香の燃え進みで時間の経過がわかる「時香盤」
「時香盤(じこうばん)」は、香時計の一種で、四角い箱に灰を敷きつめ、その上に木型で”迷路の道”のような溝を作り、抹香(粉末の香)を盛ります。抹香の端から火をつけ、燃え進んだ長さによって時間の経過がわかります。
時香盤について調べてみると、使う抹香は、位置によって香りを変えて、匂いでも経過をわかるようにしていたとか。火が達した時に鈴を吊っていた糸が切れる仕組みにして、落ちた時の音色で、今でいう”アラーム”の機能を持たせた使われ方もあったようです。
「源氏香」は、香り当て競技のような遊び「組香(くみこう)」のひとつとして親しまれました。香りの答えは、「源氏香図」という独特の図柄で表現されます。その図柄の判子「源氏香図 判子二種」の写真なども載っています。
現代の香にはラベンダーやペパーミントも
江戸時代から続く松栄堂は、生薬にも使われる桂皮(けいひ)や、そのものが芳香を放つ香木など、貴重な天然香料を主な原料に使用し、熟練した職人の技、研ぎ澄まされた精神と感覚で、最良の香りを作り上げています。
香りの種類は、仏さまに供える伝統的なもの以外に、樹々の若葉を思わせる香りやラベンダーなど、リフレッシュできそうなものまで幅広くあります。
実際に、くつろぎの香り「Xiang Do(シァン ドゥ)ペパーミント」と、高級料亭などで使われているという「芳輪 白川」で、初めてお香を焚いてみました。二つとも『松栄堂』ウェブショップで 購入。7cm長さ・20本入りで880円でした。
ペパーミントは、いわゆるお線香のような香りが全面に出る感じではなく、爽やかなミントと花の蜜の甘さが合わさったようなサラッと涼しげな軽やかさ。
白川は、白檀(びゃくだん)”別名サンダルウッド”と呼ばれる、最もポピュラーな香木の香りです。とても馴染みやすく、上品で洗練された残り香が、すっきりしています。
本書は、お香に使われる素材などの情報が、豊富なカラー写真とともに得られるのが大きな魅力。初心者にも、とてもわかりやすい構成です。実際に香を焚き、好きな香りに包まれながら本書を紐解けば、香を軸にした日本文化への理解がさらに進みそうです。
文/大島あずさ