小説『バスを待つ男』などの著作がある作家の西村健さんは、路線バスをテーマにした作品の書き手としても知られています。西村さんが執筆する「おとなの週末Web」の好評連載「東京路線バスグルメ」の第5弾は、多摩川を越えてお隣の神奈川県に遠征します。今回は、東京の路線バスではなく、横浜の路線バスに乗車。横浜の魅力的な街を訪ねます。
茶屋の軒先にあった藤棚に由来
「横浜編」の最後は、「藤棚商店街」(横浜市西区)に行ってみます。何か、詩的な名前ですよねぇ。商店街「藤棚一番街」のホームページ(HP)によると、明治初期から「鈴木屋」という茶屋の軒先にあった、藤棚に由来するのだとか。戦争で消失したというが、地名に残るくらいだからさぞかし立派な藤だったんでしょう。
今回の出発点は第1〜3回と同じ、横浜駅東口のバスターミナルに戻る。乗るのは横浜市営バスの「102」系統。ターミナルを出て左折し、JR根岸線のガードを潜るまでは1〜3回と同じだったんだけど、そこからまた左折することはなく、真っ直ぐ走り出した。うーん、これまた、これまでとは違うところに向かってる、と思うだけで昂揚してきてしまいます(笑)。
これまでのルートに背を向けて走ってる、とワクワクしてたら途中、大きな交差点を左斜めに入る道へ曲がった。そしたらもう、次の次が目的地のバス停でした。
えぇっ、もう降りちゃうのぉ!? せっかくラストなんだから、もっと長く乗ってたかったな。実はこの5回連載の内で一番、短いルートだったかも知れない。
残念に感じるけど、仕方がない。降りたら、目の前が「藤棚町」の交差点でした。道向かいに、「藤棚商店街」と書かれた三角アーチが見えました。迷うまでもない。おぅ、ここだここだ。
これまでとは違って、アーケードが通り全体を覆うのではなく、両側の歩道にだけ屋根がある構造。
車道から斜めに切れ込む通りが商店街で、両側の歩道の上空にアーケードがある。何だか見覚えがあるような、と思っていて、はたと気がつきました。大阪の下町、新世界の「通天閣本通商店会」がこんな感じだったんですよ。