時代が変わっても会える場所がある
いつの時代にもヒーローは存在する。本誌で昭和特集を作りにあたって考えたのが、まずは「仮面ライダー」と「秘密戦隊ゴレンジャー」だった。こちらは次回詳しく紹介させていただくとして、プロレス好きとしては、そこに「初代タイガーマスク」を加えたい。
初代タイガーマスクに会うというのは、なかなかハードルが高いが、マスクなら会える! と向かったのが、巣鴨にある『闘道館』。プロレス・格闘技グッズ専門店だ。
熱き思いが込もったグッズが多数揃う『闘道館』
1階は雑誌・書籍、DVDなど資料系、2階はマスク、フィギュア、Tシャツほかグッズ系の2フロアで展開。一部委託はあるものの99%は買取したものを販売している。ファンや関係者から届くそれは、ファン垂涎のお宝だらけ!
どんな商品があるのか、その答えはもちろん……トランキーロ、あっせんなよ! ってことで、今回の目的はタイガーマスク。2階へ歩を進めた。
プロレスラーのマスクに価値をつけるということ
階段を上がるやいなやズラリと並ぶタイガーマスクが目に飛び込んだ!
初代タイガーマスクはもちろん、新日本プロレス退団後、UWFのリングに上がった際に被っていたスーパー・タイガーに加えて、2代目(三沢さん!)、現在新日本プロレスで活躍中の4代目など、レプリカから本人使用済までさまざまなタイガーマスクが揃っている。
館長の泉高志さん曰く、マスクの人気どころはやはり初代タイガーマスク、そしてミル・マスカラス。この2大巨頭なんだそう。
そのミル・マスカラス、お店を入って目の前にあるショーケースに展示されていたのが相当な貴重品だった。
50年前に初めて来日した際、長いキャリアで唯一のアントニオ猪木とのシングルマッチで被っていた一枚だ。価格がなんと275万円!(売約済) 記念すべき初来日、唯一の猪木戦での使用、伝説のマスク職人・ロペス1世さんの制作という付加価値が合わさって、これだけの値がついている。
1枚しかない歴史的なマスクにはじめて金額をつける。それはそのマスクが持つ多角的な価値をしっかり見定め評価を下す、まさに鑑定眼を問われる仕事だ。
お店に買取にやってきたマスクは本人が試合で着用したものか、それともレプリカか。見分けるのは至難の業である。お客さんに教えてもらうこともあれば、映像や雑誌、書籍などの資料を食い入るようにして見た。そうして知識と経験を積み重ねることで目利きが鍛えられていった。
価格の相場が見えてきたころ、大きなターニングポイントがやってきた。お店に“虎ハンター”小林邦昭さんに破られたタイガーマスクが2枚入荷したのだ。
イチプロレスファンとしては、小林邦昭さんが破ったタイガーマスクがどれほどすごいものか痛いほどわかる。しかし、破れているものに対していくら値をつけるべきか。
単にマスクの状態としてみると、被ることもできない悪い状態だが、その破れ方は小林邦明が引き裂いた指の痕跡がハッキリ残っているプロレス史に刻まれた爪痕といっていいものだ。
タイガーマスクは何度も小林邦昭さんに破られてきたイメージが強いが、実際には数回しかない。その歴史的価値を選んだ。泉館長は250万円と300万円の値を付けた。