おとなの週末・京都旅

おとなの週末・京都旅 京都力に癒されて 前編

“整う”というワードが合言葉のように飛び交っている昨今のサウナブーム。深く根付いた銭湯文化とともに、京都でもサウナ人気は急上昇しているようです。そんな中、“京都をいただく”ともいうべき、京都の自然力を体感する施設が増えて…

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“整う”というワードが合言葉のように飛び交っている昨今のサウナブーム。深く根付いた銭湯文化とともに、京都でもサウナ人気は急上昇しているようです。そんな中、“京都をいただく”ともいうべき、京都の自然力を体感する施設が増えています。市内の思いがけない場所に、緑豊かな山間部に、そして古くから蒸し風呂文化のある比叡山の麓に。ゆったり癒しの時を過ごす……そんな京都の自然に心も身体も委ねるご提案。

美山の自然に囲まれた、完全貸し切りの発酵温浴サロン

京都市内から北東へ車で1時間半ほど。かやぶきの里で知られる南丹市美山町に酵素温浴『発酵人間』がオープンしたのは2022年の3月。電気やガスのエネルギーに頼らない、微生物の発酵熱だけを活用するという、エコな温浴が楽しめる場所です。

「うちではヒノキのおが粉と美山の米ぬかを使っています。その発酵する熱は中心部で70℃くらいにまで上がり、入浴時の体感温度は40℃ほど。人にもよりますが15分~20分ほどで身体の芯までポカポカになりますよ」と教えてくれたのは高市寛子さん。大阪の発酵温浴施設でともに働いていたパートナーの中井崇太さんと共同で店をオープンさせました。

温浴用の桶はスギの無垢材、床材はヒノキのおがくずで森林浴のようないい香りが漂う。タテ200cm×ヨコ120cmと大きめの造りでゆったりとくつろげる。

「米ぬかは地元農家のものを使い、使用後のおがくずはそのまま近隣農家に有機肥料として使ってもらっています。美山の人たちは発酵の力をよく知っているし、地産地消で地域循環に繋がるということも、ここを選んだ理由のひとつです」

窓を開ければ正面に里の風景が広がり、開放感もいっぱいの温浴室には大きめにあつらえた桶が4つ並びます。砂風呂のようなスタイルですが重さはほとんどなく、フカフカのおが粉に包まれ夢心地。温浴後の肌のしっとり感も際立っています。

フカフカの床材は発酵熱で70~75℃くらいまで上がるが体感は40℃ほど。普通の入浴とあまり変わらないのでのぼせなどの心配はないそう。
豊かな自然と里山の文化が残る美山町。鳥のさえずりや四季折々の景色が癒しの時を演出してくれる。

「米ぬかの良さをそのまま伝えたいので脱脂していない米ぬかを使っています。その分メンテナンスが大変ですけどね(笑)」

桶を出たらシャワーを浴びて外気浴のデッキへ。発酵温浴は身体の深部まで温めるため、二次発汗も長く続くのが特長。山を眺めながら風に当たり、汗が引くまで自然に包まれのんびり休憩です。

脱脂しいていない米ぬかを使うためメンテナンスには手間をかけている。その甲斐あって入浴後の肌はしっとり。
美山の自然に囲まれた外気浴スペースのデッキ。この開放感は他所ではちょっと味わえない。

「発酵人間」という屋号は、内からも外からも発酵の力を体感してもらいたいというコンセプトから生まれた名前だそう。休憩中には玄米酵母菌と黒糖を発酵させたオリジナルのドリンクもいただけます。

「うちはどこからも近くない、わざわざ来てもらう場所です。美山の四季折々の美しさを楽しんでいただくだけでなく、初めての人や子連れでも安心して過ごせる、サロンのような居心地の良い空間にしたいです」とのこと。

