両国には大江戸博物館に国技館、すみだ北斎美術館が。蔵前には隅田川にかかる厩橋、浅草橋には屋形船が数多く停泊する柳橋などなど。江戸時代に栄えたこのエリアには、歴史を感じさせるものが数多く残り、それらを見て回るだけでも楽しい…
画像ギャラリー両国には大江戸博物館に国技館、すみだ北斎美術館が。蔵前には隅田川にかかる厩橋、浅草橋には屋形船が数多く停泊する柳橋などなど。江戸時代に栄えたこのエリアには、歴史を感じさせるものが数多く残り、それらを見て回るだけでも楽しいエリア。食べ物に目を移せば、日本のブルックリンとも呼ばれる蔵前を中心として、おしゃれな店が続々と増えている。今回は、日中の散策途中で立ち寄りたいカフェ、散策後に舌鼓を打ちたい店を厳選して紹介します。江戸時代に想いを馳せ、モダンな味わいに満足。そんな散策はいかがですか?
昼 雰囲気まで美味しいランチ&カフェ
『Riverside Cafe Cielo y Rio(シエロ イ リオ)』 @蔵前
「空と川」という名を持つ開放感あふれる”街の洋食屋”
隅田川の風を存分に感じられるロケーションで楽しめるのは、フレンチ出身のシェフが繰り出す和のテイストも加えた料理。
鴨胸肉のローストランチ(スープ+パンorライス付) 1900円 ※価格は平日の場合
カモのローストに使用するのは栄養たっぷりに育て、身質がしっかりと味わいも濃厚な「マグレ鴨」。それを低温調理でやわらかく仕上げ、キャラメリゼしたハチミツと粒マスタードからなるコク深く甘じょっぱいソースと合わせれば、ご飯が進むことこの上なし。
ランチは日替わりと月替りがあり、平日と週末で内容や価格が異なる。魅惑のデザートも含めて、いろいろ試してみて。
[住所]東京都台東区蔵前2-15-5 MIRROR1階&3階
[電話]050-3503-8121
[営業時間]11時半~22時、土11時~23時、日・祝11時~22時(全てランチ15時LO、ディナー21時LO)
[休日]無休
[交通]都営大江戸線蔵前駅A7出口から徒歩2分
『両国イタリアン LEGATO(レガート)』 @両国
生産者の顔が見える、こだわりの食材をふんだんに
パスタには、老舗製麺所「浅草開化楼」特製の低加水パスタフレスカを使用。もちもち食感と噛むほどに香る小麦の風味の良さが特長だ。ソースは「富士幻豚」と「足利マール牛」をたっぷりの赤ワインで煮込んでおり深い旨み。
富士幻豚の極上ボロネーゼ 1650円
両者が絡まれば、まさにヤミツキになる美味しさだ。また「野菜をたくさん食べたい」という声に応え、特にランチのサラダは盛り盛りの太っ腹。どれも「作り手の思いをのせた料理を届けたい」と、食材は生産者に直接会いに行き仕入れるこだわりぶり。その姿勢にも拍手を送りたい。
[住所]東京都墨田区両国3-23-8
[電話]03-3634-5226
[営業時間]11時半~14時半(14時LO)、火~土18時~22時(21時半LO)、日・祝18時~21時(20時半LO)
[休日]月
[交通]JR総武線両国駅東口から徒歩2分
『my Chai(マイチャイ)』 @両国
香り立つスパイスがあと引く独創性あふれる、リッチなチャイ
チャイにハマった店主のアレンさん。アッサムティと北海道産ミルク、スパイスのバランスが絶妙なこのレシピにたどり着くまで、およそ1年半かかったのだとか。
(奥)マイチャイ 650円 (手前)クロワッサンワッフルセット +450円
シナモンやカルダモンなど8種類のスパイスは、すべて店でホールから砕いて使うのが信条。そして、加える順番や煮出す時間など、その工程はとても繊細なもの。その結晶がスパイスがしっかりと主張しつつも、実に調和が取れた見事な一杯。ハマること請け合いだ。
[住所]東京都墨田区亀沢1-7-8 上野ビル1階
[営業時間]11時~18時
[休日]月
[交通]都営大江戸線両国駅A3出口から徒歩1分
『en cafe』 @蔵前
香りと甘味の調和が記憶に刻まれる駅近カフェ
1階はコーヒースタンド、2階とこだわりのグッズが並ぶ3階はガラス張りのカフェで、晴れの日には光が降り注ぐ。さらに屋上テラスまであり、思い思いに過ごせる。得意とするのは、ハーブを使ったスイーツ。
(手前)ブラン・レトゥ 770円 (奥)セットドリンク(アイスコーヒー)+330円
「ブラン・レトゥ」の香りのアクセントはオーガニックジャスミンで、香り豊かなアールグレイもクリームに煮出して使用する。「テリーヌ・ショコラ」は鼻から抜ける芳醇さが魅力。その味を口にした瞬間、幸せが訪れる。
