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根無し草になるな、漂うばかりで終わってしまう

吸収力を高めるにはどうすればよいのでしょうか。それはこのコラムのテーマである「独学力」を高めることとも通じますが、まず大事なことは、一つ所にとどまって深く広く根を張り、そこから多くのことを吸収することです。つまり、一つの教材に定めて、それを徹底的にやり込んで、その教材の内容を深く理解し、あらゆることを吸収しつくすことです。

根を張らない根無し草では、ただ漂うばかりで終わってしまいます。たとえば数学の問題集であれば、「問題を解いて答え合わせをし、間違っていたら解答を覚える」というだけの勉強でしたら、吸収することの少ない「根無し草学習法」です。

多くの問題集では、“ヒント”や“考え方のポイント”が書いてあります。そういう部分もくまなく読み取り吸収します。それは思考回路を形成する重要な部分です。解答からは、単に表面的なことだけでなく、目に見えない行間を読み取ります。つまり、なぜその発想が出たのか、どのような思考過程を経てその解答表現になったのか、何が省かれているか、それはなぜか、どのような計算の工夫がされているか、など、解答の行間や裏側にあるさまざまな発想・思考・工夫を読み取るのです。

「止まり木」を見つける

正解だった問題でも、別解があれば必ずその方法でも解き直し、使えるようにします。一つの問題でもさまざまな視点からとらえ、いくつもの解答が思い浮かぶことが数学力アップになるのです。こうした取り組みの差が、吸収力の差、ひいては学力の差につながります。

このように一つの教材を徹底的にやり込み、少なくとも2周、出来れば3周以上繰り返していくと、次第にその教材に愛着が湧いてきます。大事なところに線を引く。大事なことを書き込む。何度も繰り返す。いつも持ち歩き、暇があれば開く。何度もページをめくると、紙がペラペラになり、一方テキスト自体は膨らんで分厚くなる。それぐらいになるまで徹底的にやりこむことです。そうすれば自然と愛着が湧き、その教材を手にすると心が落ち着くようになります。そしてその内容が頭に焼き付くようになります。

教材を渡り歩く習性のある人も、ここまで一つの教材をやり込んで、その教材に惚れこんだときには、いつしかその教材は、落ち着いて羽を休めることのできる「止まり木」となっているはずです。

一つの教材を徹底的に

転校生の結末

学校で与えられた教材に徹底的に取り組むうちに、次第に結果が出だしたF君。表情も明るくなり、愚痴を言い合える仲の良い友達も出来ました。高校に上がるときには上位クラスに入り、順調に高校生活を終えることが出来ました。そして一浪はしたものの、私立大医学部へと進学することができました。

【トレーニング受験理論とは】
一流アスリートには常に優秀なトレーナーが寄り添います。近年はトレーニング理論が発達し、プロアスリートやオリンピック・メダリストはプロトレーナーから的確な指導を受けるのが常識。理論的背景のない我流のトレーニングでは、厳しい競技の世界で勝ち抜けないからです。自学自習が勉強時間の大半を占める受験も同様です。自学自習のやり方で学力に大きな差が出るのに、ほとんどが生徒自身に任されて我流で行われているのが実情です。トレーナーのように受験生の“伴走者”となり、適切な助言を与えながら、自学自習の力=独学力を高めていく学習法です。

圓岡太治(まるおか・たいじ)
三井能力開発研究所代表取締役。鹿児島県生まれ。小学5年の夏休みに塾に入り、周囲に流される形で中学受験。「今が一番脳が発達する時期だから、今のうちに勉強しておけよ!」という先生の言葉に踊らされ、毎晩夜中の2時、3時まで猛勉強。視力が1.5から0.8に急低下するのに反比例して成績は上昇。私立中高一貫校のラ・サール学園に入学、東京大学理科I類に現役合格。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。大学在学中にアルバイト先の塾長が、成績不振の生徒たちの成績を驚異的に伸ばし、医学部や東大などの難関校に合格させるのを目の当たりにし、将来教育事業を行うことを志す。大学院修了後、シンクタンク勤務を経て独立。個別指導塾を設立し、小中高生の学習指導を開始。落ちこぼれから難関校受験生まで、指導歴20年以上。「どこよりも結果を出す」をモットーに、成績不振の生徒の成績を短期間で上げることに情熱を燃やし、学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて難関大学に現役合格した実話「ビリギャル」並みの成果を連発。小中高生を勉強の苦しみから解放すべく、従来にない切り口での学習法教授に奮闘中。

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圓岡太治
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