古民家、寺社…東京に残る“江戸の面影” 江戸建築15選

古民家に寺社―そこにはリアルな江戸の痕跡があった。生活や歴史を伝える建築たちをさあ愛でよう。 江戸の古民家をたずねて 大都会東京にも、江戸の遺構が残る場所がある。名主や豪農の屋敷に見世蔵など、かつての生活をしのばせる古民…

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古民家に寺社―そこにはリアルな江戸の痕跡があった。生活や歴史を伝える建築たちをさあ愛でよう。

江戸の古民家をたずねて

大都会東京にも、江戸の遺構が残る場所がある。名主や豪農の屋敷に見世蔵など、かつての生活をしのばせる古民家たちをたずねました。

江戸の建築は、レトロを超えてヒストリックだ。古き良き趣を愛でるうちに、気づくとその中の歴史に魅了されている。例えば一之江の名主屋敷。この地で名主を務めた田島家の母屋は240年程前のものだ。

どっしり構えた長屋門、厚く葺かれた茅葺き屋根、つややかな板張りの間、庭園に面した畳敷の奥座敷……。江戸の香りに胸がときめくが、この家の由来を聞くとさらに面白い。

名主として村の民政を任された田島家は公務を行う役所でもあったことから、農民でありながら武家のような造りが許されていた。そのため、農家でよく見られる茅葺き屋根や板の間と、武家でよく見られる長屋門、奥座敷といった要素が同居しているのだ。

いやあ、知らなかった!どの古民家もそうした歴史を知った上で眺めると見え方が変わってくるからますます楽しい。目に美しいだけではない江戸建築の世界、ハマってしまいそうだ。

『一之江名主屋敷』 @瑞江

静けさの中 江戸の暮らしに思いをはせて

『一之江名主屋敷』 一之江新田で名主を務めた田島家の住居。江戸時代に建てられた主屋を修復し展示している

[住所]東京都江戸川区春江町2-21-20
[電話]03-5662-7176(江戸川区文化財係)
[営業時間]10時〜16時
[休日]月、年末年始
[交通]都営新宿線瑞江駅南口からバスで9分

『森田家住宅』 @東秋留

趣深い雰囲気の中 甘味に舌つづみ

『森田家住宅』 森田家は名主を務めた家柄で、約170年前に建てられた主屋など8軒の有形文化財が残る

[住所]東京都あきる野市小川633
[電話]042-558-1852
[営業時間]12時~17時
[休日]火
[交通]JR五日市線東秋留駅から徒歩10分

『宮野古民家自然園』 @洗足

木目の色が伝えるのは家の歴史

『宮野古民家自然園』家の中からは茅葺き屋根や建築当時のままの梁が覗ける

[住所]東京都目黒区原町2-5-8
[電話]03-3712-0100
[営業時間]10時~15時半
[休日]月・火
[交通]東急目黒線洗足駅から徒歩4分

寺社からたどる江戸のおもかげ

江戸の職人技が随所に光るのが、江戸時代から残る寺社の建造物たち。江戸のおもかげをたどりに、都内の寺社を巡ってみましょう。

都内で江戸を感じたいと思ったら、神社やお寺に行くのがいい。

空襲や震災の被害を免れた建築物が多数残っている上に、約260年続いた江戸時代の各時期に建てられたものが揃っている。だから各時代の建築の特徴を捉えるのに大変便利なのだ。

江戸初期の1608年建立の五重塔は、素朴な印象の日本様式と、装飾的な中国様式が合わさっているのが特徴で、同じく江戸初期建立の三解脱門も同様。

一方、江戸の文化が花開いたと言われる元禄期1706年に建てられた根津神社は彩色や彫刻が施された社殿群が華やかだ。

かと思いきや、享保の改革期の1730年建立の赤坂氷川神社の拝殿は、装飾が控えめ。質素倹約政策が進められた当時の気風を反映している。

と、いった具合にその時代ごとの江戸を感じられるのが寺社建築の面白さ。何気なく通り過ぎているその足を今一度止め、寺社の建築を鑑賞してみては?

