紀子さま手作りのローストビーフを、水割りを片手に楽しむ 夫の海外赴任に同行した和代さんは、米国・フィラデルフィアとオーストリア・ウィーンの計8年間の海外生活で、料理の腕をあげて自宅でパーティを開けるほどのレパートリーを持…
画像ギャラリー5月6日、英国ロンドンのウェストミンスター寺院で行われるチャールズ国王の戴冠式(日本時間5月6日夜)にご出席される、秋篠宮さまと紀子さま。秋篠宮ご夫妻が外国王室の即位式や戴冠式にご出席されるのは初めてである。英国留学のご経験がある秋篠宮さまはもちろん、帰国子女である紀子さまも語学が堪能。きっと世界中の参列者と親しく交流されることだろう。ご結婚の際に住まわれた新居にシステムキッチンを作られた紀子さま。得意料理は、海外生活の折に料理の腕を磨いたお母さま直伝の「母の味のローストビーフ」だという。今回は、紀子さまの新婚のころの物語である。
紀子さまはフィラデルフィアとウィーンで8年生活した帰国子女
1990年6月29日、礼宮さま(現・秋篠宮さま)と紀子さまはご結婚され、新宮家「秋篠宮家」が創設された。秋篠宮家ご夫妻が最初に住まわれたのは、故・鷹司和子さんが住んでいた築59年という古い家屋を改築した家だった。木造平屋105平方メートルの3LDKSという、皇族としては異例といえるささやかな新居だった。
この新居の台所に紀子さまのリクエストで設けられたのが、L字型のシステムキッチンだった。通常、ご夫妻の食事は別棟で調理人が下ごしらえした食材を新居に運び、台所で仕上げてお出しする。
しかし、「時間の許すかぎり自分で作って差し上げたい」という紀子さまのご希望を受けて、キッチンが作られることになったのだ。
紀子さまの料理の先生は、母の和代さんという。学習院大学経済学部教授であった父の川嶋辰彦さんは、東京大学経済学部を卒業後、同大大学院で修士課程を修了し、その後、米国ペンシルべニア大学に留学して博士号を取得した国際派の学者である。紀子さまは生後1カ月で父の海外留学に同行し、6年近くをフィラデルフィアで過ごした。そして、現地の公立小学校に通って、さまざまな子どもたちと交流した。
川嶋家は一度東京に戻ってのち、紀子さまが小学5年のときに再び海外へ。父がオーストリア・ウィーンにある国際応用システム分析研究所に招かれたのである。家族でウィーンに移り住み、そこで2年間過ごした紀子さまは英語に加えてドイツ語も堪能になった。さらに、海外生活中にはオランダ、フランス、エジプトなどに家族旅行している。
帰国後は、学習院女子中等科1年に編入。子どものころの語学の吸収力は高い。紀子さまは人と話すときに、日本語より先にドイツ語が頭に浮かんでしまって困ったほどだったという。
紀子さま手作りのローストビーフを、水割りを片手に楽しむ
夫の海外赴任に同行した和代さんは、米国・フィラデルフィアとオーストリア・ウィーンの計8年間の海外生活で、料理の腕をあげて自宅でパーティを開けるほどのレパートリーを持っていた。紀子さまに伝えた母の味は「ローストビーフ」だという。
秋篠宮家の新居のキッチンには、大型冷蔵庫が置かれていた。それは秋篠宮さまの「水割り用の氷を作りたい」というリクエストによるものだった。友人たちを招いて紀子さま手作りのローストビーフを囲み、水割りを片手に楽しそうに歓談されているお二人の様子が目に浮かぶようである。
文・写真/高木香織
イラスト/片塩広子
参考文献/『秋篠宮家25年のあゆみ』(朝日新聞出版)、『フライデー 礼宮さま紀子さまご成婚記念緊急特別号』(1990年7月17日増刊号)、『美智子皇后 ともしびの旅路』(渡辺みどり著、小学館)、『皇后さまと子どもたち』(宮内庁侍従職監修、毎日新聞社)
高木香織
たかぎ・かおり。出版社勤務を経て編集・文筆業。皇室や王室の本を多く手掛ける。書籍の編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『美智子さまから真子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』(ともにこう書房)、『美智子さまに学ぶエレガンス』(学研プラス)、『美智子さま あの日あのとき』、カレンダー『永遠に伝えたい美智子さまのお心』『ローマ法王の言葉』(すべて講談社)、『美智子さま いのちの旅―未来へー』(講談社ビーシー/講談社)など。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(共著/リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)。
片塩広子
かたしお・ひろこ。日本画家・イラストレーター。早稲田大学、桑沢デザイン研究所卒業。院展に3度入選。書籍のカバー画、雑誌の挿画などを数多く手掛ける。