五島列島は噂通りの美食の楽園 フーディーもきっと満足な“海の幸・山の幸”をご紹介!

五島(ごとう)という地名が存在感を増している。大小152の島々からなる長崎県五島列島は、長崎から西へ約100キロ、日本列島の西端に位置し、古く遣唐使の時代からアジアとの交流の要所として栄えた。2018年には「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として世界文化遺産に登録。NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』(2022年10月~2023年3月)の舞台のひとつだったことも記憶に新しい。手つかずの自然をふんだんに有し、海はキレイだし、キリスト教や遣唐使に関連する施設や建造物もたくさんあり、とにかく見どころは盛りだくさんだ。近年は島外からの移住者も増えているのだとか。そんな話題にこと欠かない五島だが、今回は五島の“美味しい”ものにフィーチャーして紹介したい。

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福江島の黒瀬富江漁港。古き良き港町の雰囲気を残す
コバルトブルーの大海原が広がる

発祥の地で味わう名物「五島うどん」 食べ方の定番は「地獄炊き」

五島の名物といって、「五島うどん」を思い浮かべる人が多いんじゃないだろうか。たしかに、五島の土産物店には、「ちょ、どれを選べばいいの?」と、圧倒されるくらいたくさんの種類の五島うどんが並んでいる。

五島うどんとは椿油を使って手延べした細いうどんのこと。奈良・平安時代に遣唐使がその製法を伝えたとされ、日本のうどんのルーツとも言われている。細麺でありながらコシがあるのが特徴で、煮込んでも煮崩れしにくいこともあり、鍋の締めとしても大活躍! 五島の家庭では、うどんが入った、ぐつぐつ煮えたぎる鍋を囲み、焼きあご(飛魚)の出汁や生卵に絡めていただく「地獄炊き」という食べ方が定番なんだとか。個人的には、つるん食感をいかし、パスタ感覚で食べるのもおすすめだ。

「地獄炊き」。ぐつぐつ煮えたぎっていても、しっかり芯を残しているところがすごい!

なお、五島うどん発祥の地ともいわれる新上五島島の船崎地区では、今も手延べ製法でうどんが作られている。「船崎饂飩伝承館」では、うどん作りの行程のうちの一部を体験可能だ(料金は大人3,000円、子ども2,200円。3日前までの予約が必要)。最初は恐る恐るだったが、切れそうで切れない生地の耐久性にすっかり安心して、無邪気にうどん作りに興じた。なお、うどんは乾燥の行程を経て、後日、自宅に送ってもらうことができる(送り先が複数ある場合は2件目からは有料)。

卵を絡めても美味しくいただける
「船崎饂飩伝承館」でのうどん作り体験。こちらは麺を2本の棒にかけ、細くしていく「かけば」の作業
土産物屋には、たくさんの種類の五島うどんが並ぶ

船崎饂飩伝承館
https://shinkamigoto.nagasaki-tabinet.com/spot/10019

「矢堅目の駅」の天然塩

新上五島町の「矢堅目(やがため)の駅」は、円錐形の奇岩と複雑な海岸線を描く美しい景観の矢堅目公園に隣接する。「駅」といっても電車の通る駅じゃない。この施設は物産館で、併設の工房「矢堅目の塩本舗」では五島の清冽な海水をくみ上げ、海水の塩を結晶化させるという手法で塩づくりを行っていて、その様子を見学できる。矢堅目の塩をはじめ、五島の土産物を販売しており、海に面したテラス席でいただく、「塩バニラソフトクリーム」(300円)は格別だ。

「矢堅目の塩本舗」。五島の海水を薪で炊き上げた自然海塩を作っている
原料は五島の海水のみ! 添加物や加工助剤などを一切加えていない
「塩バニラソフトクリーム」。塩がソフトクリームの甘みを引き立てる

矢堅目の駅
https://shinkamigoto.nagasaki-tabinet.com/spot/10142

「花笑み きくや」の手打ち麺「きしくゾロ」

西海国立公園内にある魚津ヶ崎公園は、青い海に浮かぶ数々の島を一望できる、格好の“映え”スポットだ。魚津ヶ崎公園内は春は菜の花、その後は紫陽花、夏はひまわり、秋はコスモスと季節ごとの花を楽しめる場所としても知られている。

「花笑み きくや」は、その公園内に位置する古民家カフェだ。座敷で寛げる室内の席のほか、勇壮な立小島と海を見下ろす広々としたウッドテラスがある。リモートワークにも最適だ。小腹がすいたら、ぜひ岐宿(きしく)町の郷土料理である地粉で作る手打ち麺「きしくゾロ」(750円)を味わってほしい。鶏出汁のやさしい味わいで、心身ともに満たされるはず! 地元で採れた野菜を餡にし、カカラノ葉を敷いて蒸した饅頭「花笑みだんご」でほっこりするのも悪くない。

公園内に位置する木造のカフェ「花笑み きくや」。真横にはキャンプ場がある
ウッドテラスからは立小島や空と海のパノラマが楽しめる
「きしくゾロ」。丁寧にとった鶏出汁が滋味深い
蒸かしまんじゅう「花笑みだんご」。このあたりでは、人が集まる時には昔から作られていたという

