1カ月計8時間の指導で成果
計算力不足と言うのはなかなか解消されないやっかいなものです。中学受験では学ぶべきことがたくさんありますので、塾からは課題は与えられますが、計算練習については本人の取り組みに任されることがほとんどです。ところが計算規則、筆算、分数計算、割合の計算など、基本的な計算の仕方が身に付いていない生徒は、ただ間違ったやり方を繰り返すだけで、なかなか改善されることがありません。
そういう生徒にもっとも必要なのは、間違いをひとつひとつ指摘しながら、正しい計算の仕方や工夫を教え、それが身に付くまで計算練習に付きそう伴走者(トレーナー)です。私がI君に行ったのはまさにそれでした。
I君への個別指導は週1回2時間でしたので、計算力の強化に取り組んだ1カ月のうち、上記の指導を行ったのは計8時間ほどです。それ以外は教えに沿ってI君が地道に計算練習を繰り返し、計算力をつけていきました。
それは1カ月で完了したわけではなく、I君が計算の重要性を認識してその後も研鑽を重ね続けたことで、さらに計算力は強化されました。このように、自学自習のやり方を身に付け、自分で実力を付けて行けるようにするのがトレーニング学習理論の目指すところです。
計算力を付けるポイントとは
小学生の親御さんなどへのご参考のために、計算力を付けるための簡単なポイントについて述べます。
(1)書き方
書き方が悪いために、計算ミスを起こすことがあります。以下のことに注意しましょう。
・テストでは、空白部や用紙の裏などに、計算をするまとまったスペースを確保。あちこちとびとびの場所に計算すると、ミスの原因になる。
・小さな字でごちゃごちゃ書かないこと。きれいでなくても良いので、見やすい字で整列させて書く。
・数字は判別しやすいように書く。特に「0と6」「1と7」「5と6」「7と9」などは、書き方によっては紛らわしいので、注意が必要。
・場当たり的に計算するのではなく、計算すべき式をきちんと書いてから計算する。
(2)基本計算
計算規則、筆算、分数計算、割合の計算など、基本的な計算の仕方は、学校や塾できちんと教わり、正しい計算の仕方を身に付ける必要があります。そのうえで、計算ドリルをなるべく毎日こなし、正確さとスピードの向上を図ります。ここは継続力が必要となるところです。継続するのが難しいお子さんの場合は、親御さんが横に付いてやらせるのもひとつの方法です。
(3)計算の工夫
基本計算の仕方までは最低限身に付ける必要がありますが、少しでも効率的に短時間で計算できるよう、常に工夫を心がけることが、計算力のアップに繋がります。計算の工夫の仕方はいろいろあり、入試で計算問題として出題されるようなより高度なものもありますが、計算が苦手で成績が低迷している小学生の場合は、以下の2点を心掛けるだけで計算力が違ってくるでしょう。
・全体を見て計算順序を考える
計算は順序によって計算量や計算時間が変わる。以下の計算例で、前から順に計算するのではなく、65+35を先に計算すれば、即座に答えが出てくる。
(計算例)
65+88+35=( 65+35 )+88=188
・同じ計算はまとめて行う
同じ数字をかけたり、同じ数字で割るときには、まとめて行うと計算量が少なくなる。
(計算例)
9×12+9×8
=9×( 12+8 )
=9×20
=180