三大カツメニュー最前線(1)「カツ丼」の今をレポート!お酒のお供、“後のせ”のサクサク感、明治の元勲の料理人が開いた老舗は…

隣の人が食べていると無性に気になってしまう。そんな料理の代表例がここで紹介するカツの三大メニュー 、今回はカツ丼特集です。 時代とともに変化していく“いまが旬のおいしさ”をチェックしてください。 今や百花繚乱の東京カツ丼…

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隣の人が食べていると無性に気になってしまう。そんな料理の代表例がここで紹介するカツの三大メニュー 、今回はカツ丼特集です。 時代とともに変化していく“いまが旬のおいしさ”をチェックしてください。

今や百花繚乱の東京カツ丼事情

卵でとじない”後のせ”をはじめ、酒のお供に最適なアテ系、某所で食べるカツ丼まで。店の個性が光る、カツ丼の今をレポート!

あのカツカレー店の”とじないカツ丼”

とんかつを甘辛い割り下で煮込んで、半熟の卵でとじる。この王道のやり方で十分においしかったカツ丼が、東京の街のあちこちで、さらに美味なる進化を遂げている。

まずその急先鋒が、今までの逆方向を行く、卵でとじないカツ丼。なかでもユニークな存在として挙げられるのが、2022年1月に開業した『とんかつ檍(あおき)のカレー屋 いっぺこっぺ 新橋店』だ。こちらの店、『とんかつ檍』が経営するカツカレーの専門店。系列店のなかで初めてカツ丼を扱い始めたという店なのだ。

『とんかつ檍(あおき)のカレー屋 いっぺこっぺ』檍のかつ丼(後のせ) 1200円

『とんかつ檍(あおき)のカレー屋 いっぺこっぺ』檍のかつ丼(後のせ) 1200円 白飯に割り下と玉ねぎの卵とじを置いたら、その上にラードで香ばしく揚げた肩ロースのカツをオン。豚は茨城・奥久慈のSPF橅豚を使用。臭みがなく、肉質も柔らかい 

早速、「檍のかつ丼(後のせ)」を注文すれば、半熟の卵の上にのった剥き出しのとんかつに食欲を刺激される。ああ、早く掻き込みたい。箸でひと切れをつまんで、卵やご飯とともに食べると、カツのサクサク食感がたまらない。

すると、「次は、卓上にあるヒマラヤのピンクソルトでお召し上がりください」と、店長の山下孝之さん。なるほど、こうやって”味変”を楽しめるのも、卵でとじないカツ丼ならでは。

そして「追加料金300円でカレートッピングはいかがですか?」。なんと、そうきましたか!豚と野菜の旨みの濃いスパイスカレー×カツ×卵の共演は、もちろん口福のひと言。甘辛い割り下の味わいも、この幸せに彩りを添える。

『とんかつ檍(あおき)のカレー屋 いっぺこっぺ』 @新橋 卵でとじないことが生むとんかつのサクサク食感

ビジネスパーソンの聖地・ニュー新橋ビルは、とんかつ激戦区。そのなかで連日行列ができるこちら。橅豚(ぶなぶた)を使ったカツカレーとカツ丼が人気。

『とんかつ檍(あおき)のカレー屋 いっぺこっぺ』

[住所]東京都港区新橋2-16-1 ニュー新橋ビル1階
[電話]03-6206-7300
[営業時間]11時~19時50分LO
[休日]日
[交通]JR山手線ほか新橋駅日比谷口から徒歩2分

大正のモボ・モガも愛したカツ丼

次は1912(明治45)年創業の老舗洋食店、人形町『小春軒』で50年以上の時を経て甦ったという、「小春軒特製カツ丼」の話。復活して早26年が経つが、今でもこちらは、一番の人気メニューだ。

『小春軒』小春軒特製カツ丼 1300円

『小春軒』小春軒特製カツ丼 1300円 ピーマン、玉ねぎ、じゃがいも、にんじんは割り下でさっと煮込む

卵でとじないカツ丼で、目玉焼きとたっぷりの野菜の下に敷き詰められるのは、ひとくちロースカツ。またカツとご飯に染みた割り下からは香味野菜の風味が漂う。

「割り下には、ブイヨンと少量のデミグラスソースを入れています」と4代目店主の小島祐二さん。この割り下の味がさっぱりとして、”揚げ物を食べている”という罪悪感を忘れさせてくれるのだ。

「今もお客さんの半分が、カツ丼を注文なさいます」と小島さん。戦前に人形町界隈のサラリーマンに愛されたというこの味わいは、今も界隈のビジネスパーソンに歓迎されているようだ。

