隠れ肥満に注意 日本肥満学会では、BMI 25以上を「肥満」、18.5以下を「低体重」としています。前述のとおり、BMIはさまざまな疾患のリスク判定に有用であることが多くの研究から明らかとなっています。しかしこれはあくま…
画像ギャラリー「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』の三択コラム」では、食に関する様々な疑問に視線を向け、読者の知的好奇心に応えます。今回のテーマは「BMI」です。
文:三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治
BMI=22「標準体重」
“太り気味”、“痩せ気味”など、人の体格のバランスを表す指数を「体格指数」と言います。体格指数には何種類かありますが、もっとも一般的なのが、国際的に用いられている「BMI」(Body Mass Index)と呼ばれるものです。BMIはつぎの式で計算されます。
BMI=w÷(h×h)
※w:体重 [kg]、h:身長 [m]
たとえば身長165cm(=1.65m)、体重55kgの場合、
BMI=55÷(1.65×1.65)≒20.2
となります。
BMIの計算方法は世界共通ですが、その評価基準は国によって異なります。日本では男女ともにBMIが22となる体重が「標準体重」とされています。標準体重とは、肥満でも低体重(痩せ)でもない、いわば「望ましい体重」と言えるものです。
さて、BMIに関して述べた次の文章のうち、正しくないものはどれでしょうか。
(1)医学界で肥満を判断する指標としては、体脂肪率ではなくBMIが用いられている
(2)日本肥満学会は、統計的に死亡率がもっとも低い体重を標準体重(BMI=22)としている
(3)BMIは150年以上前に提唱された古い指標である
ベルギーの数学者が提唱
正しくないのは(2)で、「死亡率がもっとも低い体重」が誤りです。
肥満は、糖尿病・脂質異常症・高血圧症・心血管疾患などの生活習慣病をはじめとして、数多くの疾病のもととなる危険因子です。日本肥満学会では、これらの疾病がもっとも少ない体重(BMI=22)を標準体重としています。
標準体重は、目的や用途によって異なります。生命保険会社の中には、もっとも死亡率の低い体重を独自の標準体重として公表しているところもあります。
(1)は正しいです。科学的に肥満を判断するには、本来体脂肪量の測定が必要ですが、体脂肪量を正確に測定するのはコストなど複数の原因から困難です。そのため日常の臨床では肥満の判定基準としてBMIが用いられています。また実際にBMIがさまざまな疾患のリスク判定に有用であることが多くの研究から明らかとなっています。
(3)も正しいです。BMIの歴史は古く、ベルギー人の数学者・統計学者であるアドルフ・ケトレーによって、1835年に提唱されました。日本ではまだ江戸時代、福沢諭吉が生まれた頃です。その後さまざまな体格指数が提唱されていますが、BMIが200年近く経った現在でも重要な指標として用いられているのは驚きに値します。
(参考)
[1] BMI|e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-002.html
[2] 肥満と肥満症の診断基準(小川渉・宮崎滋、「総合検診」2015年42巻2号)
隠れ肥満に注意
日本肥満学会では、BMI 25以上を「肥満」、18.5以下を「低体重」としています。前述のとおり、BMIはさまざまな疾患のリスク判定に有用であることが多くの研究から明らかとなっています。しかしこれはあくまで統計上のことであり、個人の状態を正確に示すものではないことに注意する必要があります。
身長と体重から単純に計算されたBMIだけでは、筋肉質なのか脂肪過多なのか区別できず、内臓脂肪の多寡も判断できません。また、BMIは標準でも、体脂肪率が高い「隠れ肥満」が最近の若い女性に多くみられると言われます。個人差があることを考慮した上で、測定値の増減の傾向に注意すれば、BMIは健康維持に役立つ指標の一つとなることでしょう。
(参考)
[3] 肥満と健康|e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-001.html