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塩、味噌、豚骨……さまざまなおいしさがあるが、DNAに刻まれた、食べ慣れた味だからだろうか。気がつけば醤油味をすする自分がいる。今回は、今の醤油ラーメンの原風景とでも言うべき老舗の、それも今なお楽しむことができる美味を紹介します。東京・神田の『栄屋ミルクホール』です。

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『栄屋ミルクホール』店主:高橋栄治さん

『栄屋ミルクホール』店主 高橋栄治さん

旅行会社などの会社員を経て48歳で家業を継いだ。店はもともと神田司町で日本蕎麦屋をしていたが、戦後の1945年に隣町の神田多町で甘味と軽食の食堂を開業した。1955年頃は当時珍しかったテレビを置き、相撲やプロレスを観るため店の外まで客があふれたとか。時代の流れでラーメンとカレーの店に。旧店は昔の面影を残す建物が名物だったが、立ち退きで現在地に移転した。

2022年2月に再開、神田で受け継がれる東京ラーメンの原風景

2022年2月、あの東京ラーメンの老舗『栄屋ミルクホール』が神田で再開したとニュースで知った時、心から安堵した。それは昭和のエアポケットのような稀有な店が立ち退きで閉店してからわずか4か月後のことだった。

「実は神田で移転先が見つからなければ店を辞めようと思っていたんです。戦後からずっとこの街でやってきたからね。たまたま物件を紹介されて本当にラッキーでした」

店主の高橋栄治さんがホッとした表情で当時を振り返る。48歳の時に脱サラで家業を継いで27年。年齢のこともあるし、その選択肢も当然だろう。けれどこうも思う。長く愛される店というのは、危機の度に何か見えない力が動くのではないか。80年の歴史が宿る味が同じ神田で繋がれた小さな奇跡……醤油ラーメンの原風景のような一杯を前に、にわかに姿勢を正す。

『栄屋ミルクホール』の店内
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おとなの週末Web編集部
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