チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介。今回はついに大阪上陸! 関西チャンピオンの座に輝いたチャーハンと初邂逅です!
画像ギャラリー筆者は愛知県在住。アクセスの良さから関西、とりわけ大阪への出張は多い。“食い倒れの街”といわれるだけに、大阪出張の楽しみはやはり何といっても「食」である。
とはいえ、たこ焼きやお好み焼き、きつねうどんなどの粉もんはこれまで飽きるほど食べた。となると、チャーラーしかない。
筆者はラーメンマニアではないので、大阪のラーメン事情はまったく知らない。でも、せっかくなら、有名な店に行きたい。スマホに「大阪 ラーメン」と入力して検索すると人気のラーメン店はヒットするものの、その店にチャーハンがあるとは限らない。そこで、「大阪 チャーハン」でググってみた。
店員さんたちの丁寧な仕事ぶり
すると、地下鉄谷町線または堺筋線の天神橋筋六丁目駅、通称“天六”からほど近い『総大醤』という店がヒットした。何でも、テレビ番組のチャーハン特集で関西のチャンピオンに輝いた他、webメディアが発表した大阪のチャーハンランキングでも1位。これはもう行くしかない!
店に到着したのは、19時すぎ。店の前には7、8人が空席を待っていた。その列に筆者が加わった後も客がどんどん増えていった。やはり人気店なのだ。ふと、店の横にあるプレハブ小屋に目をやると、そこは製麺スペースのようだ。ということは、自家製麺ということか。チャーハンだけではなく、ラーメンも期待できそうだ。
30分ほど待って、ようやく店内に案内された。店内はすべてカウンター席。見上げると、おびただしい数のサイン色紙が飾られていた。芸能人やお笑い芸人、スポーツ選手などが来ているようだ。
さらに、厨房奥に目をやると、メニューが貼ってあった。デフォルトの「黒大醤」が850円で、「焼き飯」が500円。巷の中華料理店と比べれば高く感じるが、ラーメン専門店なのでこんなものだろう。
卓上のメニューには、セットの記載もあった。ラーメン(黒大醤)+焼き飯の「焼き飯セット」は1300円。セットで注文すると50円引きになるというわけだ。ということで、迷わず注文。
筆者の席からは調理風景がよく見える。ガンガンに熱した中華鍋に溶き卵とご飯、具材を投入し、リズミカルに振る。調味料は目分量ではなく、きっちりと量っていることもわかった。丁寧な仕事ぶりはラーメンも同様だった。店員さんの一つひとつの所作が美しく、いつまでも見ていられる。
関西チャンピオンの実力はいかに?
おっと、ここで「黒大醤」が運ばれた。うん、美しい。ビジュアルからも仕事の丁寧さが伝わってくる。具材は、チャーシューとナルト、メンマ、ネギ。
まずはスープをひと口飲んでみる。おーっ、醤油の味と香り、コクがふわっと広がる。決して濃すぎることなく、味にカドもない。口の中で醤油の味が消えかかる頃、柚子皮の香りが余韻として残るのも実に心地よい。
麺は中太のストレート麺。噛むごとに小麦の旨みをしっかりと感じる。醤油ラーメンとしてはかなりレベルが高い。さすがは食い倒れの街である。
2、3分の時間差で「焼き飯」が目の前に。お米の一粒ひと粒が油でコーティングされていて、ムラなく仕上がっている。具材は刻みチャーシューとネギ、玉子とシンプルであるにもかかわらず、ここまで美しいチャーハンは初めて見た。
たまらずレンゲを突き刺して口へ運ぶ。すると、まるで江戸前寿司のシャリのように口の中でほどけて、塩とコショウ、醤油、そして刻みチャーシューの味が複雑に絡み合った旨みが広がり、噛むごとに味が弾ける。
食感はパラパラでもなければしっとりでもない。米粒の形がしっかりとしているので、炊き方も工夫しているのだろう。関西チャンピオンというのも充分に頷ける。
黒大醤も焼き飯もまったく奇を衒っておらず、それぞれ王道の味を追求していることが伝わってくる。だから、この組み合わせは不味いわけがない。スープをすすりつつ、焼き飯を食べると相乗効果でどんどん旨くなる。これぞチャーラーの醍醐味。素晴らしいとしか言いようがない。
いやー、実に感動した! 大阪には旨いチャーラーを食べさせてくれる店がまだたくさんありそうなので、これからもリサーチを続けていこうと思った。
取材・撮影/永谷正樹
画像ギャラリー