[住所]東京都台東区蔵前2-6-2
[電話]03-5823-4782
[営業時間]1階 8時~19時、金~日・祝~20時/2階 9時~18時(LO)、金~日・祝~20時(LO)/3階 12時~16時半(LO)、金~日・祝~17時半(LO) ※写真メニューは2・3階のみ、11時~
[休日]無休
[交通]都営大江戸線蔵前駅A2出口から徒歩1分
散策途中の休憩はここで。ライター市村おすすめカフェ
隅田川の川風に当たりながら、両国から浅草橋や蔵前をゆっくり巡ると30~40分程度。散策の間にひと息つけるのがこちら。
『ソルズ コーヒー』は都営浅草線の浅草橋駅と蔵前駅の間に『ロースタリー』を、都営大江戸線蔵前駅のほど近くに『スタンド』を置くコーヒーショップ。
焙煎したての豆を丁寧にハンドドリップで淹れる「本日のコーヒー」(500円~)が魅力だが、『スタンド』で「オススメ」と聞き、気になったのがリンゴ酢ですっきり感を際立たせた「自家製レモンスカッシュ」にエスプレッソのトッピング。
レモンとエスプレッソの異なるほろ苦さが折り重なる奥行きを感じ、豊かなアロマに包まれる。
『アンド リョウゴク』は「両国の10坪デパート」がテーマ。素材の味を生かした手作りジェラートやコーヒー、ドライフラワーなど、常時3軒以上の店舗が入っている。
店頭や清潔感のある店内にはグリーンがあるので、目も心も癒やされる。コーヒー豆や花器なども販売しており、「これは誰にプレゼントしたいな」なんてぼんやりと考える時間も贅沢だ。
コーヒーは近隣のロースタリー『シングル オー』プロデュースをはじめ、月や曜日により入るショップが異なる。
『オアシス』は磨き込まれた調度品の美しさが落ち着くカフェ。住宅街の中にあり、隠れ家的な雰囲気。名物は手の平ほどもあるようなボリューム感のベーグル。
調査に訪れた日は若者たちでにぎわっていた。木の実やナッツ入りの「スパイスケーキ」(250円~)は風味豊か。優雅な時間のお供にぜひ。
『SOL’S COFFEE ROASTERY(ソルズ コーヒー ロースタリー)』 @蔵前
自家製レモンスカッシュ 500円 +エスプレッソ 追加100円 スコーン 120円
[住所]東京都台東区浅草橋3-25-7
[電話]03-5829-8824
[営業時間]8時~17時、土・日・祝9時~18時
[休日]水
[交通]都営浅草線蔵前駅A3出口から徒歩5分
『& Ryogoku』 @両国
ジェラートダブル(ミルクの花、抹茶) 600円 フィルターコーヒー 600円
[住所]東京都墨田区両国4-30-9
[電話]03-4361-8729
[営業時間]10時~18時
[休日]無
[交通]都営大江戸線両国駅A4出口から徒歩2分
『Oasis』 @両国
ローストビーフのベーグルサンド 700円 スモークサーモンのベーグルサンド 700円 (※写真は半分ずつ) ドリンクセット 250円
[住所]東京都墨田区千歳1-5-15
[電話]なし
[営業時間]10時~17時
[休日]水
[交通]JR総武線両国駅西口から徒歩7分
鬼平、海舟、忠臣蔵……歴史ファン感涙の跡地巡り
現在の両国駅周辺といえば、江戸時代は日本屈指の繁華街!当時のにぎわいを物語る歴史スポットが街中の至るところに溢れかえっている。さらに両国のある墨田区が歴史に非常に熱心でして、そんな歴史スポットのほとんどに、記念碑や説明の看板(それも江戸時代の御触書を張った立て看板風もあり!!)を設置しているのだ。
江戸時代を知る施設としては間違いなく日本一の『江戸東京博物館』が両国駅前にありますが、実は令和7年まで大規模改修工事の為に休館中。しかし!そんなことは屁の河童で、両国は、いわば街中が巨大な歴史博物館といっても過言ではない状態になっている。
ちょいと散歩するだけで「お~世界に名だたる葛飾北斎生誕の地!」を見つけたかと思いきや、その直後には「勝海舟生誕の地だ~!」と声をあげ、続けざまに「ここが忠臣蔵の吉良邸のあった場所…」と感動してる。街を歩くならば、おのおの方、両国でござる。
夜 散策後の贅沢時間を約束する店が点在
『Le Marais(マレ)』 @浅草橋
定番も斬新もお任せ!間口の広いカジュアルフレンチ
浅草橋駅から徒歩2分の好立地にあるおしゃれなビストロ。驚かされたひと皿が「ホワイトアスパラガスのカルパッチョ」。1本丸ごとの提供が多いホワイトアスパラを薄くスライス。力強い味わいはそのままに、エシャロットと白バルサミコ酢の酸味のあるソースが風味を際立たせ、ウニの芳醇な旨みが余韻となって残る。
