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小説『バスを待つ男』などの著作がある作家の西村健さんは、路線バスをテーマにした作品の書き手としても知られています。西村さんが執筆する「おとなの週末Web」の好評連載「東京路線バスグルメ」の第5弾は、多摩川を越えてお隣の神奈川県に遠征します。今回は、東京の路線バスではなく、横浜の路線バスに乗車。横浜の魅力的な街を訪ねます。

横浜駅東口から“かなちゅうバス”に乗り込む

今回の「バスグルメ」ではちょっと趣向を変えて、横浜を回って見ます。

ただし私にとっての横浜は、大部分の皆さんと同じく中華街に行ったり、山下公園でのんびりしたり、と普通の観光客と何も変わらない。いわゆる「ヨコハマ」以外、何も知らないと言っていい。

幸い、担当編集者が以前、横浜に住んでいたとかで土地勘がある。なので彼から行くべきところを挙げてもらいました。言わば、お題を挙げてもらったような形。

てなわけで、最初に行くのは「横浜橋通商店街」です。どんなところなのか。どの辺にあるのかすらよく分からない。そこに、バスに揺られて行く。路線バス旅の原点のようなものですな。

と、いうことでやって来ました、横浜駅。

今回は東口の「そごう」地階部分にあるバスターミナルから神奈川中央交通バス、通称「神奈中(かなちゅう)バス」の「横43」系統に乗り込む。考えてみれば私、「かなちゅう」に限らず横浜でバスに乗ること自体、初体験。おまけにコロナのせいでここんとこ、ずっと乗れなかった運転席横の席に着くことができました。フロントガラスから正面の光景がよく見えて、絶景の席。これだけでもう、ワクワクが最高潮に達してます。まだ出る前からこんなに興奮してどうすんの!?

横浜駅東口から「横43」系統に乗り込む

ガード下をくぐって、またくぐって…初めての人には訳が分からなくなるような路線

バスはターミナルを出るとすぐ左折。JR根岸線のガードを潜って更に左折し、線路沿いに走り出します。この道は、知ってる。だからまだ、自分のいる位置関係はよく分かる。

やがてJR桜木町駅の前を通ったため、ここで停まるのかと思ったら通り過ぎてしまった。先のガードで再び線路を潜り、ぐるりと回り込んで東口側のロータリーに滑り込む。こっちがこの路線のバス停だったわけですね。

ロータリーから出たバスは、横浜市役所の前を通り、地下を走る「みなとみらい線」の「馬車道」駅の上を走って、神奈川県庁方向へ。この辺りまではまだ何とか、位置関係は分かります。

ところがそこで90°右折し、JR関内駅横のガードを潜ってまっすぐ走り出した。こうなるともう訳が分からない。これから俺、どこに向かおうとしているの? 未知の土地へ行く。いやが上にも胸が高まる。

結局、大通り沿いにいくつかの停留所を過ぎた後、その名も「横浜橋」バス停で下車。乗ったルートは地図に赤線で、商店街は青線で示してます。

「横43」系統

ここは札幌?「大通り公園」に到着、アーケードに漂う庶民の匂いと活気

バスを降り、2つ先の信号で左折して進むと、横に延々長い公園にぶつかった。その名も「大通り公園」というらしい(札幌かよ)。

バスを降ります

でもこれ、暗渠(川に蓋をして上部を覆ってしまったもの)好きの私からすればどう見ても川の跡じゃん(帰って調べたらやっぱり、元は運河だったことが判明)!? そのまた先の信号に「よこはまばし」と書かれており、商店街のアーケード入口があった。つまり川のここに架かってた橋の名前が、「横浜橋」といったんでしょうね。

横浜橋通商店街

アーケードに入るととたんに庶民の匂い、紛々と漂う。あぁいいよなぁ、こんな雰囲気。お店が両側にずらり並んでて、活気に溢れてて、地元の生活がここに息づいてる。

アーケードには「いきな下町よこはまばし」の垂れ幕がぶら下がってる。そうそう。ここの空気は皆が想像する「港ヨコハマ」とは、真逆。まさに「下町」なんですよ。へぇ、こんな「横浜」もあるんですなぁ。

「横浜橋通商店街」に架かる「いきな下町よこはまばし」

おまけによく見ると、人気番組『笑点』の司会も務めた故桂歌丸師匠の垂れ幕も並んでた。あぁそうだった、と思い出す。テレビ東京の『出没!アド街ック天国』で確かこの街、取り上げられてて、歌丸師匠の故郷だ、って紹介されてた。

歌丸師匠の垂れ幕
歌丸師匠の垂れ幕

そうかそうか、と納得する、あの粋な師匠を生んだ街なんだものなぁ。そりゃいわゆる「ヨコハマ」じゃぁ似合いませんよ。やっぱりこんな庶民的な下町だったからこそ、あんな師匠を育むこともできたんでしょう。

アーケード通りの両側には青果店に衣料店、惣菜屋に肉屋にパン屋さん等など……。地元民の生活に密着したお店が並ぶのは、どこの商店街でもお馴染みの光景。韓国料理の食材を売ってるお店なんかもあったが、これも他の街でもよく見掛ける。

ただし、なんですよ。普通のお魚屋と思って前を通り過ぎたんだけど、中で客とお店の人が交わしてた言葉を聞いて、ビックリ! 中国語だったんですよ。これは滅多にあるモンじゃない、でしょ!? さすが国際都市、横浜。観光客向けではない。既に住民が国際色豊かで、各国から来た人達が地元に根付いてる。だからこその光景、なんですねぇ。

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西村健
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