『小春軒』 @人形町 明治の元勲・山県有朋の料理人が初代

山県有朋の料理人だった初代・小島種三郎さんと、奥方・春さんが開いた洋食店ゆえに『小春軒』。「特製フライ盛合せライス」で有名な老舗。

『小春軒』老舗の歴史を感じる佇まい

[住所]東京都中央区日本橋人形町1-7-9
[電話]03-3661-8830
[営業時間]11時~13時半、17時~20時
[休日]土の夜、日・祝
[交通]地下鉄日比谷線ほか人形町駅A2出口から徒歩1分

食事にもアテにもなるカツ丼メニューの数々

さて、次に紹介する新宿『とんかつ串揚げ とん竹』は、カツ丼メニューがとにかく豊富に揃う店。その数は、なんと11種(夜のみ。チキンも含む)。ソース風味にチーズ入りなど、味わいのバリエーションも豊かだ。

「これをつまみにビールを飲むと、最高ですよ」。大将・徳田幸弘さんのおすすめが、「たまたまソースかつ丼チーズ入り」。メニューには”お好み焼きのような風味”という説明があるが、その正体はいかなるものだろう?

登場したのは卵でとじたソースカツ丼と、マヨネーズのチューブ。自分でかける量を調整できる仕組みなのだ。ソース×マヨネーズ×卵×カツの組み合わせは魔性。たしかにこれは、ビールが進む。

一方でTHE・カツ丼な味わいの「スペシャルかつ丼」の安心感たるや。

『とんかつ串揚げ とん竹』スペシャルかつ丼 1560円

『とんかつ串揚げ とん竹』スペシャルかつ丼 1560円 鹿児島産豚肉のテンダーロイン170gに生パン粉をまぶし、ラードで揚げる。ボリュームもスペシャルだ

カツにしっかりと割り下の味が染みながら、あっさりとした風味なので、完食するまで決して食べ飽きることがないのだ。

『とんかつ串揚げ とん竹』 @新宿 和風ダシからソースまでいろんなカツ丼あります

とんかつ定食に加え、串揚げに丼、冷やしとんかつにお茶漬けまで。ものすごい数のメニューは、大将・徳田さんのサービス精神の表れだ。

『とんかつ串揚げ とん竹』一番左が大将の徳田さん

[住所]東京都渋谷区代々木2-7-6 GSハイム佐藤ビル1階
[電話]03-3370-3871
[営業時間]11時~14時40分LO、17時半~21時半LO
[休日]土の夜、日、祝
[交通]JR山手線ほか新宿駅南口から徒歩4分

昭和生まれにおなじみカツ丼×あの場所

最後に紹介するのは、昭和が青春という40・50代には、懐かしい店。なんたって、店名が『Bar 七曲署』だからだ。すぐにピ〜ンと来たあなた、はい、答えをどうぞ!

そう、七曲署は、あの刑事ドラマの名作『太陽にほえろ!』に登場する架空の警察署だ。店内には、取調室を模したテーブル席までも!なんとここでカツ丼が食べられるのだ。この組み合わせは往年の刑事ドラマファンでなくても、垂涎(すいぜん)モノではないだろうか。

そしてこのカツ丼、なんと料理上手のグッチ裕三さんの監修だ。豚肉は人形町の老舗精肉店『日山』から仕入れるリブロース。卵は和風ダシを効かせ、スクランブルエッグにして添える。

『Bar 七曲署』七曲署のヘソ曲がりカツ丼 2000円

『Bar 七曲署』七曲署のヘソ曲がりカツ丼 2000円 卵に忍ばせたダシの風味が濃厚。分厚いたくあんが郷愁を誘う

「白飯の上にはシソやゴマ、刻みノリをたっぷりと忍ばせます」。つまみになるカツ丼と、制服姿の署長(店長)・小野寺優太さんは説明する。取調室はあるものの……。

そう、こちらは日本のお酒専門のバー。カツ丼と山崎ロックなんて他ではありえないペアリングも、ここでなら可能なのである。

『Bar 七曲署』 @銀座 おと週世代にグッとくる!?カツ丼とコレの組み合わせ!

銀座の雑居ビル4階のバー。昭和歌謡が流れる店内には、しっとりと酒と会話を楽しむ40・50代の客の姿が目立つ。ドリンクは1000円~。

『Bar 七曲署』テーブル席。ここでカツ丼を食べると、複雑な心境に

[住所]東京都中央区銀座7-8-1 丸吉ビル4階
[電話]03-3574-9006
[営業時間]17時~翌2時LO(翌1時以降の営業については要確認)
[休日]日・祝
[交通]地下鉄銀座線ほか銀座駅B5出口から徒歩3分

撮影/西崎進也、取材/岡野孝次

※2022年11月号発売時点の情報です。

※全国での新型コロナウイルスの感染拡大等により、営業時間やメニュー等に変更が生じる可能性があるため、訪問の際は、事前に各お店に最新情報をご確認くださいますようお願いいたします。また、各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いいたします。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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