国内外のアーティスト2000人以上にインタビューした音楽評論家の岩田由記夫さんが、年末に振り返りたくなるような音楽を紹介します。今回、主に取り上げるのは、ザ・ビートルズと、ザ・ローリング・ストーンズ。1960年代から世界で聴き続けられている2大ロックバンドのアルバムに触れながら、音楽の現状と未来を俯瞰します。
マダガスカル島の「逆進化」
マダカスカル島の野生トマトの中に「逆進化」した品種があるということを最近のニュースで知った。いわゆる、先祖返りというべきか。古代の品種に備わっていた毒性化合物が含まれているのだという。虫除けではないかなどの考察が、その記事には載っていた。
私たちは何となくすべての生物が進化していると思い込んでいるが、環境に合わせて、より未来へ対応すべく、逆進化することもあるのだとこのニュースは教えてくれた。逆進化は退化ではない。未来を見据えた現状からの進化なのだ。過去の中に未来があることも多々あるのだ。
ルーツを知っている者の強み
「逆進化」という言葉から連想したのだが、現代の音楽の世界にも、過去を知って、過去のスタイルを取り入れ、現状を変えることで、結果的に進化を果たすという状況はあるのではないだろうか。この「逆進化」を知ったアーティストだけが歴史に名を残せるとさえ私は思う。ルーツを知っている者、ルーツを取り入れた者だけが“偉大”という形容を獲得できると考えるからだ。
そんなことを頭の中に浮かべていると、現在、人気を得ている若いミュージシャンたちが、50、60年後に“偉大” と形容されることはまず無いのではないかとも思えてしまう。多くの若いミュージシャンたちは、マーケティングのような現在を観ただけで曖昧に音楽を制作しているように思えてならない。



