肥「うーん、ラーメン1杯か、肉まん20個か……」
戎「まだ言ってる(笑)。確かに最近はデフォルトで1000円を超える店も多いけど、これだけ素材にこだわればそりゃそうなるよな、何なら安いと思うほどです。でもきっと『新店は高い』と思う人も多いはず。そこで旧の店!」
松「わかる!デフォで1000円超えることはない安心価格」
戎「いい意味で複雑味がなく、どこかやさしくてホッとします」
肥「老舗は味がどうこうっていう評価を超越した魅力があるんだよ。高級食材を使うわけでも最先端のスープでもないけど、妙に食べたくなる。『来集軒』もそう。佇まいもシブくて、店の隅っこで五郎さんと純と蛍がラーメンすすっていても違和感ない(笑)」
戎「上野ガード下にある『珍々軒』も、店前にテーブル席を出してるシチュエーション含めていい。寒空でハフハフやりながら食べるとおいしいんだよなあ」
武「ご当地の味も幅広くて、面白かったですよ。さっきのラーメンって何だろう、の話じゃないけど、これほどバラエティに富んだ味が全国に揃うジャンルって珍しい。今回感じたのが南の県の方が味も濃く、北ほどあっさりしてること(北海道の味噌など例外もありますが)。
九州の濃厚な豚骨味が、中国・四国、関西で醤油の効いた醤油豚骨になっていき、関東では豚骨ながらも白濁させず、青森に至ってはほぼ煮干し。その土地で採れる素材を有効利用した結果とも思うのですが、この点を見てもラーメンってフリーダム。まるで肥田木さんの恋愛のようです」
肥「80歳のおじいちゃんも恋愛対象だからね。って何の話や」
武「選択肢が自由だからこそ飽きずに食べられ続ける。で、郷土の味と結びつきやすく、国民食になっていったのではと思うわけです。そんなことを思いながら食べていると今度は自分の好みがわかり始める。個人的に煮干しや節系より動物系。麺は中細ストレート」
戎「今回では、どこの店?」
武「関西の『新福菜館』や『まる岡』が好きだな」
肥「前者は京都ブラックとも呼ばれる黒いスープだけど、味はあっさりだったよね。ギャップがあるほど惹かれるのは人間も同じ」
武「あ、ラーメン売り出したら?麺は極太(神経と同じ)、ネギは山盛り(バカ盛り)、その名も肥田木ブラック(訳:ヒダキ腹黒)」
肥「やーん、大行列できちゃうかもぉ♪(←知らぬが仏)」
松「それもラーメン、これもラーメンってことで。懐が深いですね」
戎「ですです。『今の新店は高い』と感じる人もこだわり抜いた最新の味を一度は試してみてほしいし、逆に『昔ながらの店って味が物足りないんじゃない?』と思ってる人も長く愛される一杯を店の雰囲気ごと味わってほしい。その意味や理由がきっとわかるはず。ぜひこの特集でラーメンの奥深さ&幅広さを楽しんでください!」
撮影/小島 昇、文/肥田木奈々
※2023年2月号発売時点の情報です。
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