中世には貴族が流された絶望の「流刑の地」として、江戸時代には欲望が渦巻く世界最大級の金山としてその名を歴史に轟かせた佐渡島。独特の文化や自然が残る日本海最大の離島を、文豪・太宰治は、小説で「死ぬほど淋しい」と綴ったけれど実際どうなのか? 長年の謎に答えを出すべく北から南まで6日間かけて一周しました。
第1話では新潟から佐渡島へ渡るカーフェリー「おけさ丸」のお得な情報と船内の様子をご紹介します。
なぜ佐渡に来たのであろう
佐渡は、淋しいところだと聞いている。死ぬほど淋しいところだと聞いている――。
太宰治の小説『佐渡』にこんな一節がある。文壇の巨匠が2回も「淋しい」と繰り返し、「死ぬほど」と念押ししているのだ。初めて『佐渡』を読んだのは中学生の時だったが、いったいどれだけ淋しい島なのだろうと想像をめぐらせた。荒々しい大地に冷たい風が吹いていて、人々はうつむき、夜は暗くて灯も見えない……とか?
ところが、そんな淋しいところだと聞いている佐渡に敢えて、小説の主人公の「私」は、定期船の「おけさ丸」で新潟から渡るのである。天邪鬼気味の「私」は上陸した後も「なぜ、佐渡へなど来たのだろう」と、ブウブウ文句を垂れながら島をまわるのだ。
当時の私にはまだ太宰治特有の自虐的な面白さがさっぱり理解できなかったため、「それなら暖かい南の島にでも行けばいいのに」と首をひねるばかりであった。
一生に一度は行くべき島だよ
さてそれから幾年月が過ぎ、その「死ぬほど淋しい」佐渡へ、私は行くことになった。トキが見たかったからではない。金山が世界遺産になったからでもない。金北山(標高1171m)という素晴らしい山が佐渡にはあるのだと山仲間に教えてもらったからだ。
日本各地の山を登り歩いている彼女は「金北山は花がいっぱいで、日本の山ベスト10に入るくらいよかった」と力を込めて語るので、私は聞いた。
「山は良くても、佐渡は死ぬほど淋しいところなのでしょう?」
「誰が言ったの?」
「太宰治(の小説)」
「……あの太宰治だからでしょう。故郷の青森以外はだいたい文句ばかり言っている。佐渡はね、魚も酒も米も旨いし、景色はいいし人もいい。お祭りも多いし、山から下りても佐渡はぜんぜん淋しくなどない」と真顔で反論され、「一生に一度は行くべき島だよ」と猛烈に推してくる。
そして財布からレシートを取り出し、裏紙に何やら文字を綴ってくれた。山のルートを書いてくれたのかと受け取ったら、彼女が佐渡で飲んで旨かった日本酒の銘柄だった。


