「青魚」(あおざかな)とは、「赤魚」(あかうお、あこう)とは? サバ、イワシ、サンマなどの「青魚」は、背の部分が青光りをしているところからそう呼ばれます。青は海の色で、外敵(鳥)から発見されにくい保護色となります。熱帯魚…
画像ギャラリー「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』の三択コラム」では、食に関する様々な疑問に視線を向け、読者の知的好奇心に応えます。今回のテーマは「赤身魚」です。
文:三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治
「赤身魚」「白身魚」「青魚」「赤魚」
脂肪が多くて柔らかく、濃厚で旨味のある「赤身魚」。身が締まって低カロリー、淡白な味わいの「白身魚」。DHA、EPAなど体に良い栄養素を多く含む「青魚」。赤い魚全般を指すのか特定の魚を指すのか、読み方すら今ひとつ不明瞭な「赤魚」。これらは日常よく使われている魚の分類ですが、もちろん生物学的な分類ではありません。色の違いなのか、味の違いなのか、どのような基準で区別しているのでしょうか。そもそも明確な基準があるのでしょうか。今回はそのような疑問に焦点を当てます。
まずは問題です。次のうち、赤身魚はどれでしょうか?
(1)サワラ
(2)サケ
(3)キンメダイ
「ミオグロビン」の影響
答えは(1)の「サワラ」です。サワラは「赤身魚」で、サケとキンメダイは「白身魚」です。
赤身魚の身が赤いのは、「ミオグロビン」という成分によるものです。ミオグロビンは「ヘモグロビン」とよく似た色素タンパク質で、ヘモグロビンが血液中にあって酸素を運搬する役割を果たすのに対し、ミオグロビンは筋肉中に存在して、酸素を貯蔵する働きがあります。ミオグロビン含有量が100gあたり10mg付近が境界で、それ以上の魚が「赤身魚」、それ以下の魚が「白身魚」となります。
魚の筋肉は、白っぽい「普通筋」と赤い「血合筋(ちあいすじ)」とに大別されますが、ミオグロビンを多く含むのは「血合筋」のほうです。血合筋は長距離を泳ぐのに適した筋肉で、マグロやカツオなどの回遊魚は血合筋の発達した「赤身魚」です。一方、普通筋は長距離の運動より瞬発的な運動に適しており、運動量の少ないアンコウやヒラメなどは普通筋が多い「白身魚」です。
(1)の「サワラ」は赤身魚に分類されますが、血合筋の割合が比較的小さいため、マグロなどと比べると赤みがそれほど強くありません。
(2)のサケの身は赤っぽいのに、白身魚なのはなぜでしょうか?それは、サケの色の素がミオグロビンではなく、「アスタキサンチン」という成分だからです。アスタキサンチンはエビやカニなどの甲殻類などに含まれる赤色の色素で、サケはオキアミなどの甲殻類を餌としているため身が赤くなります。
(3)のキンメダイは深海魚です。海の中では波長の長い赤い光ほど吸収されやすく、深海にはほとんど届きません。したがって赤は保護色となるため、深海魚には赤い魚が多く存在します。しかしそれは外見の話であって、深海魚は運動量が少ないために白身魚が多いのです。
「青魚」(あおざかな)とは、「赤魚」(あかうお、あこう)とは?
サバ、イワシ、サンマなどの「青魚」は、背の部分が青光りをしているところからそう呼ばれます。青は海の色で、外敵(鳥)から発見されにくい保護色となります。熱帯魚の中にも青い魚はいますが、青ければすべて「青魚」というわけではありません。
サワラは、サバやサンマなどとならんで青魚です。「青魚」という呼び方は俗称で、白身魚と赤身魚のような明確な定義はありません。たとえばマグロの背中は青みを帯びていて、外見上は青魚に似ています。しかし、身が赤いためか、マグロが青魚と呼ばれることはありません。
分類学上「アカウオ」という名前が付けられているのはハゼ科の魚ですが、食用としての需要はないようです。一般に「アカウオ」と呼ばれ食用に供されるのは、「アコウダイ」や「カサゴ」などのメバル科の魚です。ほかにもハタ科の「アカハタ」、ホタルジャコ科の「アカムツ」(ノドグロ)、コイ科の「ウグイ」など、アカウオはさまざまな赤い魚の別称となっています。
「キンメダイ」も赤魚と呼べそうですが、付加価値が高いためか、そのままキンメダイと呼ばれています。
(参考)
[1] サワラは赤身魚ですか、白身魚ですか(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1905/01.html
[2] サケは赤身の魚ですか(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1203/03.html
[3] 魚の赤身と白身の違い(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211201/k10013369481000.html