小説『バスを待つ男』などの著作がある作家の西村健さんは、路線バスをテーマにした作品の書き手としても知られています。西村さんが執筆する「おとなの週末Web」の好評連載「東京路線バスグルメ」の第5弾は、多摩川を越えてお隣の神奈川県に遠征します。今回は、東京の路線バスではなく、横浜の路線バスに乗車。横浜の魅力的な街を訪ねます。
「弘明寺」を正しく読めますか?
今回は弘明寺(ぐみょうじ)商店街に出没します。知らなきゃまず読めない名前ですよねぇ。知ってたのは、ずっと以前、横浜市役所に勤める友人に会うために行ったことがあったから。でももうホントに昔の話で、位置的にどの辺りだったのか、どんなとこだったか記憶はほぼ皆無。なのでほぼ初体験のつもりで、行って来ます。
まずは前回と同じ、横浜駅東口のバスターミナルから「神奈中(かなちゅう)バス」の、今回は「港61」系統に乗り込む。
ターミナルを出ると左折し、JR根岸線の線路を潜ったあと再び左折して、線路沿いに走ることまで前回と同じだった……と、言うか、その後もずっと同じルート。とうとう前に降りた、「横浜橋」バス停にまで来ちゃいました(苦笑)
実は前回、乗った「横43」系統でもそのまま乗ってれば、弘明寺まで行けたみたいですね。ただ、両者は途中で大きく分かれて、「港61」系統は横浜市営地下鉄の弘明寺駅。「横43」系統は京急本線の弘明寺駅前に着く。せっかくだから違う路線に乗った方が楽しいですからね。こっちに乗って正解なのだ、と自分に言い聞かせる。
横浜の商店街は、アーケードがお好き?
さてバスを降りると、本当に目の前が地下鉄弘明寺駅の入り口でした。そして目を転じれば、バス通りを渡った向こう側がもう「弘明寺かんのん通り」の入り口。立派なアーケードが目を引きますね。しかし前回の「横浜橋」と言い、横浜の商店街ってアーケードがお好きなのか知らん?
いよいよ商店街に足を踏み入れます。垂れ幕に大書きされた○に「ぐ」の字が笑わせますね。「弘明寺」を「こうみょうじ」なんて読んで欲しくない、地元民の思いの表れなのか知らん(笑)?
邪推はさておき、周りを見渡すと、とにかく人通りが多い、多い。やっぱりここも、地元の生活に根付いた商店街なんだなぁ、って感じ。
ただ、こっちの方が老人の通行率がより高いように感じた。それだけ長いことここに住んでる人が多い、ってことなのかな。
途中、商店街は大岡川を横切るんだけど、架かってる橋は「観音橋」。でもすぐ横に隣接して歩行者専用の「さくら橋」というのも架かってて、欄干に連なったベンチには、人がずらりと座ってました。こりゃ地元の人にとっては格好の交流の場でしょう。老人にとっても住みやすい街だろうなぁ、と納得。昼間っから営業してるスナックもあって、中からはカラオケの元気な声が響いてました(笑)。
寿司屋さん、喫茶店、中華料理店……。アーケード通り沿いにも飲食店はたくさん並んでるんだけど、両側の、路地にちょっと入ったところにも店の看板がちらほら見える。あぁ、あっちにはうどん屋さんがあるみたいだぞ。看板が覗くたび見に行くモンだから、なかなかメイン通りを先に進めない。
そしたら何と、「ベトナムからきたサンドイッチ(バインミー、というらしい)」の幟(のぼり)を発見。へぇ〜、それは面白い。早速、店先を覗きに行って、更にびっくり。何と、手前にあったのもベトナム料理店だったんですよ。ベトナム料理の専門店が2店、並んでる。これ、滅多に見られない光景じゃないでしょうか? 弘明寺ってベトナムの人を惹きつける何かあるの!?