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そもそも宮崎ラーメンとは

『チャーハン専門店 焱(えん)』の「かにチャーハンM」は、間違いなく巷の中華料理店のチャーハンよりも美味しかった。が、この連載は「チャーハンの旅」ではなく「チャーラーの旅」。せっかく宮崎まで来たのに収穫ゼロでは名古屋へ帰れない。

そんな中、出張一日目の夜に食事をした宮崎県在住の友人、ウチムラ君から

「サイドメニューにチャーハンを出すラーメン屋があるのを思い出した!」と連絡をもらった。しかし、名古屋への飛行機の出発時間は14時。チャーラーを食べて空港へ向かうにはギリギリだ。そこで、11時の開店と同時に入店して12時に店を出ることにした。ありがたいことにウチムラ君も同行してくれるという。

『風来軒 加納本店』。ここ本店以外にも宮崎市内に2店舗展開している
『風来軒 加納本店』。ここ本店以外にも宮崎市内に2店舗展開している

それがJR日豊本線加納駅の近くにある『風来軒 加納本店』。15分ほど早く到着すると、店の駐車場で待っていたウチムラ君が開口一番、

「ここは宮崎ラーメンの中では新しい方だけど、ここのラーメンは中毒性があるんだよね。20代の頃は週3、多いときで週5で通うほどハマっていた」と、語った。

そういえば、私は宮崎ラーメンについて何も知らない。それどころか、博多と熊本、鹿児島、それぞれのラーメンの違いは何となくわかるものの、博多と久留米はまるで区別がつかない。生まれも育ちも宮崎のウチムラ君に聞いてみると、

「豚骨スープだけど、博多ラーメンのような濃厚さはない。基本的にあっさり系の豚骨が宮崎ラーメンの特徴かな。でも、ここ『風来軒』は超こってり。若い頃に通っていたのは、よその店にはない濃厚さを求めていたからかも」とのこと。

ほんのりと甘い豚骨スープと相性の良いチャーハン

おっと、店内からスタッフが出てきて、のれんを出した。どうやら開店したようだ。テーブル席へ案内され、私は「とんこつ」(780円)と「チャーハン」(610円)、友人は「とんこつ」よりもややあっさりした「プレハブ」(760円)を注文した。

「ちなみに『プレハブ』というメニュー名は、プレハブ小屋で営業していた創業当時の味を再現したのが由来。さっきの宮崎ラーメンの話だけど、『きむら』と『栄養軒』が昔から2大宮崎ラーメンと言われていたんだけど、こってり系の『風来軒』の登場によって、一概に宮崎ラーメン=あっさり系とは言えなくなったかもしれない」と、ウチムラ君。

さらに、彼は地元でチャーラーを食べた記憶がないという。中華料理店でもチャーラーのセットがないし、サイドメニューにチャーハンを出しているラーメン店も少ないので無理はない。宮崎ではチャーラーという文化が存在しないかもしれない。

「とんこつ」(780円)。具材は、トロトロに煮込んだチャーシューとメンマ、海苔、ネギ
「とんこつ」(780円)。具材は、トロトロに煮込んだチャーシューとメンマ、海苔、ネギ

そんな話をしていると、注文した「とんこつ」が運ばれた。もう、見るからにコテコテ。スープの色は、京都の『横綱ラーメン』に似ている。そういえば、私も若い頃は深夜1時とか2時に『横綱ラーメン』を食べてもまったく平気だった。正直、五十路の胃腸にはキツイが食べるしかない。

ってことで、まずはスープをひと口。あれ? たしかにこってりだけど、口当たりがマイルドでほんのりと甘い。じっくりと豚骨を煮込んでスープを抽出したことが伝わってくる。たしかにこれはクセになる味だ。

次にやや太めの麺を箸でリフトして啜ってみる。おおっ! モチモチとした食感といい、鼻から抜ける小麦の香りといい、濃厚なスープに負けていない。

年をとったこともあり、こってり系の豚骨ラーメンからすっかり遠ざかっていたが、新鮮な旨さを感じた。

「チャーハン」(610円)。このシンプルさには理由があった
「チャーハン」(610円)。このシンプルさには理由があった

おっ、今度はチャーハンが運ばれた。具材はチャーシューとネギ、ニンジン、卵とシンプル。昼の時間帯は、事前に作り置きしたチャーハンを炒め直して提供する不届きな店もあるが、ここはイチからちゃんと作っている。

味付けはチャーシューのタレや醤油ではなく、塩・コショウがメイン。しかし、このシンプルさが豚骨スープの甘さを中和させて、より美味しく食べられるのだ。うん、実によく考えられている。

今回、私はフルサイズの「チャーハン」を注文したが「ミニチャーハン」も用意している。値段は390円、と気軽に注文できる。『風来軒』はもっとチャーハンを推してもよいと思う。そして、チャーラー不毛地帯の宮崎でチャーラーを文化として根付かせてほしい。

食べ終わった後、ウチムラ君にお礼を言って宮崎空港へ向かった。

取材・撮影/永谷正樹

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永谷正樹
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