色々なフレンチ デリカテッセン盛り合わせ 2970円 +フォアグラのテリーヌ 440円 合計 3410円
シェフの創造性と技巧の凄さが垣間見られる逸品だ。盛り合わせでデリを少量ずつつまむもよし、ロッシーニなど王道フレンチを堪能するもよし。さまざまな楽しみ方を提案してくれる1軒だ。
[住所]東京都台東区浅草橋1-25-12 FAMビル1階
[電話]03-5829-8533
[営業時間]11時~23時、金・土11時~24時、日11時~22時(すべてランチは11時半~14時半) ※バーは金・土の21時~24時のみ
[休日]月・祝
[交通]JR総武線浅草橋駅西口から徒歩2分
『Goloso(ゴローゾ)』 @蔵前
素材の美味に心躍るシンプルイタリアン!
皿の上に、塩とオリーブオイルをかけたトマトとモッツァレラの塊がコロン。あまりのシンプルさに目を見張るが、食べて納得。余計なものがない真の旨さとは、まさにこのこと!
シェフのモットーは「いい素材をシンプルに」。もちろんそれだけではない。魚と野菜のグリルにフランボワーズ、モツのスープに島レモンの香りを添えるなど、意表を突く味わいにハッとさせられる。
6600円(フルコース)の一例 (奥から)水牛のモッツァレラチーズとおかトマト 愛媛県産の猪とウイキョウのヴェルミチェッリ 帯広産放牧飼育どろぶたのローストと久松農園のみさきキャベツ
肉の旨み、脂の甘味に感激するどろぶたのローストに至るまで、シェフの奏でるフルコースの調べに身を任せ、心ゆくまで味わいたい。
[住所]東京都台東区蔵前4-5-2
[電話]03-6873-4320
[営業時間]11時半~14時半(13時半LO)、17時半~24時(23時LO)
[休日]日
[交通]都営浅草線蔵前駅A1出口から徒歩3分、都営大江戸線蔵前駅A6出口から徒歩7分
『ビストロ ドゥーブル オーンズ』 @蔵前
ワイン好きの心をグッとつかむ楽しい趣向が一杯!
とにかくワクワクさせてくれる店である。「ワイン酒場の“アテ”盛り合わせ」を頼めば、一体何種類のっているの?とばかりに魅惑的なデリがてんこ盛り。
ワイン酒場の“アテ”盛り合わせ 2200円
まるで前衛アートのような「仔羊背肉のロースト」は、コンフィにピュレ、刺身のツマ状と、調理法の異なるニンジンが仔羊の脇を固め、炒めたザクザクのスパイスと相まって鮮烈な味わい。
メニューから想像する斜め上の料理が登場し、楽しいことこの上ない。何はともあれ、一度訪れて食べてほしい。そう言わずにはいられない、とっておきのビストロなのだ。
[交通]東京都台東区蔵前2-1-27
[電話]03-5809-3418
[営業時間]18時~22時(21時LO)、土・日・祝12時~15時、18時~22時(21時LO)※平日11時半~14時テイクアウトのランチボックス700円販売
[休日]月、第2火曜(祝日の場合は営業、翌日休)
[交通]都営浅草線蔵前駅A1出口から徒歩1分、都営大江戸線蔵前駅A6出口から徒歩5分
江戸時代、そして令和。両国を彩るふたつの料理に息を呑む
本記事2ページ目に“両国界隈は歴史スポットが満載”というコラムがありますが、そんな歴史スポットの中に絶対に見逃せないスポットがある。墨田区両国一丁目八番。ここに、江戸前握り鮨の創始者といわれる通称“華屋与兵衛”、本名・小泉与兵衛(初代/1799~1858)が店を構えていたのだ。
いわばここが江戸前鮨発祥の地である。その跡に墨田区教育委員会が立てた『与兵衛鮨発祥の地』の碑の説明を読めば“当時の狂歌にも「鯛平良目(ひらめ)いつも風味は与兵衛ずし買手は見世にまって折詰」などと人気のほどを……”といった説明がありまして、思わず鯛や平目の握りをつまんでみたくなる気分は大爆発するのである。
その気持ちのまんま、ふと目について駆け込んだ両国駅近くの寿司屋で食べた握りは、そりゃいつになく感慨深いものがありました。与兵衛鮨発祥の地を訪ねてからの即鮨!オススメである。
さて。両国といえば両国国技館、そして大相撲。となると両国で誰もが連想する食といえば“ちゃんこ鍋”だ。しかし、たまには目先を変えて、相撲界も席巻し続けるモンゴル力士に関連した食事も乙。ずばりモンゴル料理だ。
『モンゴル料理 ウランバートル』は、元小結・白馬関とそのお母様が営むお店。名物である羊の「骨付き塩茹で肉」は、モンゴル力士クラスの弩迫力!
