アートと結びつけた「缶ワイン」で若者にアピール
私の目を引いたド派手なパッケージデザインについてもデ・ハーン氏の考えを聞いてみよう。
「ボトル詰めのワインに貼られたラベルには、伝統や家族、テロワール(ブドウの育つ土地の気候・風土など環境全体を表す言葉、「地味」と訳されることもある)などが表されることが多いですが、カンヴァスでは缶という異なる場で、ワインとアートを結びつけ、従来のワイン愛好家ではない消費者、特に若者にアピールしたいと考えました」
今回のイラストを描いたのはデ・ハーン氏の友人でもあるイギリス人デザイナー、マイケル・ハワード氏。モデルになっているのは、ハワード氏の友人で、オランダ人、イギリス人、日本人であるという。3つの缶を並べると、ポップでアーティスティックであるという印象に加え、「多様性尊重」というメッセージも立ち上がってくるように見える。「ラベルではないこと」は缶ワインの大きなアドバンテージなのかもしれない。
缶から直接飲んだ後はグラスで…
試飲してみると、白(品種はガルナッチャ・ブランカ)は梨のような香りと味わい、ロゼ(ガルナッチャ)はアセロラやハーブの香り、赤(ガルナッチャ)はイチゴやチェリーの香りがあってジューシーだった。3つに共通するのは飲みやすさ。アルコール度数13〜14%と低くはないが、それを感じさせない軽快さがある。
デ・ハーン氏に、缶ワイン用に何か調整した点はあるか、と訊ねてみたが、「中身はボトルに詰めるワインと何も違わない」との回答だった。缶から直接飲んだ後、グラスに注いで飲んでみたが、やはりグラスで飲んだ方が「ワインの味がする」と思えたのは、グラスがワインの香りを開かせたから? あるいは、ワインはグラスで飲むべきものというこちらの先入観が作用したのだろうか?
缶ワインについてはまだまだ興味深い話がある。が、続きは次回ということにしよう。
ワインの海は深く広い‥‥。
Photo by Yasuyuki Ukita
Special thanks to De Haan Altes、株式会社モトックス
浮田泰幸
うきた・やすゆき。ワイン・ジャーナリスト/ライター。広く国内外を取材し、雑誌・新聞・ウェブサイト等に寄稿。これまでに訪問したワイナリーは600軒以上に及ぶ。世界のワイン産地の魅力を多角的に紹介するトーク・イベント「wine&trip」を主催。著書に『憧れのボルドーへ』(AERA Mook)等がある。