「香り焼肉バインミー」を齧りながら想像したベトナムの文化
てなわけで、入りました『Banh Mi COBA』。
細長い店内、奥の方に家族連れらしい客がいたので、手前の、外の見えるカウンターに着いた。メニューを見てみると、バインミー以外にもビーフンやチャーハン、チャーシュー入りおこわ等など、美味そうなもの一杯。また、バインミーにも色んな種類がある。色々、迷った挙句、「香り焼肉バインミー」(850円ナリ)を注文した。
すると、出て来たのが、これですよ!
日本でサンドイッチ、って言ったら食パンに挟んでるのを思い浮かべるけど、こっちのパンは齧ってみたら、かなり固かった。フランスパンみたい、って思って、気がついた。ベトナムって元々、フランスの植民地だったわけやん!? その名残り、ってことか。
中は、チャーシューっぽい厚切り香味肉がたっぷり。それ以外にも、キャベツやニンジンなどの細切りにパクチーも一杯で、食べ応え十分だ。いやぁさすがエスニックの味わい満載です。メニューに「ベトナムのストリート・フード」って書いてあったけど、なるほどあっちの若者は、これを食べながら街を歩いたりしてるんだろうなぁ、とその姿が思い浮かぶようだった。
ただ、パンが固いし肉もたっぷりなので、オッチャンには顎が疲れる(汗)。
ふと見ると、奥の家族連れはどうやら店の一族のようで、言葉が日本語じゃない。中の小さな子供が、退屈したらしくこちらに駆け足で来て、そのまま外に出て行ってしまった。慌てたお母さんが追い掛けて、連れ戻して来た(笑)。
いいなぁ。庶民的で、ほのぼのしてて。
古刹の、歴史ある門前町に、ベトナムから来た人達が住み着いてる。既に街の一員として定着してる。
横浜という町の懐の深さをまた一つ、垣間見たような気分になりました。
西村健
にしむら・けん。1965年、福岡県福岡市生まれ。6歳から同県大牟田市で育つ。東京大学工学部卒。労働省(現・厚生労働省)に勤務後、フリーライターに。96年に『ビンゴ』で作家デビュー。2021年で作家生活25周年を迎えた。05年『劫火』、10年『残火』で日本冒険小説協会大賞。11年、地元の炭鉱の町・大牟田を舞台にした『地の底のヤマ』で日本冒険小説協会大賞を受賞し、12年には同作で吉川英治文学新人賞。14年には『ヤマの疾風』で大藪春彦賞に輝いた。他の著書に『光陰の刃』『バスを待つ男』『バスへ誘う男』『目撃』、雑誌記者として奔走した自身の経験が生んだ渾身の力作長編『激震』(講談社)など。2023年1月下旬、人気シリーズ最新作『バスに集う人々』(実業之日本社)を刊行。