お笑いコンビ「ティモンディ」前田裕太さんの、「目指せ、理想の大人」をメインテーマに掲げた連載コラム。30代を目前にした前田さんが「大人」を目指して過ごす日々を、食・趣味・仕事など様々な視点で綴ってくださいます。連載は、第1・3木曜日に更新です。「(理想の)大人ってなんだろう?」を一緒に考えながら、前田さんの成長を見守りましょう! 今回から、「趣味」編が始まります。日々のストレスと付き合っていくために前田さんが見出した道は、とある趣味に没頭すること。皆さんも、自分にとっての「ストレス解消法」に思いを巡らせながらお楽しみください!
画像ギャラリー美味しいものを食べても、ストレスは「解消」されないのだ
大人とは、ストレスを自分自身で消化できる人。もしくは解消する手段を持っている人を指すと思う。他人に頼らずとも、自身をコントロールができるのが、大人だ。
その点において、私はまだまだ子供。
ここで駄文に付き合っていただいている読者諸兄姉はお分かりの通り、ギャアギャアと大したことないと世間一般では言われるようなことを目一杯叫んでいる。
もう30歳も目の前。そろそろ大人にならなければならない。
ってか、そういう意味での大人なんて世の中にほぼいないような気がする。大体の人間はストレスをパンパンに膨らませて破裂寸前。私も含めて大半はストレスを自分じゃ消化しきれないベビーちゃんではないだろうか。
ただ、自分の機嫌を取るというのは、簡単に聞こえるけれど、その本質はとても難しい。
仕事で思ったよりも笑いが取れなくて、ああ、あの時になんであのワードが出てこなかったんだ、と憂鬱な気分で家路に向かっている途中、そりゃ美味しい食事を取れば、その瞬間は幸せな気分になるけれど、旨味を口の中で感じることでその問題の原因が解決される訳ではない。
ご飯を食べて面白くなるならば、ギャル曽根とジャイアント白田の二大巨頭がお笑い界を席巻しているだろう。
食事は生活を豊かにして、刹那であればストレス発散になるけれど、食べ終わってしまえば、また同じ原因に悶々とする夜がやってくる。
食事のみでは私の場合、ストレスを消化しきれないのだ。
ストレスと付き合っていくために見出した「油絵」の世界
寝て嫌なことが忘れられる訳でもない。
滓を溜め込んでは吐き出し、幸せと思えない日々を踠いている中、それでも、楽しい毎日を過ごせるように、苛立ちや妬み嫉みを如何にかして消化できないか模索していたのだけれど、最近はその手段として、趣味に手を出すようにしている。
趣味は良い。
それを考えている間は、現実のことを忘れられるし、趣味に割いている時間によって、悶々タイムが物理的に短くなる。
だから、現実を忘れることのできる趣味がいい。
そこで私は、油絵を描くことに着手した。
諸兄姉は油絵をご存知だろうか。学校の授業でもお馴染みの水彩画等と違って、絵の具を油で溶いて、キャンバスに描いていく。
その大きな特徴は、油で描くが故に、乾くまで時間がかかる点にある。乾くまで時間がかかるということは、つまり、間違えてしまったら何度でも描き直しがきくのだ。
失敗を無かったことにできるって、革命ではないだろうか。
ただでさえ上手くいかない現実において、何度もやり直せる、リセットができる、という気楽さと快感を油絵は与えてくれる。
加えて、油絵は、他の絵に比べて、さらにその上から絵の具をどんどん塗り重ねることができる。
最初は、太陽を描いていても、途中からリンゴに描き替えることだっていいし、なんなら自分が気に食わなければ、背景と同じ絵の具で塗りつぶすことだってできる。
現実の仕事も、こんな風にできたらなあ。
「今のツッコミなし!!」と言って消せる訳ないけれど、それが許されるのが油絵。
絵の具を混ぜたり、キャンバスに色をのせている時は、完成させたい絵のことを考えていて、その瞬間は、一切仕事のことなんて頭から微塵もなくなるし、描いている間は精神衛生も良い。
ストレスの解消というより、長い時間ストレスの原因から目を逸らす行為でしかないけれど、それでも、これからの長い人生、まじまじとストレスの原因と目を合わせて対峙するだけではなく、逃げ道としてたくさんの道を用意しておくのも大人であると言って良いだろう。
前田裕太(まえだ ゆうた)
1992年8月25日生まれ、神奈川県出身。愛媛県の名門、済美高校野球部の同期である高岸宏行とのお笑いコンビ「ティモンディ」のツッコミ担当。趣味はサッカー観戦、読書。テレビ番組で披露した絵の実力も話題になるなどマルチな活動で注目を浴びている。コンビの野球経験をいかしたYouTubeチャンネル『ティモンディベースボールTV』は登録者数25万人超え。