山下達郎へのラヴソング
1981年秋、アルバム『PORTRAIT』発表。次の『VARIETY』発表が1984年春。この間、約2年半。竹内まりやは音楽シーンから遠ざかっていた。FM東京での雑談はこの間のことだ。でも2年半は今となっては、その後のキャリアの大切な充電期間だったと今は思える。大ヒットするアルバムだけが素晴らしいと決して思わないが、『PORTRAIT』はオリコン・アルバム・チャート14位だったのに対し、『VARIETY』はNO.1。『PORTRAIT』以降のすべてのオリジナル・アルバムはチャートのNO.1になっている。山下達郎との結婚は竹内まりやをミュージシャンとしてもスケールアップさせたのだろう。
1984年、アルバム『VARIETY』発表の15日前、シングル『もう一度/本気でオンリーユー(Let‘s Get Married)』が4月10日にリリースされている。これは推測だが、“本気でオンリーユー(Let‘s Get Married)”は、山下達郎へのラヴソングだと思う。と同時に結婚を考えている彼女のファンへの優しく肩を押す曲だったのだろう。
岩田由記夫
1950年、東京生まれ。音楽評論家、オーディオライター、プロデューサー。70年代半ばから講談社の雑誌などで活躍。長く、オーディオ・音楽誌を中心に執筆活動を続け、取材した国内外のアーティストは2000人以上。マドンナ、スティング、キース・リチャーズ、リンゴ・スター、ロバート・プラント、大滝詠一、忌野清志郎、桑田佳祐、山下達郎、竹内まりや、細野晴臣……と、音楽史に名を刻む多くのレジェンドたちと会ってきた。FMラジオの構成や選曲も手掛け、パーソナリティーも担当。プロデューサーとして携わったレコードやCDも数多い。著書に『ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち』など。 電子書籍『ROCK絶対名曲秘話』を刊行中。東京・大岡山のライブハウス「Goodstock Tokyo(グッドストックトーキョー)」で、貴重なアナログ・レコードをLINN(リン)の約400万円のプレーヤーなどハイエンドのオーディオシステムで聴く『レコードの達人』を偶数月に開催中。