2時間貸し切り制で、家族や友人同士で気兼ねなく過ごせる完全プライベートというのもうれしい。

オーナーの中井崇太さんと高市寛子さん。看板のグラフィックは美山の山々をデザインした。

京都の真ん中で「整う」、隠れ家サウナ

京都市内、賑やかな町の中とは思えない風情たっぷりのサウナも誕生しています。烏丸御池駅や二条城前駅から徒歩5分ほどの路地奥に佇む『MACHIYA:SAUNA KYOTO』は、一棟貸し切りサウナとして2022年7月にオープンしました。

西洞院通の目立たない入口を奥に進むと築160年の京町屋が現れます。玄関を開けると中は昼間でも薄暗くひっそりとした雰囲気。もともとは日本画家がアトリエとして使っていた家で、その前は京友禅の工房だったそう。

高級宇治抹茶で知られる「丸久小山園 西洞院店」の正面左手通路を抜け、暖簾が見えたらそこが「MACHIYA:SAUNA KYOTO」だ。

85℃で熱気ムンムンなサウナ室は塗り壁を水墨調に仕上げたシックな空間。サウナ室の向かいには、いかにも町家らしい小さな中庭に面した広い風呂場があり、引き戸を開けるとヒノキのいい香りが漂います。壁面までヒノキで覆った水風呂は、夏場はチラーで冷水を供給し15度を保ちます。

電気ストーブで85℃に設定されたサウナ室。温度・湿度は調節可能。塗り壁を水墨調に仕上げたシックな空間だ。
セルフでアロマロウリュができ、アロマオイルも用意されている。
壁にもヒノキ材を張った水風呂。チラーを増設した贅沢なつくりで夏も冷水を供給する。お湯も使えるので温浴も可能。

ロッキングチェアを設置した和室は、“整う”ために用意された空間。目の前の縁側に出てみれば、京都の四季をたっぷりと感じられるひとときになるはずです。

周囲の喧騒が届かない坪庭にはいい風が吹き抜ける。季節を感じられる外気浴は各地にサウナを造る森さんのこだわりポイントだ。

この隠れ家サウナは国内5都市の市街地で贅沢なサウナ空間を提供する「RE:SAUNA」シリーズの一軒。

「5都市で展開している「RE:SAUNA」は、それぞれの都市の魅力を反映させた個性的な造りにしています。身体を整えるだけでなく、滞在時間を通して心身ともにリラックスできる体験の提供がコンセプト。またカップルや友人同士でも楽しめるよう男女共用の貸し切りを基本にしています。ここ京都では玄関脇の茶室、4Kスクリーンを置いたリビングや寝室がある2階も含め、歴史ある建物を存分に楽しんでもらいたいですね」と、手掛けた株式会社MOPUSの代表・森清隆さん。

2階のリビングは日本画家・小林雨郊がアトリエとして使っていたという広々とした空間。ほかに寝室用の和室がある。
にじり口もある玄関脇の茶室には道具も一通り揃っている。持ち込みは自由とのことで、抹茶を持参して利用することも可能だ。

3時間貸し切りのほか宿泊利用もでき、飲食の持ち込みも自由とのこと。京都旅行の際には、京の仕出しでも活用しながらのサウナ一泊も楽しい体験となりそうです。

築160年ほどの京町屋を一棟丸ごと独り占め。ショートステイや宿泊のプランもある。
苔むした坪庭が静けさを演出。サウナ室など一部リノベーションした箇所以外は昔のままの姿を保っている。

京都美山の発酵温浴「発酵人間」

住所/京都府南丹市美山町大野文字畾地5-2
電話/090-9547-4410
営業時間/9:00~19:00(2時間貸し切り制)
休業日/木定休
備考/利用料ひとり5,000円(税込)(※4月1日から6,000円)

MACHIYA:SAUNA KYOTO

住所/京都府京都市中京区三坊西洞院町561西側奥
電話/090-9838-9637
営業時間/9:00~22:30
休業日/不定休
備考/予約はWEB予約のみ(resauna.jp/kyoto)
1セッション3時間(平日8,000円、土日祝9,800円/ともにおひとり)。
利用は2名~6名まで、宿泊・ショートステイ可

編集/エディトリアルストア
取材・執筆/成田孝男、渡辺美帆
写真/奥田正治

※情報は令和5年4月1日現在のものです。

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