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京都北部に位置する福知山市。古くは明智光秀ゆかりの城下町として知られ、明治以降は京阪神と北近畿を結ぶ鉄道の要として栄えた街です。京都市内から山陰本線で2時間弱、車で90分の距離。森の京都としておいしいものがいっぱいです!

鬼伝説が残る峠でいただく、太くてかたい「鬼そば」

福知山の北側に広がる大江山連峰は、鬼伝説で有名な一帯。平安時代の酒呑童子が有名ですが、そのほかにも聖徳太子の弟・麻呂子親王や、崇神天皇の弟・日子坐王の鬼退治の伝承があり、「鬼の博物館」があることでも知られています。しかし、当地の名物「鬼そば」は鬼伝説とは関係ありません。

太くてこわい(堅い)鬼そばの〈かけそば〉。普通盛り850円(税込)。温冷選べるが冷たいのが基本の鬼そばだ。

鬼そばの元祖『大江山鬼そば屋』は江戸の終わり頃に雲原村の宿場登録料理人だった初代が、宮津藩の大名行列にそばを献上したのがはじまり。これが評判で2代目が明治29年にそば茶屋を構えました。以来、雲原の峠で手打ち十割のそば屋を営んでいます。鬼そばの名はこの評判だった太くてかたいそば、「こわい(堅い)き(生)そば」を旅のお客さんが「怖い鬼そば」と勘違いして広まった名前なのだそう。

国産の玄そばを挽いた十割そば。太さの違う3種のそばを提供しているが、挽き方は変えず、こね方や打ち方で調整している。

雲原産のそばは現在収穫量が少なく特定の時季にしか扱っていないそうですが、通年で国産玄そばの挽きぐるみで作る手打ちの十割そばを出します。名物の「鬼そば」はすすれない太さのそばと、昔から変わらないつゆの味が自慢。噛みしめると香りが鼻に抜ける太いそばを、冷たいかけつゆでいただくのが基本です。

「この辺りはもともと蕎麦がとれるので各家庭でそばを打っていました。名物というよりは郷土料理の田舎そばですね。太くて不ぞろいで堅いのが雲原の鬼そばらしさです」と教えてくれたのは、七代目店主の“なゝ姫”こと佐々井飛矢文(としふみ)さん。埼玉県出身の佐々井さんと五代目女将の中村麻美さんが現在のこの店の共同オーナーです。

共同オーナーの五代目女将・中村麻美さんと七代目店主・なゝ姫こと佐々井飛矢文(としふみ)さん。一度は閉店が決まった店を料理上手のふたりが引き継いだ。

だしづくりを担当するのはこの店に40年立ち続ける麻美さんで、「食通好みの味を作るのにそば嫌い」として有名だった三代目の名物女将から教わった味を守ります。
だしはソウダガツオやサバなど複数の削り節に添加物なしの生醤油が要で、クセのない素直な味で塩分も控えめなため飲み干していく人が多いそう。

削り節を贅沢に使用しただしづくりの担当は女将の麻美さん。名物女将だった三代目から教わった店の味を40年間守り続ける。

常連さんにも飽きられないようメニューは多彩な品揃え。太さの異なる3種の十割そばの食べ比べや、卵を使わず中力粉と水で衣を作る江戸風の天ぷら、舞鶴港から仕入れた魚のヅケや地場で獲れたシカなど、一度じゃフォローしきれないメニュー数が並びます。

太さの違う3種のそばに天ぷらがセットになった〈初味定食〉(2,200円・税込)。右が鬼そば、その隣が極細の七姫そば。つゆは伝統の味、京風など麺によって異なる。
鬼そばにとり天と大根天、野菜天が乗った〈なな天そば〉(並盛1,300円・税込)。塩麹に漬けた柔らかなとり天とトロトロの大根天。中力粉と水のみで江戸風を再現した天ぷらが人気だ。
テーブル席と座敷席のほか、入口正面にカウンター席がある。11時から15時くらいまでの営業で、この日は昼には満席で待ち時間ができてしまうほど混み合った。
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おとなの週末Web編集部
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