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代表例は「温州みかん」

答えは(1)の「種なし柿」です。

植物のうち受粉して種子をつくるものを「種子植物」といいます。種子植物は受粉すると子房の中に種子ができ、多くの場合子房は肥大を始めて果実に育ちます。ところが一部には受粉しなくても実が大きくなるものがあります(これを「単為結果(たんいけっか)」といいます)。その場合、受粉していないので、実の中に種子はできません。

その代表例が「温州みかん」です。温州みかんは、「種なし」が縁起が悪い(「子種がない」に繋がる)として江戸時代には広まりませんでしたが、明治時代になると、その食べやすさと玉の大きさから次第に人気となりました。現在では日本で生産される柑橘類のうち約7割が温州みかんです。温州みかんは接ぎ木で栽培します。

温州みかんと同様に、柿の中にも単為結果をする「平核無(ひらたねなし)」や「利根早生(とねわせ)」などの品種があります。これらは6~7月ごろは小さな種のようなものがありますが、しだいに消えてしまいます(参考[2])。

バナナにも種子がありませんが、これも人為的に作られたものではなく、もともとは自然発生したものです。本来バナナには種子があり、今でもフィリピンやマレーシアには野生の「種ありバナナ」が残っています。「種なしバナナ」ができたのは、突然変異によるものでした。種ありバナナは染色体の数が2本ずつ対になっている二倍体であるのに対し、種なしバナナは染色体数が3本ずつになっている三倍体です。三倍体の植物は、染色体の細胞分裂が不規則になるため、種ができにくいという性質を持っています(参考[3])。

「種なしバナナ」は人間にとって都合がよかったために、大事に育てられ、広まっていきました。種なしバナナは発芽した芽を株分けすることで増やします。なお、これらはすべて同じ遺伝子を持つクローンであるため、病害に弱く、かつて主流であった「グロス・ミシェル」という品種は1950年代から1960年代にかけて流行した「パナマ病」により、ほぼ壊滅状態に追いやられました。

現在世界で栽培されているのは大半がパナマ病に強い「キャベンディッシュ」種です。しかしこのキャベンディッシュにも近年「新パナマ病」と呼ばれる病気が広がっており、強い品種への改良が試みられていますが、種がなく交配ができないため、なかなか容易ではないといわれています。

種なし柿
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人為的につくられた種なしフルーツ...
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圓岡太治
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