毎朝手作りされる、稲荷ふたばの朝生をぜひ味わってみてください。
店舗概要
[店名]稲荷ふたば
[住所]京都市伏見区深草稲荷中之町55
[電話番号]075-641-3612
[営業時間]9時〜18時(売切れ次第終了)
[休日]水曜・木曜
[交通]JR奈良線稲荷駅から徒歩3分。京阪本線伏見稲荷駅から徒歩4分
文・写真/寺田鳥五郎
テラダ・トリゴロウ。京都精華大学美術学部(現・マンガ学部)卒業。ココロ株式会社代表取締役。1968年、京都生まれ。タウン誌編集者、地方新聞記者、フリー編集ライターを経て、編集デザイン会社を設立。「人に歴史あり」を信条に取材を重ね、その人の魅力を伝えることを心がけている。
















