発芽が勝負! ニンジンの育て方
――ニンジンを育てるのは大変ですか?
大貫:ニンジンは発芽さえしてしまえば、あとは放っておけるので比較的作りやすいほうだと思います。いちばん大変なのは発芽するまでで、種を蒔くタイミングが非常に重要です。水分量や温度にはかなり気を遣います。
――資料によると、原産地のアフガニスタンは冷涼で乾燥した山岳地帯だったから、寒さに強い代わりに、厳しい環境で育つため本当にいい条件でしか発芽しないようになっているとか。
大貫:特に秋以降収穫するニンジンは気を遣います。7~8月に種を蒔きますが、夏場は暑いし、土が乾燥してしまうんです。だから散水チューブを用意したり、水があるところで栽培したり、かけた水が蒸発しないように日除けのネットをかけたりして、発芽するまではしっかりと水分量がある状態にしておきます。1日乾かしてしまうだけで発芽しないこともあるので。
岡田:そんなに繊細なんですね。
大貫:発芽するのに必要な水分を吸う力がニンジンは弱いんです。農家さんによっては一気に何十万円分も何百万円分も蒔くので、発芽が失敗するとすべて台無しになってしまいます。
――発芽しないというのは、種にとってどういう状態なんですか?
大貫:夏によくあるのは、種を蒔く位置が浅すぎて乾燥してしまい、カラカラになって死んでしまうパターンです。
――発芽しない種は死んじゃっているんですね。
大貫:ニンジンの種は本当に小さいんです。そのため、蒔きやすいように種を養分などでコーティングしているものも売っています。でもコーティングしてあると、より水分が必要になります。
――それはコーティングのせいで、種に水が滲み込みにくいということですか?
大貫:そうです。水分が足りないと、芽が出てきたとしても表皮を割るパワーがありません。逆に水分が多すぎてしまうと、割れて出てきても、夏の暑さで蒸れて腐ってしまいます。
種を蒔いたところに台風が来たら、水浸しになってしまったり、種だけ流されたりと大変です。
岡田:それは悲しい。
大貫:特に夏は雑草も多く生えてきます。一般的な農家さんは除草剤などをうまく使いながら育てていると思いますが、僕は有機農業なので農薬を使わないため、夏に種を蒔く秋冬獲りのニンジンに関しては「太陽熱マルチ処理」という方法をとります。
梅雨明けくらいに畑の表面に透明のマルチシートを貼り、そのまま2週間から1カ月くらい放置して日光を浴びせます。暑い日だとシートの下の土は70℃ほどに熱くなるんです。そうすると地表から5cmくらいのところまでは、雑草の種の多くが死んで生えにくくなります。
そこにニンジンの種を蒔き、水分を管理して発芽してくれれば、あとはほったらかしで大丈夫です。
――ニンジンは何日くらいで発芽するものなのですか?
大貫:季節によりますが、1~2週間程度です。
――発芽するまで毎日ハラハラしそうですね。
大貫:そうですね(笑)。春ニンジンに関しては、1~2月頃に種蒔きします。寒い時期なので、今度は黒いシートで覆って温度を保ちます。
――温かくして発芽を促す感じですか?
大貫:はい。30℃程度にならないと発芽しないので、ビニールで覆って温めてあげます。小さなビニールハウスのような感じですね。
――ニンジンってどう育つんですか?
大貫:下に下にと育っていきます。
――あぁ。根菜ですものね!
大貫:頭の部分が少し土から出て、葉っぱがふさふさと生える感じです。土寄せをしないとそのポコッと出た頭の部分が、寒さで赤や紫、緑っぽくなったりするんです。
岡田:それは霜にあたってですか?
大貫:そうです。寒いので乾燥して、頭の部分がカサカサしてきちゃう。そうなると、市場などに出荷する農家は見栄えが悪くなるので土寄せをするんです。
岡田:単に見栄えの問題なんですか?
大貫:そうです。やっぱりオレンジ一色だときれいなので市場での需要が高くなります。