精米歩合や麹で変わる味の楽しみ方
市村:お米は磨くほどに雑味がなくなり、クリアな味わいになると言われています。例えば精米歩合が50%以上のものは「大吟醸」と分類が変わりますよね。
齋藤:過去には磨きも70%くらいは精白しないとお酒にならないと言われていましたが、今はわざと90%くらいの低精白で造ることもあります。
例えば「新政酒造」の「低精白純米酒 涅槃龜(にるがめ)96」は磨きを低くすることで、これまで雑味とされていたものが風味となっておいしいとされている代表例です。
市村:精米歩合96%ということですね。4%しか磨かないのでお米の味がダイレクトに感じられます。いわゆる精白(磨き)の違いで飲み比べてみるのも楽しいですね。
齋藤:上記の酒米の種類や精米歩合はラベルに表記されています。もうひとつ注目していただきたいのは、使用する麹菌です。先の製造方法(2)の「製麹」の部分ですが、「一麹(いちこうじ)、二酛(にもと)、三造り」と言われ、日本酒製造の最重要工程とされています。
市村:千葉県の酒蔵「寺田本家」の酒蔵見学に行ったことがあります。2016年冬の仕込みから、蔵内にすむ蔵付き麹菌を採取し、自家培養した麹菌(種麹)を使っているそうです。
齋藤:“蔵付き酵母”と呼ばれる、その蔵独自の昔から生息している酵母菌を使ったり再現したりする蔵も増えているように感じます。
しかし、自然界の酵母だけに頼るのは安定した酒造りが難しいという面もあり、国立醸造試験所が頒布する「協会酵母」を培養して造る蔵もありますし、同時に各都道府県の研究機関でも酵母の開発が進んでいます。
市村:蔵付き麹菌だからいいとか悪いとか、そういう話ではないですよね。選択肢は多いほうがいいと思いますし、多様性があることが楽しいです。