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「地元遺産」と言っていい貴重な存在

それにしても、どの料理も安くて量もたっぷり。家賃代がかからないとはいえ、コロナ禍で大変な時期だけに心配になってしまう。余計なお世話だけど。

「他の店と同じことをやっていても商売はダメなんですよね。やはり個性がないと。プリンアラモードで儲けは出なくても、一緒に飲み物や食事を注文してくれることが大きい。それに、楽しみに来てくれる学生さんから高いお金は貰えないでしょう? 安く提供して喜んでもらって、何度も、たくさん来てほしいんです」

心配無用なのは、ひっきりなしに訪れるお客さんの笑顔を見ていればわかる。テレビや雑誌取材の影響で、近年は若い人も増えたそうだ。モーニングもランチも、スイーツも、ちょっとお酒一杯でも。どんな場面も気軽に使える雰囲気と懐の深さは、夫婦のお人柄そのまんま。長年通って来る常連客はもちろん、ふたりを慕って30年近く勤務する従業員や、親子2代揃ってアルバイトしていたスタッフもいるとか。

ピザも人気

昭和の喫茶店が少なくなる中、この店の存在は地元遺産のひとつだと言いたい。培ってきた年月の長さにおごらず、挑戦や変化を恐れない夫婦の柔軟な姿勢には、今の時代に学ぶことも多い。もしあの日、“不思議の国”の扉を開けていなければ、名物焼きカレーの開発秘話を聞くことも、豪快なプリンアラモードに歓喜することも、店の歴史や、過去の苦労を知ることもなかった。知ると知らぬは、ありがたみも、味わう楽しさも違う。好奇心はやっぱり大事。

あなたには気になる店がありますか。ご無沙汰している店はありますか。あの店もその店も、扉が開けられるのをきっと待っている。世の中に永遠はないから、今こそ訪れてみてはいかがだろうか。

文・撮影/肥田木奈々(ひだき・なな)

『チェリー』の店舗情報

[住所]東京都大田区蒲田5-19-8
[電話]03-3735-3521
[営業時間]月〰土曜日は9時~21時(20時LO)、祝日は9時~17時
※新型コロナウィルス感染拡大の影響で営業時間は異なる場合があります。
[休日]日曜日
[交通]JR京浜東北線ほか蒲田駅東口から徒歩3分

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肥田木奈々
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