花笑みきくや
https://hanaemikikuya.com/

築100年以上の古民家を移築した食事処「椿茶屋 香珠子」

五島市にある食事処「椿茶屋 香珠子(こうじゅし)」(完全予約制)は、魚介類や野菜、五島牛や五島美豚など五島自慢の食材を、囲炉裏で焼いて楽しむことができる、地元の人にも観光客にも人気の店だ。炭火でじっくり焼きあげた食材は、素材そのものが上質、かつ新鮮なので余計な味付けは不要。塩や醤油などでシンプルにいただきたい。自家製の柚子胡椒も味わい深く、こちらはお土産用に購入することもできる。

築100年以上の民家を移築した藁葺き屋根の建物は存在感たっぷり

食材の香りを移した煙だけでも一献できそうだが、ここはぜひ地元のお酒を合わせたいところ。イチオシは五島列島酒造が造る焼酎「五島麦」「五島芋」。どちらも飲みやすく、そして、自己主張しすぎることなく、五島が誇る極上の食材たちに寄り添ってくれる。

五島の海の幸・山の幸を囲炉裏で焼き上げる

椿茶屋 香珠子
https://goto-sight.com/cyaya/cyaya.html

「長崎五島 ごと」のレトルトカレー

まずは自宅で五島を味わってみたいなら、「長崎五島 ごと」が販売している、レトルトカレー「五島の鯛で出汁をとったなんにでもあうカレー」なんていかがだろう? シリーズ累計100万袋を販売している人気アイテムで、昆布と五島近海で水揚げされた鯛を使った出汁がベースとなっている。着色料・香料は不使用。驚くくらいにさらっとしていながら旨味はたっぷりだ。

「チーズ」「チキン」「ポーク」「ビーフ」など、5種類のバリエーションがあるが、基本となるのは、「五島の鯛で出汁をとったなんにでもあうカレー プレーン」(250円)。具は入っておらず、カレーうどんやパスタソースなどさまざまなアレンジが楽しめる。五島牛や五島SPF美豚など、五島の高級食材を使った、ワンランク上の『五島の鯛で出汁をとったプレミアムな高級カレー』も気になる!

パッケージもかわいらしく、ちょっとしたお土産にぴったり! さらに、食品の製造過程で規格外品として廃棄されてきた鯛の頭や骨などアラを有効活用するといったサステナブルな一面も

長崎五島 ごと
https://nagasakigoto.co.jp

かんころ餅

「かんころ餅」は五島列島の代表的な郷土菓子だ。「かんころ」とは、五島地方の方言でサツマイモを薄く切り天日干ししたもののことを言うが、これをお餅に混ぜたのが「かんころ餅」だ。もち米の嵩を増やすために「かんころ」を混ぜはじめたことに端を発し、五島では現在も冬の保存食として手作りしている家庭は多い。その素朴でやわらかな甘さに虜になる人が続出中だ。

五島を訪れるたびに大量に仕入れ、冷凍保存して少しずつ食べるという人も少なくないそう

五島で1、2を争う人気のお土産 三井楽水産の「鬼鯖鮨」

三井楽水産の「鬼鯖鮨」は、五島を訪れる美味しいもの好きがこぞって狙っている、五島でも1、2を争う人気アイテムだ。福江港ターミナルや空港で販売しているが、早い時間に売り切れてしまうことが少なくない(と聞いて慌てて購入した)。

「あぶり鬼鯖鮨」。意外なほどさっぱりといただける

「鬼鯖鮨」は、「質の高い五島の魚を知ってほしい」という想いから生まれた逸品だ。東シナ海、五島列島の西沖で取れた真鯖を独自にブレンドした“鬼酢”で浅くしめ、生の鯖に近い味わいを作り出している。鯖はかなり肉厚だが、締め具合が絶妙で、ひとつ、またひとつと箸が進んでしまう。酢飯のクオリティも高く、聞けば五島の盆地で育てられる「ひのひかり」を使用しているのだとか「鬼鯖鮨シングル」(1,620円)が定番だが、表面を炙った「あぶり鬼鯖鮨」(1,620円)を好む人も多いという。ぜひ味比べをしてみたいところだ。

三井楽水産
https://www.onisaba.com

上五島で育った生マグロの握り。美味しいだけでなく美しい!
清廉な上五島の海水で育まれた生マグロは上質な脂が特徴だ

今回、紹介したのは、筆者が2泊3日の五島旅で、食し、購入したものの中から美味しかったものをピックアップしている。要は五島が誇る“美味しいもの”のほんの一部で、五島には、まだまだ“美味しいもの”がたくさんある。たとえば、ブリやヒラマサの養殖も盛んだ。地元産のハコフグを使ったハコフグ料理なんてものもある。春から夏にかけては、五島の海で育った天然うにを目当てに五島を訪れる人も多いのだとか。“一度も凍らせていない”生マグロは上五島地区の名産品のひとつ。猪や鹿などのジビエを使った料理を出す店もある。

そう、風光明媚な五島は、まさに“美食のパラダイス”。そのバリエーションの豊富さと質の高さには驚くばかりだ。都会で美食を食べ尽くした、フーディー(食通)たちの欲望もきっと満たしてくれるはず!

文・写真/長谷川あや

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