湯気あがる肉塊にナイフを差し入れ、ダイナミックに切り分け頬張れば、おのずと沸き上がる金剛力!!モンゴルの奇跡の健康果実・チャツァルガンのサワーも、ごっつあんです!
『モンゴル料理 ウランバートル』 @両国
骨付き塩茹で肉 ハーフサイズ2600円
いい店選びの秘訣はテーマのブレ
ライター松田「私は夜の店を担当したのですが、問屋街と駅周辺は飲み屋街というイメージの浅草橋。飲食店に限らず数年前からオシャレな店が集まり始めた蔵前。とにかく国技館!お相撲の街・両国。本当に下町生まれ?と言われてしまいそうな乏しいイメージしかなく……」
ライター市村「私は昼担当。数年前にこのエリアに引っ越して来た友人から『利便性の高さと安くて美味しい店の多さから、もうここから離れられない』と聞いていて、結構リサーチを楽しみにしていました」
松「担当の武内からは『和の情緒があるお店でまとめるのはどうか?』と言われていたんですが、歩いてみて気になるのはオシャレな店ばかり(笑)。しかも、リサーチするとどこも美味しくて。結局、和の情緒とは逆の、 オシャレな洋食で展開しました」
市「実際に歩いてみると、最初の印象と変わることも多いですもんね。昼の方は、最初から散策途中に立ち寄りたいモダンなカフェというテーマ。こちらはテーマがブレることなくリサーチできました(笑)」
松「うぅぅ…。でも、『マレ』はオシャレな上に開放感もあり、『ドゥーブルオーンズ』のアテ盛り合わせは、すいません……リサーチだというのにワインを1本空けてしまうほどの充実ぶり。『ゴローゾ』だけは、実は以前から行きたく思っていたコースが基本のお店。前菜、パスタ、メインと出てくるものがすべて、シンプル・イズ・ベスト。ずば抜けた素材と情熱あるシェフの力量が揃うとここまで美味しくなるの
市「こっちも『シエロ イ リオ』はフレンチ出身のシェフが作る料理はもちろんサービスも心地よく、隅田川を一望できるテラス席もいい感じ。毎日ランチを食べに来る人がいるのも納得。浅草開化楼のカラヒグ麺を使う『レガート』もよかった。実は新日本フィルハーモニー交響楽団の方々などの演奏会もあるそうで、そちらも楽しみに行ってみたいですね」
松「隅田川という景観に、点在する歴史的なスポット。そのうえモダンに生まれ変わりつつ雰囲気も楽しくて、散策&グルメにはぴったりなエリアです」
撮影/小澤晶子(Riverside Cafe Cielo y Rio、両国イタリアンLEGATO、my Chai、en cafe)竹崎恵子(Le Marais)、小澤晶子(Golozo)、西崎進也(ビストロ ドゥーブル オーンズ)、取材/市村幸妙(Riverside Café Cielo y Rio、両国イタリアンLEGATO、my Chai、en cafe)、松田有美(Le Marais、Golozo、ビストロ ドゥーブル オーンズ)
※2022年7月号発売時点の情報です。
※全国での新型コロナウイルスの感染拡大等により、営業時間やメニュー等に変更が生じる可能性があるため、訪問の際は、事前に各お店に最新情報をご確認くださいますようお願いいたします。また、各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いいたします。
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