『池上本門寺 五重塔』 @池上

仰ぎ見て眺めたい 江戸の造形美

『池上本門寺 五重塔』関東で現存する最古の五重塔。遠目から見ると屋根の側面がカーブを描いており優雅な雰囲気

[住所]東京都大田区池上1-1-1
[電話]03-3752-2331
[交通]東急池上線池上駅北口から徒歩10分

『増上寺 三解脱門』 @芝公園

幅19m高さ21m その大きさは関東最大級!

『増上寺 三解脱門』この門を潜ると、貪り、怒り、愚かさの3つの煩悩から解脱できるとされている。10月1日からは建立400年を記念し特別公開予定!

[住所]東京都港区芝公園4-7-35
[電話]03-3432-1431
[交通]都営地下鉄三田線芝公園駅A4出口から徒歩5分

『根津神社』 @根津

細部まで目が離せない装飾の数々

『根津神社』江戸期建立の寺社建築としては最大規模で7棟の社殿群がある

[住所]東京都文京区根津1-28-9
[電話]03-3822-0753
[交通]地下鉄千代田線根津駅1番出口から徒歩5分

『赤坂 氷川神社』 @赤坂

控えめな中に光る職人技

『赤坂 氷川神社』随所に曲線的な雲モチーフの細工が施され落ち着いた中に優美な風格を備えている

[住所]東京都港区赤坂6-10-12
[電話]03-3583-1935
[交通]地下鉄千代田線赤坂駅6番出口から徒歩7分

大名屋敷の遺構を観る 門さんぽ

『林光院表門』 @上野

徳島藩蜂須賀家所有の江戸中屋敷御庭仕切門。庭園の門であったためか装飾的なのが特徴

『林光院表門』

『黒門』 @上町

東京国立博物館の敷地内にある鳥取藩池田家屋敷の表門。最高格式の門らしくとにかくでかい!

『黒門』

【門の格式って?】

身分制度があった江戸時代では、階級に応じて門の様式が決まっていました。中でも、中央がウェーブした屋根の出番所(門番の詰所)が左右にあるのは最高格式の門の証なんです。

『西教寺表門』 @東大前

姫路藩酒井家の江戸上屋敷の門。11代将軍家斉の25女・喜代姫が酒井家に嫁いだ際に建てられた

『西教寺表門』

『赤門』 @東大前

加賀藩前田家の江戸上屋敷の門。徳川御三家に次ぐ家柄であっただけに左右に番所がある最高格式

『赤門』

【赤門って?】

赤門は徳川家のお姫様が嫁いだ大名屋敷にのみ建てることが許された門。子女を各家に嫁がせることで家同士の結びつきを作った徳川家の外交政策の名残でもあるのです。

『豪徳寺赤門』 @豪徳寺

彦根藩井伊家のものと伝わる赤門。豪徳寺は井伊家の菩提寺であったため寺内には井伊家墓所がある

『豪徳寺赤門』

『世田谷代官屋敷』 @上町

彦根藩世田谷領で代官を務めた大場家の邸宅兼代官所の門。瓦屋根ではなく茅葺き屋根で民家風

『世田谷代官屋敷』

【武者窓って?】

武者窓とは、警備のために設けられた太い格子のついた窓で武家屋敷の特徴です。大場家は武士から帰農した家であり代官所でもあるためか、門に武者窓があるのが分かります。

『西澄寺山門』 @三軒茶屋

徳島藩蜂須賀家の中屋敷門。二十五万石の家禄だけあって威風堂々とした造り。門の両側には立派な番所も

『西澄寺山門』

『岡田家長屋門』 @都立大

代々名主を務めた岡田家の長屋門。現在でも個人宅の門として使用されているので見学は控えめに!

『岡田家長屋門』

【長屋門って?】

武家屋敷の表門の様式のひとつ。門の両側には居住空間が作られ家臣が住みました。民家でも特別な場合には長屋門が許されましたが壁は板張りが基本。漆喰塗りの壁は武家とのつながりがあると推測できます。

撮影/小澤晶子、取材/藤沢緑彩

※2022年10月号発売時点の情報です。

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