インスリンの初投与は100年前、カナダの研究者らがノーベル賞を受賞 1921年、カナダで開業医をしていたフレデリック・バンティング医師は、ある論文から着想を得て、トロント大学のマクラウド博士の研究室で、糖尿病の研究を始め…
画像ギャラリー「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』の三択コラム」では、食に関する様々な疑問に視線を向け、読者の知的好奇心に応えます。今回のテーマは「アレルギー」です。
文:三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治
世界の成人10人に1人
国際糖尿病連合(IDF)の2021年のデータによると、世界で糖尿病とともに生きる成人の数は5億3700万人に達し、いまや世界の成人のおよそ10人に1人という高い割合になっています。糖尿病関連の病による年間の死亡者は670万人以上で、5秒に1人が命を落としている計算になります。さらに2045年までには世界の糖尿病人口は7億8300万人に増加すると予測されています。
世界の糖尿病治療と合併症管理にかかる医療費は9660億ドル(約143兆8300億円)となり、15年間で316%増加しました。糖尿病は世界的な脅威となっており、毎年11月14日の「世界糖尿病デー」では、その日を中心に糖尿病に関する啓発キャンペーンが全世界で繰り広げられます。さて、この記念日や糖尿病について、次のうち適切でないものはどれでしょうか?
(1)世界糖尿病デーの11月14日は、インスリンの発見者フレデリック・バンティングの誕生日
(2)世界糖尿病デーは国連に認定された記念日
(3)「ぜいたく病」などと揶揄されることもある糖尿病は、食糧の豊富な先進国で増加が著しい
食生活の変化、インスリン等の薬の不足……
誤っているのは(3)です。
糖尿病はいまや食料豊富な先進国だけの病気ではありません。途上国では先進国を上回るスピードで糖尿病人口が増加しています。
その理由として、途上国でも都市化が進み、運動不足や食生活の変化による肥満が増えていることや、医療体制が不十分なために、糖尿病の発見や治療の遅れ、インスリン等の薬の不足が生じていること、経済的に治療を受けられない低所得者層が多いことなどが挙げられます。途上国では若い世代が先進国より多く命を落としており、働き手が失われることがより途上国への負担を大きくしていることも指摘されています。
インスリンの初投与は100年前、カナダの研究者らがノーベル賞を受賞
1921年、カナダで開業医をしていたフレデリック・バンティング医師は、ある論文から着想を得て、トロント大学のマクラウド博士の研究室で、糖尿病の研究を始めます。当時糖尿病の治療は減食療法のみで、有効な治療法はありませんでした。特に若年層の1型糖尿病患者は死亡率が高かったそうです。
バンティングは同年、助手の学生チャールズ・ベストやマクラウド博士らの協力により、インスリンを発見。1922年に初めて糖尿病患者にインスリンが投与されました。その後わずか数カ月でインスリンは大量生産されるようになり、多くの糖尿病患者の寿命が大幅に延びることとなりました。
1923年、バンティングはマクラウド博士と共にノーベル生理学・医学賞の栄誉に輝きます。発見の翌年という異例の早さでの受賞は、その功績がいかに大きなものであったかを物語っています。インスリンの発見は、20世紀における医学界最大の功績の一つとされており、この画期的な発見に敬意を表し、バンティング医師の誕生日が世界糖尿病デーとなりました。
国際糖尿病連合(IDF)と世界保健機関(WHO)は、世界に広がる糖尿病の脅威に対応するため、1991年に「世界糖尿病デー」を制定しました。2006年には国連総会で「糖尿病の全世界的脅威を認知する決議」が加盟192カ国の全会一致で採択され、同時に世界糖尿病デーが国連の記念日として公式に認定されました。
世界糖尿病デーは、現在では世界160カ国から10億人以上が参加する世界有数の疾患啓発の日となっており、11月14日には国連及び主要国で、糖尿病の予防、治療、療養を喚起する様々なイベントが開催されます。(参考[2])
(参考)
[1] 世界糖尿病デー 公式ホームページ(世界糖尿病デーイベント実行委員会)
https://www.wddj.jp/
[2] 「世界糖尿病デー」について
https://www.wddj.jp/01_howto.htm
[3] IDF Diabetes Atlas | Tenth Edition
https://diabetesatlas.org/
[4] 平成28年国民健康・栄養調査結果の概要(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/kekkagaiyou_7.pdf
[5] 国際デー|国連広報センター
https://www.unic.or.jp/activities/international_observances/days/