クラクションで目が覚める
月も高く上がり、ようやくお開きとなった。私は小屋に戻ると、硬くて殺虫剤臭いベッドに倒れ込んだ。アフリカはどこも暑いと思い込んでいたけれど、高原のサバンナは涼しくからっとしていて夜は過ごしやすい。
むしろ寒いくらいで、ザックの中からフリースを引っ張り出した。横になって犬の遠吠えを聞いているうち、いつの間にか深い眠りに落ちていた。
どのくらい寝ていたのか、パッパーッ! という、バスのけたたましいクラクションが鳴り響いて飛び起きると、もう夜明けで東の空が明るくなり始めていた。
その日のバス旅も、パンク1回とエンジントラブル1回、お客の夫婦の大げんかで停車1回と、いつも通りの通常運転であった。
無事、キリマンジャロで有名なふもとの小さな村、モシに辿り着いたのは、翌日の朝。バスを降りて初めて見たキリマンジャロは、私の想像とは違って、富士山の頭を途中でスパンと切ってしまったような、ずんぐりむっくりな形をしていた。
次回、キリマンジャロコーヒーを探していたら、ひょんなことから山に登ることに!? 中編もお楽しみに。
文/白石あづさ