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ナポリタンと1964年東京オリンピック選手村を結ぶ意外な関係とは 東京路線バスグルメ(3)

ナポリタンと1964年東京オリンピック選手村を結ぶ意外な関係とは 東京路線バスグルメ(3)

小説『バスを待つ男』や、講談社の「好きな物語と出会えるサイト『tree』」で連載中のエッセイ『日和バス 徘徊作家のぶらぶらバス旅』など、作家生活25周年を迎えた西村健さんは、路線バスをテーマにした作品の書き手としても知られています。「おとなの週末Web」では、東京都内の路線バスを途中下車してふらり歩いた街の様子と、そこで出会った名店のグルメを紹介します。

perm_media 《画像ギャラリー》ナポリタンと1964年東京オリンピック選手村を結ぶ意外な関係とは 東京路線バスグルメ(3)の画像をチェック! navigate_next

開幕直前までトラブル続きの東京オリンピック

東京オリンピック、始まりましたね、いよいよ。

新国立競技場のデザイン変更問題に端を発し、コロナ禍による開催、1年延期。森喜朗・大会組織委員会会長(当時)による女性蔑視発言から、開幕直前までの関係者の相次ぐ辞任、解任。思えばこれほどトラブルに見舞われた五輪というのも珍しいのでは。

ただまぁやっぱり、東京オリンピックですよ。

個人的な話で恐縮ですが生まれは昭和40年なので、前回の時にはこの世にいなかったし。次がもしあるとしても私はもうとっくに墓の中でしょう。だから生涯で一度だけ、体験できる東京五輪ということになる。

渋谷区のコミュニティバス「ハチ公バス」

なので、バスで行って来ました。今回は乗るのは、ハチ公バス。渋谷区の運行するコミュニティバスですね

コミュニティバスというのは地域住民の移動手段を確保するため、地方自治体が運行するバスです。様々なケースがありますが基本的に、企業系バスが入り込まないような細い路地を複雑に走り回り、住民がより利用しやすいように路線が設定されている場合が多い。故に車両も、小型のものが多いのが特徴です。

んで我らがハチ公バスは、これ!

ハチ公バス

忠犬ハチ公と言えば渋谷のシンボルですもんね。親しみやすいデザインは漫画家、故マンガ太郎氏の手によるものだそうです。これでは小さなお子さん連れだったら、「乗りたい乗りたい!」とせがまれること間違いなし。まぁ乗車料金は100円なので、懐がさして痛むことはないのですが……

ハチ公バスは路線が4コースありますが今回、乗るのは「神宮の杜ルート」。赤線で図示しているのはコース全体ではなく今回、乗った区間だけだけど、青戦で示したように「代々木競技場」「新国立競技場」「東京体育館」と、関連施設を3つもつなぐように走ってるのが分かりますね。まさにオリンピックを体感するためのコースのようなものです……「無観客開催」で入れないけど(笑)

よくもまぁこんなにグニャグニャ曲がったルートが設定されてるなぁ、と思った方もいることと思います。そう。これがコミュニティバスの醍醐味でもあるんですよ。

国立代々木競技場の脇を通り、国立競技場へ!

今回乗ったハチ公バスのルート

さてバスは出発点、渋谷駅ハチ公口を出るとすぐにUターンして、JRの線路沿いに北上します。渋谷消防署の先で細い道に左折し、坂を登って渋谷区役所前へ。急カーブを切って代々木競技場の立つ高台の前に出、敷地を縁取るように走ります。

これ、地図だと分からないけど結構、坂だらけの場所なので上がり下りが激しいんですよ。基本、代々木競技場より低いところばかり走るので、上がどうなってるのかよく分からない。この時、ハンドボールをやってる筈だったんですけどね。普段と違うと言えば、警官の姿ばかり見掛けたことでしょうか。通行人も少なかったなぁ。ハチ公の周りは普段通りの人出だったのに。

運賃はたった100円 得した気分

図示の通りあちこち曲がりくねった挙句、いよいよ国立競技場の前まで来た。直近の道は交通規制されてて、一般車は入れない。なのにバスは特例で走れる。何か、得した気分でしたね。たった100円払っただけなのに。

せっかくなんで「明治公園前」で途中下車します。緑色の丸で示した位置。あの有名なラーメン店「ホープ軒」の目の前ですね。

降りた場所はあまりに競技場に近過ぎたので、ちょっと引いた場所から写真に撮ってみました。こんな風に交通規制されてます

国立競技場

こちらは代々木競技場前と違って相当な人出でした。みな、私と同じように写真を撮ってた。親子連れも多かった。

やっぱり今この瞬間しか体験できないイベントですからね。中には入れなくとも、記念写真くらい撮っときたいと思うのが人情なんでしょう。移動販売のかき氷屋まで来てましたよ(笑)。これで有観客だったらスゴいことになってたでしょうね。無観客、正解。

東京体育館の周囲も道路は封鎖

東京体育館

東京体育館の方にも回ってみました。同じく道路は封鎖されてるし、フェンスで遮られて警官があちこちに立ってて、ベストアングルの写真とはなかなかならなかった。中では卓球の試合が行われてる筈なんですけどね。こんなに隔てられては、何かやってるのかどうかすらよく分からない。

