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YMOと言えば「ライディーン」

1曲目は「ライディーン」。ユキヒロの曲でY.M.O.初のヒットとなった。Y.M.O.の楽曲で最もチャート・ランクが高かったのは「君に、胸キュン。」だが、音楽ファン、特にY.M.O.のファンには、Y.M.O.と言えば「ライディーン」と言えるだろう。

Y.M.O.のオフィスの社長で麻雀友達でもあった故大蔵博は、生前、ぼくに“Y.M.O.のアルバムは世界100カ国以上で発売されていて、総セールス枚数は200万枚を超えている。一番人気の楽曲は「ライディーン」だ”と教えてくれた。

ちなみに大蔵博はY.M.O.のステージ衣装や様々な小道具などをすべて倉庫に保管していた。一度それらのグッズをどうしたら良いか相談されたことがある。あれらのグッズは大蔵博の死後、どうなったのだろうか。

「ライディーン」のメロディーは世界レベルと言える。“そんなに時間はかけないで、すんなりメロディーが出来た”とY.M.O.時代、ユキヒロはぼくに言っていた。

喪失と再会の歌「青空」

2曲目の「青空」は1994年のアルバム『Mr.YT』に収録されている。作詞は森雪之丞だった。ユキヒロのソロ楽曲には、彼の心の優しさが表出したものが多いとぼくは思う。ヴォーカリストとしても、熱いタイプでは無いが“心の温もり”を伝える歌唱法だと言える。

「青空」はざっと聴くと失恋ソングのようでいて、実はもっと意味が深い、喪失と再会の歌だ。

クリスマス・ソング「X’MAS DAY IN THE NEXT LIFE」

3曲目はユキヒロの盟友のひとりだったムーンライダーズの鈴木慶一が作詞したクリスマス・ソングだ。ふたりは1981年にTHE BEATNIKSというユニットを結成し、5枚のアルバムを残した。

“See you on X’mas day in the next life”とユキヒロが歌うこの「X’MAS DAY IN THE NEXT LIFE」は、1991年のソロアルバム『A DAY IN THE NEXT LIFE』に収録されていた。今後、忘れられないクリスマス・ソングになりそうだ。

歌い出しの“こんな素敵な日にいつかまた会おう”という歌詞が、今となっては心に刺さる。今はクリスマスでは無いけれど、しばらくはこの曲に浸っていたい気にさせる。

もういくらその名を呼んでもユキヒロは戻ってこない。彼の作品を聴き続け、彼の名を忘れないことが残されたぼくらの役割というのは、あまりに悲しい。

YMOのデビュー・アルバム『イエロー・マジック・オーケストラ』や『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』、『黒船』など高橋幸宏が参加した名盤の数々。下段はTHE BEATNIKSの5枚目のアルバム『EXITENTIALIST A XIE XIE』(エキジテンシャリスト・ア・シェーシェー)。伝説のレーベル「BETTER DAYS」から同レーベル約30年ぶりの新作として2018年に発売された

岩田由記夫
1950年、東京生まれ。音楽評論家、オーディオライター、プロデューサー。70年代半ばから講談社の雑誌などで活躍。長く、オーディオ・音楽誌を中心に執筆活動を続け、取材した国内外のアーティストは2000人以上。マドンナ、スティング、キース・リチャーズ、リンゴ・スター、ロバート・プラント、大滝詠一、忌野清志郎、桑田佳祐、山下達郎、竹内まりや、細野晴臣……と、音楽史に名を刻む多くのレジェンドたちと会ってきた。FMラジオの構成や選曲も手掛け、パーソナリティーも担当。プロデューサーとして携わったレコードやCDも数多い。著書に『ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち』など。 電子書籍『ROCK絶対名曲秘話』を刊行中。東京・大岡山のライブハウス「Goodstock Tokyo(グッドストックトーキョー)」で、貴重なアナログ・レコードをLINN(リン)の約400万円のプレーヤーなどハイエンドのオーディオシステムで聴く『レコードの達人』を偶数月に開催中。最新刊は『岩田由記夫のRock & Pop オーディオ入門 音楽とオーディオの新発見(ONTOMO MOOK)』(音楽之友社・1980円)。

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