2023年3月10日、東京駅八重洲口に「東京ミッドタウン八重洲」がグランドオープンします。東京ミッドタウン八重洲の商業ゾーンには、「ジャパン・プレゼンテーション・フィールド~日本の夢が集う街。世界の夢に育つ街~」のコンセプトのもと、ジャパンブランドの価値を世界に発信する拠点にふさわしいこだわりの店舗が集結。グランドオープンに先立って行われた内覧会で、そのお店の数々を一足先に体験してきました。
文・写真/大島あずさ
国産ワインを”カップ酒”スタイルで楽しむ
3月7日に開かれた記者会見と内覧会。会見のあと、向かった先は、2階にある「ヤエスパブリック」(ヤエパブ)です。約820平方メートルの空間に、「人と場所、文化が重なる。」をコンセプトとして、街の繁盛店など「他では見られないヤエスパブリックならではの『個“人”性』が光る」(三井不動産の資料より)多様な11店舗を集めた新しい八重洲のパブリックスペースです。
個人的に注目していたのが、創作和食「スタンドBUCHI」。東京都渋谷区の神泉で“伝説の繁盛店”と言われた「立喰酒場&坐房buchi」が、閉店から10年を経て新たな形で復活したからです。
おススメしたいメニューは、瀬戸内海に浮かぶ「大崎上島(おおさきかみじま)」(広島県大崎上島町)の塩田跡の池で育った牡蠣と車海老です。牡蠣は、一般的な養殖場よりもゆとりのある間隔で育てているため、栄養もたっぷり含んでいるそうです。
メニューの中から、この「塩田熟成 生牡蠣」(1個500円)を注文します。生牡蠣が目の前に置かれると、爽やかな海の香りがフワッと鼻に抜けました。淡いピンク色の薬味がのっていて、色彩も鮮やか。滑らかでみずみずしい食感が口の中で広がります。そして、薬味の華やかできりっとした酸味が効いています。聞くと、フランボワーズヴィネガーでマリネされたエシャロットとのこと。繊細な逸品に触れて、自然と笑みがこぼれます。
海の恵みがギュッと詰まったような旨みと香り……。この余韻で、昼間なのに、お酒を一杯いきたい気分になりました。
牡蠣を養殖している「ファームスズキ」のホームページ(HP)によると、「よりきれいな水で生きものたちを管理するため井戸を掘り、地下から汲み上げた地下海水を使用」。だから、よどみのないすっきりした味になるのだなあ~としみじみ感じられる美味しさでした。
他にも、「雲丹クレソン」や、肉や野菜を鍬(くわ)で焼いた料理などお酒のアテにもってこいの料理が目白押しです。もちろんお酒も魅力です。
特に惹かれたのが、女将の岩倉久恵さん(52歳)が推す日本のワイン。山梨県や北海道など各地のワイナリーから選んでいます。そして、飲み方が、なんとも個性的なんです!
通常は、ボトルやグラスで頼むと思うのですが、ここでは“カップ酒”スタイルで楽しめるのです。仕事のパートナーでもある岩倉さんの夫が広島出身。「Cup」の赤いロゴが可愛いカップ酒のデザインは、プロ野球「広島東洋カープ」をイメージしたそう。こんな遊び心も、このお店の大きな魅力です。ワインのカップ酒は、白・ロゼ・赤の3種から選べて800円。以前のお店にはなく、今回が初めての試みです。
岩倉さんは、国産ワインが今よりも流通していなかった2004年ごろ、日本の風土に合った葡萄づくりに真摯に向き合う生産者たちと出会い、その熱意が感じられる美味しい国産ワインに魅了されたそうです。以来、岩倉さんは国産ワインの素晴らしさを伝え、作り手と消費者との架け橋となる活動をしてきました。
日本酒のカップ酒も、岩倉さんのこだわりの一つです。現在、店頭にあるのは20種。島根県松江市の銘酒「豊の秋」(米田酒造)など知る人ぞ知る地酒がズラリ。カウンターに並んでいるのでラベルを見ながら、カップ酒を傾けるのも一興です。
「“食”は心と心を繋げるので言葉が通じなくても、この東京駅前という立地を活かしたインバウンドにも期待して、世界に向けた国産ワインやお酒の発信地として、この場所を活用したい。『BUCHI』は、ここに来ればなんか元気になれる、そういう店だと思います」
こう、岩倉さんは、国内外の多くの人たちとの出会いを心待ちにしていました。