日本海を眼前にする京都府の北側。そこは内海を囲む歴史深い小さな町。湾内でのカキの養殖で知られ、冬はもちろん日本海のカニづくし。ひと駅先は兵庫県という北西の町、久美浜への旅。温泉にゆっくり浸かり、食べて飲んで、時々鉄道に乗って……。
オーシャンビューの隠れ宿に日本海の海の幸が待っている
久美浜湾をぐるりと半周したところが日本海と久美浜湾をへだてる砂州・小天橋(しょうてんきょう)です。天橋立に似ていることからこう呼ばれるようになりました。日本海側は白砂のロングビーチで夏は海水浴客で賑わう場所です。
日本海と久美浜湾の海の幸に恵まれた漁師町でもあるこのエリアには、古くから海鮮自慢の宿がひしめき今も40軒ほどが軒を連ねています。小天橋の東端で来年50周年を迎える『浜の路 臨江庵』は1日5組限定の温泉付き料理旅館で、今回利用するのは2019年にオープンした水辺の離れ『Calme-カルム-』です。
久美浜湾を目の前にした400平方メートルの敷地とコテージ風の1棟を使用する完全プライベートな隠れ宿で、室内は吹き抜けの高い天井、リビングは海に向かって全面の窓。外のデッキから久美浜湾に続く視界も含め、開放的な空間が広がります。
「以前は個人所有だった建物を改装し、久美浜カンツリー温泉を引いて隠れ家風の離れにしました。穏やかな海と町のシンボル・かぶと山との眺望はこの立地ならではですよ」と支配人の水戸照人さん。
好きなタイミングでゆっくり温泉につかり、夜は備え付けの天体望遠鏡で満天の星空を眺める。疲れた心を穏やかな久美浜湾が癒してくれるくつろぎの空間です。
食事は朝夕とも送迎付きで本館の個室でいただきます。夕食は地元産の海の幸が並ぶ会席料理。冬は津居山港の松葉ガニと、プランクトン豊富な内海で育てる久美浜カキを目当てに毎年訪れる常連さんで賑わうそうですが、その他の季節も海辺の町ならではの魚介が並びます。
初夏まで楽しめる産卵前のサクラダイや朝どれの活イカ。夏が旬の岩ガキやウニ、アワビのほかトビウオの刺身など高級魚も新鮮!
その他、近隣の漁港で揚がる「いつもあるとは限らない」珍しい魚介が出ることもあり、この日は顔の怖い鬼エビが登場。
「鬼エビはねっとりした身の甘みと旨みが濃厚で、カラカラに焼くと殻も食べられておいしいんです。底引き網にかかるかの運次第ですが、入ればお造りなどでお出ししています」と料理長の水戸信輔さん。
内海ではカキのほかトリガイやハマグリも獲れ、日本海では秋になればノドグロや紅ズワイガニにヒラメなどなど。鮮度がよいためお刺身で出せる魚の種類が多いのも漁港の宿ならではのお楽しみです。