まぁ、こんなモンでしょう。何となく特異な雰囲気も味わえたし、そろそろメインの目的、美味いもの探しに出掛けましょうか、ね。

将棋会館前の鳩森八幡神社にお参り

鳩森八幡神社

千駄ヶ谷村の鎮守様、鳩森(はとのもり)八幡神社にお参りして、小さな旅の幸運を祈ります。この周りは古い街だし、商店街もあるのでいい店も見つかるんじゃないか、と思って……

ところが「これは」という店には巡り会えませんでした。神社の前には将棋会館があり、将棋の藤井聡太二冠(王位・棋聖)が勝負飯にしていたことで有名な、「みろく庵」は閉めちゃいましたし、ね。前述の「ホープ軒」というテもあるけどあまりに有名だし、私がここで取り上げるまでもないでしょう。

なので再びハチ公バスに乗って、先へ進みました。ちょっと思いついた店があったんです。JR代々木駅から歩いてすぐのところで、散歩で前を通っては気になっていた。

千駄ヶ谷から代々木までは直線距離にすればすぐなんだけど、コミュニティバスなので再びルートはぐにゃぐにゃ。曲がり曲がって、「代々木一丁目」バス停で下車しました。

大きく波打つ庇が目を引く外観、窓に貼り出された多彩なメニュー!

レストランKEN

目指した店というのは、これ! 「レストランKEN」。この店構え、そそらずにはいられないでしょう!? 嫌でも目を引く、この大きく波打つ庇。おまけに窓に貼り出された、メニューの多彩さと来たら、どうですか。

ところがここ、メインはケータリングにしているようで、13時過ぎに入ろうとしたのにお母さんから「あの〜、今はちょっと」と断られ掛けてしまった(汗)。配達の注文が殺到していたんでしょう。でもシェフの方が、「あ、いい。大丈夫ですよ」と言ってくれた。ちょうど調理の合間だったんでしょうか。タイミング、よかった。ラッキー

ナポリタンは、濃厚な味付け 「あぁ、美味い」

ナポリタン

これだけメニューがあると迷いますが、最初からもう決めていた。ナポリタン(1000円)を注文。初めての洋食屋ではこれ、よくやります。そもそもナポリタン、昔っから大好きなんですよねぇ。と、言うより子供の頃は、スパゲティと言えばこれしかなかった

出てきたのは、これです。さすがに子供の頃のように、ケチャップをそのままぶっかけ、ではなかった。オリジナルのソースをパスタと絡めてました。

濃厚な味付けで、あぁ、美味い。香ばしい。またこのどっさりのハムと、タマネギ、どうです。ピーマンもたっぷり。いやぁこれは食が進みますわ。割り箸も出してくれたけど、そんなの使う間もなくフォークでガツガツ平らげてしまいました

食べている間に、配達担当らしい若い店員さんが続々帰って来て、「あそこはオリンピックの専用レーンが出来てるから走れない」「あそこは右折禁止になってるからこう回り込まないと」などと情報交換してる。ケータリングの店に来たおかげで期せずして、競技場からはちょっと離れていても自然とイベントの非日常を追体験することになりました。

57年前の東京オリンピック選手村 女子食堂の料理長を務めたホテルニューグランド総料理長、入江茂忠

後で調べてみたら東京オリンピックと、ナポリタンにもご縁があったことも判明。そもそも日本発祥の料理で、最初に作ったのは横浜のホテルニューグランドの2代目総料理長、入江茂忠氏だったとされる

ところがこの入江氏、前回の東京オリンピックの時に選手村の女子食堂で料理長を務めていたのだ。ナポリタンの考案者があの時、世界中から集まった選手やコーチらを自慢の料理で持て成していたなんて。何かしみじみ、深ぁ〜い話だと思いません?

とは言えここレストランKEN、メニューは他にもたっぷりある。店を出る時お母さんから「さっきはゴメンなさいね。またいらして下さいな」と声を掛けてもらいました。はい、もちろん。絶対また来ますっ!

「レストランKEN」の店舗情報

[住所] 東京都渋谷区代々木1−45−7正和ビル1階
[電話]03-3375-9683
[営業時間]9時~14時、16時半~20時45分
※新型コロナウイルス感染拡大の影響で、営業時間や定休日は異なる場合があります。
[休日]不定休(原則日曜休)              
[交通] 小田急線南新宿駅から徒歩約3分、JR中央線・山手線代々木駅西口から徒歩約5分

西村健

にしむら・けん。1965年、福岡県大牟田市生まれ。東京大学工学部卒。労働省(現・厚生労働省)に勤務後、フリーライターに。96年に『ビンゴ』で作家デビュー。2021年で作家生活25周年を迎えた。05年『劫火』、10年『残火』で日本冒険小説協会大賞。11年、地元の炭鉱の町・大牟田を舞台にした『地の底のヤマ』で日本冒険小説協会大賞を受賞し、12年には同作で吉川英治文学新人賞。14年には『ヤマの疾風』で大藪春彦賞に輝いた。他の著書に『光陰の刃』『バスを待つ男』『バスへ誘う男』『目撃』など。最新刊は、雑誌記者として奔走した自身の経験が生んだ渾身の力作長編『激震』(講談社)。

バスを待つ男

バスへ誘う男

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
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