浦和 ブランドうなぎに格安重まで。うなぎの懐の深さに浸る
『うなぎや せきの』@浦和
幻の四万十鰻 清らかな身の旨さを十四代や而今などの希少な日本酒と共に
たまの贅沢ならば、えいやと電車に飛び乗って浦和まで行ってしまおう。店主の関さんは問屋から修業を始めて、うなぎ一筋50年。今まで途方もない数を捌いてきた彼が、並ぶもの無しと惚れ込んだのが、「四万十鰻」だ。
曰く「自分も泳ぎたくなるくらい綺麗な池」で、むやみに肥え太らせず、一年半の時をかけて育てられたそれは、味が濃く、口どけの良い清らかな脂を身にたたえる。香りだって山椒を振るのをためらうほどに爽やかだ。
四万十鰻うな重(並) 5280円
焼き上がりを待つ間に気分を盛り上げてくれるのが、ヒレや肝などのうなぎ串に、氷見の漁場から届く日ごとの刺身などの一品料理。さらにカウンター奥の冷蔵庫に目をやれば、入手困難な日本酒のボトルがズラリと並び、中でも十四代や而今の揃えは専門店を凌ぐほど。こんな店に出合えた至福の余韻に、帰りの車中もずっと心の高揚が止まらない。
[住所]埼玉県さいたま市浦和区仲町2-2-6ライオンズマンション1階
[電話]048-678-3337
[営業時間]11時半〜13時半LO(金・土・日・祝のみ)、17時〜22時半(22時LO)
[休日]月曜日(祝日は不定休)
[交通]JR京浜東北線ほか浦和駅西口から徒歩7分
『うなぎ 和香』@浦和
コスパ、ナンバー1 2千円〜味わえる国産うな重に家族みんなで舌鼓
「いちばんこだわっているのは値段」と大真面目に語るのが店主の藤田さん。自宅の敷地内に建てられた、カウンター数席にテーブル2卓の浦和で最も小体な店だ。冒頭の言葉通り、うな重は2/3匹が乗った「竹」が2000円。しかもお新香と肝吸いまで付けるという大サービスだ。むろん、安かろう悪かろうでは決してない。
うな重特上 3200円
国産を活けで仕入れ、それぞれの身質を確かめながら丁寧に蒸して焼き上げる。重箱から立ち上る、えも言われぬ匂いにたまらず頬張れば、さらりとした甘みのあるタレが香ばしい身の風味を引き立て、粒立ち良く炊いたご飯をぐいぐい進ませる。この値段ならば特別な日でなくとも月に2度、3度。できたてを持ち帰って、家族みんなで楽しむのもいいだろう。
[住所]埼玉県さいたま市浦和区本太3-1-18
[電話]048-884-0649
[営業時間]11時〜13時半LO、17時〜20時LO
[休日]水曜日
[交通]JR京浜東北線ほか浦和駅東口から徒歩9分
『うなぎ 浜名』@浦和
素材と技が融合 共水うなぎの旨さを引き出す焼きに惚れ惚れ
重箱の蓋を開けた瞬間、艶やかなテリをまとったその姿に心を掴まれた。今年で45年目を迎えるというこちらの店主の腕前や丁寧な仕事ぶりが、均一で美しい焼き色に宿っているではないか。
うな重(中) 5800円
使用するのは、日本有数のブランド「共水うなぎ」で、生産者との取引は30年にも及ぶという。天然物にもひけをとらないと称されるその味は、力強い旨みがありつつも脂は甘く、でも重すぎない。炭火で3度タレに漬け焼きした身はふっくらと盛り上がり、気品に満ちた香気をまとう。
極め付きの素材と熟練の技が融合したその味に最後まで唸りっぱなし。このうなぎの持つ無垢な味わいを堪能するならぜひ白焼きも。昼も夜も仕込み分が無くなり次第終了のため、予約してから訪れよう。
[住所]埼玉県さいたま市浦和区仲町2-9-2 インフィニティうらわ1階
[電話]048-832-8790
[営業時間]11時半〜13時半LO、17時〜19時LO(土・日・祝は18時半LO)※うなぎが無くなり次第終了
[休日]火・水曜日
[交通]JR京浜東北線ほか浦和駅西口から徒歩10分
『うなぎ処 古賀』@浦和
あの老舗出身!店主の繊細な技が随所に光るうな重の名作
ここはカフェかビストロか。白を基調にした店内のうなぎ屋らしからぬ風貌とは裏腹に、焼き台の前に立つ店主の手さばきと張り詰めた眼差しは、職人の気迫に満ちていた。2009年に市内で開業し、2年前にこの地に移転。修業先をきけば、なんと都内でも指折りの名店『尾花』だという。
「最初の目打ちで味が決まる」と語るほど繊細な技を込めた身は、舌の上に乗せれば官能的な甘みを放ちながらホロリとほどけ、備長炭で焼きを入れた芳香が追いかけてくる。醤油をきりっと立たせたタレの風情もなんとも粋だ。
鰻重竹 5280円
常時仕入れる上質な国産のほか、タイミングが合えば特大サイズの中国産ブランド「青龍」や、鹿児島の実力ある養鰻家が育てた「横山さんの鰻」で作るうな重にも出合えますぞ。
[住所]埼玉県さいたま市浦和区常盤7-1-20
[電話]048-753-9986
[営業時間]11時半〜14時(13時半LO)、17時〜21時(20時LO)
[休日]水曜日
[交通]JR京浜東北線ほか北浦和駅西口から徒歩12分
素材か、技術か、価格か店選びの決め手に迷う
東京にいちばん近いうなぎの街。それが浦和だ。蒲焼き発祥の地とも言われており、今も十数軒が暖簾を出している。そんな中から今回選りすぐったのが、この4軒。
度肝を抜かれたのが『せきの』で出す「四万十鰻」だ。関東でも扱う店は数軒という希少な存在で私も初体験。そのケタ外れの旨さは上記記事をどうぞ。『浜名』は白焼きもうな重も「共水うなぎ」に限定。同じブランドを使う都心の店と比べれば、値段も少しだけ手頃に味わえる。
おそらく浦和でいちばん安いのが『和香』。国産物を使ってこの値段は超がつくほど良心的だ。『古賀』では焼きの技に惚れ惚れ。これほど美しいうな重は有名な老舗でもお目にかかれまい。
ハイレベルな店が街の各所に点在。さあ、どの店に行く!?
撮影/小澤晶子(ぬりや、中川楼、田村川魚店、うなぎ 川桝)、小島 昇(うなぎや せきの、うなぎ 和香、うなぎ 浜名、うなぎ処 古賀)谷内啓樹(小田原 柏又、鳥かつ楼、清風楼)、取材/藤沢緑彩(ぬりや 、中川楼、田村川魚店、うなぎ 川桝、小田原 柏又、 鳥かつ楼、清風楼)、菜々山いく子(うなぎや せきの、 うなぎ 和香、うなぎ 浜名、うなぎ処 古賀)
※2022年8月号発売時点の情報です。
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