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昔から変わらぬ部屋食は、贅沢な寛ぎのひととき

今の時代になってフィットする部屋食ですが、松井本館は本来の部屋食スタイルを創業時から続けています。
「特にお子さま連れのお客様からは、気兼ねなくくつろげると喜んでいただけます。この伝統的なスタイルは続けていてよかったと思いますね」

夕食は本格京懐石。「京野菜や旬の食材をふんだんに使い、走りから名残まで楽しんでいただける献立をご用意しています」と語るのは料理長の鳴川明展さん。四季折々の味は懐石の醍醐味。お正月になればもちろん京都流のお節が供されます。これを目当てに毎年宿泊する常連さんもいるのだとか。二十四節気とともに日常がある京都にあって、日々の節目を味わえるのも旅館だからこその魅力です。

「まずは京料理をお召し上がりいただきたいですが、お好みに合わせて、京都牛ステーキ懐石やすき焼きなどもご用意しています」

料理長は近年ワインに傾倒し、ワインソムリエの資格を取得。一昨年の休業期間中にはワインリストを充実。チェックインのお着き菓子、白味噌チーズケーキも料理長特製なのだそう。

もちろん、朝食も部屋食。「高雄屋さんの湯豆腐」や「桝俉さんのお漬物」に、だし巻きや湯葉サラダなど、老舗や地元の錦市場でそろえた京都のやさしい味尽くし。

夕食は本格京懐石。一品目、この日の先付は“重陽の節句”にちなんだ菊の花と、月に見立てた観月玉子が秋の訪れを告げる「菊花寄せ」。
ひとつひとつ丁寧に作られた「八寸」。カマス鮨、栗の渋皮煮、あんずとさつまいものクリームチーズ、卵黄を練ったけんちんのラタトゥイユなど。糸瓜のゼリー白酢和えには焼柿とナシのサイコロを添えている。栗や柿、もみじを模した小さい器が愛らしい。
『松井本館』と『松井別館 花かんざし』の毎月の献立を立てるのは、旅館の板場一筋という料理長の鳴川明展さん。細かい細工も得意で、タイ、マス、アオリイカの3種盛りのお造りが華やかな一皿に。
秋のお楽しみ「月見ひろうす」は、細く刻んだ針松茸におろししょうがを添えた、まんまるのがんもどき。軽くあぶった松茸の香りが鼻先をくすぐる。

宴会場やお部屋に舞妓さんを呼べるプランもあり、『松井別館 花かんざし』では祇園祭に合わせてビアガーデンを開催するなど、京都の風情を楽しめるコンテンツも多彩。女将、若女将だけでなく、スタッフたちの積極的なアイデアで進化していく宿の活気を頼もしく感じます。

荷物を置いてふらりと外に出れば、目の前には紙の京雑貨を扱う『鈴木松風堂』、はす向かいには江戸中期から続く手仕事の京うちわ『阿以波(あいば)』。碁盤の目状の道を散策するだけでも、そこかしこで老舗のお店に出合え、その合間にスタイリッシュな新しいお店が散見されるのも京都らしさ。南に下ればすぐ錦市場、東には新京極が待っています。
「すぐ近くのイノダコーヒーさんをおすすめしています。旅館でお出しするお料理は朝夕とも和食ですから、外では京都の喫茶や洋食文化も楽しんでほしいですね」と笑顔で見送ってくれた。

多様な時代の中で、女将や若女将たちは京旅館のあり様を日々想い、守ることと変えることの意義に向き合いながら、京都の姿を我々に見せてくれます。「やっぱり京都!」、そんな納得時間を知るのなら、“京都で旅館体験”、いいですよ。

松井本館

住所/京都府京都市中京区柳馬場通六角下ル
電話/075-221-3535
備考/駐車場なし、チェックイン16:00、チェックアウト10:00

編集/エディトリアルストア
取材・執筆/成田孝男、渡辺美帆
写真/児玉晴希

※情報は令和4年10月3日現在のものです。

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おとなの週末Web編集部
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