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100年前の基本を守る「踊せんべい」の優しい甘さ

福知山のどこかで「ドッコイセー」というお囃子が聞こえたらそれは福知山音頭です。福知山城の築城にあたった領民たちの掛け声が今に伝わったものと言われ、盆踊りや夏祭りなど福知山には欠かせない囃子ことば。大正9年創業の『ちきり屋』には、そんな福知山音頭をモチーフにした銘菓があります。大正時代から変わらぬ味を守るのは四代目の足立大介さん。

「〈踊(おどり)せんべい〉は良質な材料にこだわった鶏卵せんべいです。初代・秀雄が福知山名物になるようなお菓子を作ろうと志して完成させました。地元・丹波産の卵と国産の小麦粉、はちみつ、上白糖を使い、毎日店の奥で丁寧に焼き上げていきます」

50年以上働き続ける〈踊せんべい〉を焼く機械は、一番おいしく出来上がるよう細かく調整されており、機械を一周するあいだに焼きあがる。

サクサクの食感、ふわりと広がる優しい甘さと香ばしさ、くちどけの良さ。この素朴で上品な味わいは材料の良さだけでは完成しません。

「配合が命で一年間同じように作るには季節によって配合や焼き加減が違ってきます。変わらない味を作るには変えていくことも必要なんですね」と足立さん。父から教わったという一子相伝の技で100年変わらぬ味を届けています。

提灯の形に桔梗や盆踊りをモチーフにした銘菓〈踊せんべい〉(10袋入箱1,080円・税込)。麦の中心部だけを使った特等粉、国産生はちみつなど、良質な原料だけで作ったやさしい味わい。

もうひとつ人気なのが〈踊せんべい〉と同じカステラ生地を使い、焼き方を変えて柔らかに仕上げた〈踊かさね〉。ふっくら炊いた北海道産小豆の粒あんをくるんだ和菓子で、福知山城で昨年開催された竜王戦に提供されたことで注目を集めました。

北海道産小豆の粒あんを〈踊せんべい〉の生地で包んだ〈踊りかさね〉(220円・税込)。同じ生地だが焼き加減を変えたしっとり柔らかなお菓子で、苺や栗などを包む季節限定商品もある。

〈踊せんべい〉と同じ材料を使ったパンケーキやフルーツサンドなど、新しいお菓子の開発にも積極的。「初代が完成させた味をお届けできるよう基本を守りながら、新しい技にも挑戦していきたいですね」と足立さん。まだまだ新しいスイーツが誕生しそうな予感でいっぱいです。

福知山城の南側にある店舗のほか、福知山市内のお土産屋やスーパーなどでも扱っている。絵柄の異なる「光秀せんべい」も人気だ。
「地元の人たちのお使い物や内祝いにも重宝されています」と語る四代目の足立大介さん。

『鳥名子』名物の鴨すき、昼から食べたいならここ!

福知山に本店を持つ『鳥名子』の名物といえば鴨肉のしゃぶしゃぶ〈鴨すき〉。いくつかの系列店があり、城下町の風情が残る一角にある『柳町』もそのひとつ。明治時代に建てられた町家を改装した建物で、通りに面した一角はカフェ&バーとして営業しておりおしゃれな雰囲気です。

由良川堤防沿い、歴史の面影が残る通りに面した『柳町』。斜め向かいには系列の『とりなご久兵衛』、同じ通り沿いに『鳥名子』オーナーが手掛けた古民家ホテル『菱屋』もある。

『鳥名子』本店は夕方からの営業ですが、こちらはランチ営業があり昼でも鴨すきがいただけるので観光客にも人気。ダイニングはゆったりと席が配置されたテーブル席。他に個室や2階に座敷席もあり、グループや会食などにも利用しやすいのが特長です。

靴を脱いであがるとゆったと席が配置されたダイニングが現れる。廊下の先に個室があり、2階にも座敷席がある。

名物〈鴨すき〉は生でも食べられるくらい新鮮な京鴨ロースが自慢。鴨肉と鴨団子は本店と同じで、定番の白髪ねぎではなく九条ねぎが添えられます。昆布としいたけベースのだしが温まったら、最初に鴨団子を投入。ネギを湯通しし、鴨ロースをしゃぶしゃぶします。九条ねぎはさっとくぐらせるとシャキシャキ食感と香りが楽しめ、くったり煮込むと甘くとろける味わい。臭みのないさっぱりした鴨肉のうま味をネギとともに噛みしめつつ、食べ終わる頃にはだしが鴨肉のコクに満ちた濃厚なスープになっています。別途の注文になりますが、〆は自家製そば、雑炊、稲庭うどん、ラーメンの4種類から選べます。

先に投入した鴨団子に火が通り、旨みがスープに行き渡ったら九条ねぎを入れ、鴨ロースをしゃぶしゃぶ。たっぷりのネギを肉で巻いていただく。
一人前3,000円(税込)の名物〈鴨すき〉は、だしと鴨肉、鴨団子、福知山産の九条ねぎがセット(写真は3人前)

『柳町』だけのオリジナルメニューもあり、ランチの数量限定〈京地どりの親子丼〉はうま味の強いブランド鶏「京地どり」を使用。プリっとした弾力のある食感と肉の味、炭火の香りが濃厚なつゆに負けていません。余熱でからめた濃厚卵も地元産。

京地どりのモモ肉を炭火で炙ったランチ定食の一番人気〈京地どりの親子丼〉1,200円(税込)。昨年、福知山城で開催された竜王戦では藤井聡太六冠にチョイスされた。

カフェ&バーのドリンク類も京都産の和紅茶や丹波・丹後の日本酒、福知山産のブドウを使ったワインなど、地域の食の豊かさを堪能できる品揃えとなっています。

「丹波やその周辺には小規模でもいいものを作る食の生産者がたくさんいます。カフェ&バーはそういう生産者の思いやこだわりを知っていただける場にしていきたいです」と店長の大槻直城さんは語ります。

通り沿いのカフェ&バーはガラス張りで明るい雰囲気。福知山周辺の蔵元の日本酒など、アルコールも各種揃えている。
「鳥名子名物のからあげのほか、京地どりの炭火焼きや夜久鹿の藁焼き、地元野菜のサラダや天ぷらなど、福知山の食材にこだわった柳町ならではのメニューをご用意しています」と店長の大槻直城さん。

豊かな自然に恵まれ、そのおいしいをたっぷり堪能できる福知山。京都市街から車でも鉄道でもアクセスも至便な森の京都は、“更なる京都”のひとつですよ。

大江山鬼そば屋

住所/京都府福知山市雲原1248
電話/0773-36-0016
営業時間/11:00~15:00くらいまで
休業日/火・水(祝日は開店)

ちきり屋

住所/京都府福知山市字岡ノ一町23
電話/0773-22-3632
営業時間/月~金9:00~17:30、土9:00~17:00
休業日/日・祝
備考/2023年5月下旬より10袋入箱1,080円(税込)→8袋入箱 1,100円(税込)に変更

柳町

住所/京都府福知山市下柳町21番地
電話/0773-22-1809
営業時間/レストラン:昼11:30〜14:30 (L.O 14:00) 、夜18:00〜23:00 (L.O 22:00) ※日・祝は18:00〜22:00 (L.O 21:00)
カフェ&バー:11:00〜16:00、20:00〜25:00
休業日/年末年始のみ

編集/エディトリアルストア
取材・執筆/渡辺美帆、成田孝男
写真/奥田正治

※情報は令和5年5月2日現在のものです。

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おとなの週末Web編集部
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